第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 成人期の二次障害として頸椎症性脊髄症を発症しやすい疾患はどれか。

1. 先天性多発性関節拘縮症
2. アテトーゼ型脳性麻痺
3. 痙直型脳性麻痺
4. 骨形成不全症
5. 分娩麻痺

解答2

解説

頚椎症性脊髄症とは?

頚椎症性脊髄症とは、加齢による頸椎の変形によって内側の脊髄が圧迫されて、巧緻性の低下や手足のしびれが生じる疾患である。箸での食事が難しくなったり、ボタンをとめるのが困難になることもある。

1.× 先天性多発性関節拘縮症とは、子宮内で発生して多くの関節が「固まる」まれな病気の総称で、複数部位の関節拘縮(特に上肢と頚部)と筋形成不全を特徴とする。主な合併症として、内反尖足や股関節脱臼、長管骨の骨折などがあげられる。成長期に脊柱変形などを認めることはあるが、成人期の二次障害として頚椎症性脊髄症を発症しやすいわけではない。
2.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、成人期の二次障害で頸椎症性脊髄症を発症しやすい。なぜなら、長年にわたる頚部の不随意運動により頸部に反復し負荷がかかるるため。したがって、頚椎の不良姿勢につながり頚髄症を引き起こす。ほかにも二次障害としては手根管症候群を来しやすい。ちなみに、アテトーゼ型とは、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。アテトーゼ型脳性麻痺の介助のポイントとして、体幹は包み込むようにして安定させ、四肢をフリーにしないことで安定させるとよい。また、上肢や体幹の極端な非対称性の体位は、体幹の側屈と短縮を引き起こすため避けるようにする。
3.× 痙直型脳性麻痺の二次障害では、成長期に側弯症になりやすい。なぜなら、筋緊張の亢進や原始反射の残存(緊張性迷路反射による反り返り、非対称性緊張性頚反射による体幹のねじれ)が起こるため。ちなみに、痙直型脳性麻痺とは、上位運動ニューロンの障害による痙性麻痺を主症状(筋トーヌス亢進、深部腱反射亢進、病的反射出現、クローヌス出現、折りたたみナイフ現象)とする脳性麻痺である。
4.× 骨形成不全症の二次障害では、易骨折性進行性の骨変形などである。ちなみに、骨形成不全症とは、易骨折性・進行性の骨変形などの骨脆弱性を示す病状に加え、様々な程度の結合組織の病状を示す先天性の疾患である。具体的な症状として、易骨折性、骨変形などの長管骨の骨脆弱性と脊椎骨の変形に加え、成長障害、青色強膜、歯牙(象牙質)形成不全、難聴、関節皮膚の過伸展などがみられる。さらに、脊柱変形による呼吸機能障害、心臓弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。骨折は、乳児期や歩行の不安定な1~2歳ごろと運動をする機会が増える小学生で多いとされている。
5.× 分娩麻痺とは、生まれてくる際に、子宮の収縮力だけでは力不足の場合、医師や助産婦による予想以上の力が腕に行く神経にかかり、神経が外傷し麻痺してしまうことをいう。合併症として、鎖骨骨折が最多である。次いで、顔面神経麻痺、頭蓋内出血が多い。骨折は、若木骨折のため後遣症もなく予後良好である。

痙直型の特徴

①機敏性の低下、筋力損失および脊髄反射の亢進など。
②脊髄レベルでの相反神経作用の障害(動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収納や、痙直の強い拮抗筋からの過利な緊張性相反性抑制による動筋の機能不全)
③両麻痺は両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢、体幹の麻痺を伴うことが多い。

 

 

 

 

 

 

32 高次脳機能障害と治療法の組合せで正しいのはどれか。

1. 記憶障害:自律訓練法
2. 失行症:回想法
3. 純粋失読:認知行動療法
4. 遂行機能障害:間隔伸長法
5. 半側空間無視:プリズム適応療法

解答5

解説
1.× 自律訓練法は、「記憶障害」ではなく、主に不安性障害に用いられる。自律訓練法とは、自己催眠法の手続きの一つで自分に暗示をかけてリラックスを促し心身を整える方法である。ちなみに、記憶障害(認知症)は、回想法を用いられる。
2.× 回想法は、「失行症」ではなく、記憶障害(認知症)に用いられる。回想法とは、アルバムや昔の遊び道具や生活用品などを使い(昔懐かしい駄菓子を食べる、童謡などのなじみの歌を聴くなど)して、その当時のエピソードを思い出して話してもらい、人生を振り返り思い出を語ることにより、気持ちを安定したり、感情・意欲を高揚したりする方法である。
3.× 認知行動療法は、「純粋失読」ではなく、うつ病など多くの疾患に用いられている。認知行動療法とは、自然に頭に浮かんだ考えを記録して、個人の信念や思考様式をもとに思考のプロセス(認知プロセス)を把握し、より合理的な考え方や行動ができるように導く方法である。ちなみに、純粋失読とは、読みが選択的に障害されている病態のことである。
4.× 間隔伸長法は、「遂行機能障害」ではなく、認知症などに適応となる。記憶の改善テクニックである間隔伸長法とは、記憶したい事柄に対する質問をするまでの時間を次第に長くして、記憶を保持する期間を延ばしていくことを目的とする手法である。
5.〇 正しい。半側空間無視は、プリズム適応療法が適応となる。プリズム適応療法は、視野を右にずらすプリズム眼鏡をかけ、目標物を指さす課題を繰り返すと、最初は正確な位置を指すのが難しいが、次第にプリズムによる視覚情報に適応し、正確な位置を指せるようになる。そして、プリズム眼鏡をはずすと、今度は逆に目標物よりも左側を指すようになる。この現象が、左半側空間無視の治療に応用される。ただし、脳卒中治療ガイドラインでは、プリズム適応療法は、グレードC1(十分な科学的根拠がないが、行うことを考慮しても良い。有効性が期待できる可能性がある。)である。

