第61回(R8)作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 MTDLPで正しいのはどれか。

1.機能訓練の実施を目的とする。
2.活動性が低い人は対象外である。
3.導入前には必ず認知機能検査を行う。
4.訪問リハビリテーションでは活用できない。
5.社会適応プログラムは環境因子に関するアプローチで構成する。

解答

解説

(※画像引用:日本作業療法士協会様HPより)

MTDLPとは?

MTDLP(Management Tool for Daily Life Performance:生活行為向上マネジメント)は、患者が本来もっている能力を引き出し、患者にとって意味のある在宅生活(生活行為)でその能力を生かせるように支援するためのツールである。

1.× 目的は、「機能訓練の実施」ではなく在宅生活(生活行為)でその能力を生かせることである。なぜなら、活動と参加に焦点を当てて、生活行為の目標達成に向けてアセスメント・プランニング・実行・モニタリングを行うマネジメント手法である。

2.× 活動性が低い人「も対象である」。なぜなら、対象者(活動性の高い/低い問わず)・キーパーソンの要望を聞き取り、現状能力や予後予測、環境因子も含めて、生活行為向上を支援する枠組みである。
・各チェックシート(①生活行為聞き取りシート、②生活行為向上マネジメントシート、③生活行為申し送り表)」に基づき計画を立てる。
①生活行為聞き取りシートには、生活更衣目標の【実行度】と【満足度】を聞き取る。まず対象者がどのような生活行為を向上したいかを把握することから始まる。対象者がしたい・望む生活行為を聞き取り生活行為の目標を明らかにする。対象者のやってみようという気持ちを高めるため自己評価を行う(介入の前後で実行度と満足度を確認し取り組み成果を可視化する)。

3.× 導入前には、必ず認知機能検査を行う必要はない。なぜなら、MTDLPの基本アセスメントは、健康状態、心身機能・身体構造、活動、参加、環境因子、個人因子などを包括的にみるものであるため。したがって、認知機能検査を全例必須としない。

4.× 訪問リハビリテーションで活用できる」。むしろ、訪問リハビリテーションにおいて、相性が良いといえる。なぜなら、訪問リハビリテーションで「自宅にて自分で入浴したい」「買い物を再開したい」という目標がある場合、MTDLPを用いて、家屋環境、福祉用具、家族支援、地域資源、実際の生活導線まで含めて支援計画を