 

 

 

 

 

33 軽度認知障害(MCI)と診断された患者に対し外来作業療法を開始する際の対応で最も優先すべきなのはどれか。

1. 記憶低下に対する不安の軽減
2. 記憶障害の改善
3. 身辺動作の改善
4. 攻撃性の軽減
5. 徘徊の軽減

解答1

解説

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment) の定義

①記憶障害の訴えが本人または家族から認められている。
②日常生活動作は正常。
③全般的認知機能は正常。
④年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
⑤認知症ではない。

※Alzheimer型認知症の前駆段階と考えられており、早期治療の点からも重要である。

1.〇 正しい。記憶低下に対する不安の軽減を優先する。なぜなら、MCIと診断されたからといって認知症になることが確定したということではなく、適切な対策を行うことで十分に改善を図れる段階であるため。
2.× 記憶障害の改善は優先度が低い。なぜなら、MCIの段階での記憶障害の改善方法は確立していないため。したがって、MCI患者の不安を軽減しながら経過をみていくことになることが多い。
3.× 身辺動作の改善は優先度が低い。なぜなら、MCIの段階では日常生活には支障を来していないため。
4.× 攻撃性の軽減は優先度が低い。なぜなら、攻撃性がみられるのは、第2(中期)~3期(末期)認知症の症状であるため。MCIの段階では攻撃性は見られないことが多い。
5.× 徘徊の軽減は優先度が低い。なぜなら、徘徊がみられるのは、第2(中期)~3期(末期)認知症の症状であるため。MCIの段階では徘徊は見られないことが多い。

 

 

 

 

 

 

34 Hoehn&Yahr の重症度ステージⅢレベルのParkinson 病への作業療法で適切なのはどれか。

1. 車椅子操作
2. ポータブルトイレの導入
3. 音声入力によるパソコン操作
4. 棒体操による頸部体幹伸展運動
5. 机上での細かいビーズを用いた手芸

解答4

解説

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

1.× 車椅子操作は時期尚早である。なぜなら、本症例はステージⅢ(姿勢保持反射障害はあるが歩行は可能である)でため。
2.× ポータブルトイレの導入は時期尚早である。本症例は、ステージⅢで、姿勢保持反射障害はあるが,自力でトイレまでの移動は可能であると考えられる。また、できるだけ身体機能を維持するという観点からも、ポータプルトイレを導入するよりは、住宅改修により廊下や扉、トイレを使いやすくすることを優先する。
3.× 音声入力によるパソコン操作は、「パーキンソン病」ではなく、主に筋萎縮性側索硬化症(ALS)に適応となる。
4.〇 正しい。棒体操による頸部体幹伸展運動を優先して行う。なぜなら、姿勢保持反射障害か出現しているため。頚部体幹伸展運動により転倒予防を努める。
5.× 机上での細かいビーズを用いた手芸は不適切である。なぜなら、パーキンソン病による前傾姿勢・固縮を助長しかねないため。また、現段階では姿勢保持反射障害により、集中しすぎることで椅子から転倒・転落の可能性も考えられる。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

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35 自助具と病態の組合せで正しいのはどれか。

1. 透明文字盤:片麻痺
2. レバー式水道栓:関節リウマチ
3. 足用吸盤付きブラシ:頸髄完全損傷
4. ソックスエイド:アテトーゼ型脳性麻痺
5. 万能カフ:進行性筋ジストロフィー

解答2

解説
1.× 透明文字盤は、「片麻痺」ではなく、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病で発語困難であり書字も指さしなどもできない場合に適応となる。透明文字盤は、示したい文字上に目線を合わせることで他者とのコミュニケーションを図るために用いる。
2.〇 正しい。レバー式水道栓は、関節リウマチに適応となる。関節リウマチは、日常生活の中で関節保護が大切となる。レバー式水道栓(大きいレバー)が付いていると関節保護や操作性が増す。
3.× 足用吸盤付きブラシは、「頸髄完全損傷」ではなく、片麻痺患者に適応となる。
4.× ソックスエイドは、「アテトーゼ型脳性麻痺」ではなく、関節リウマチ・大腿骨頭部骨折など,股関節に負担をかけられない人に適応となる。アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。
5.× 万能カフは、「進行性筋ジストロフィー」ではなく、頚髄損傷に適応がある。ちなみに、(Duchenne型)進行性筋ジストロフィーでは、遠位筋は比較的最後まで保たれる。

 

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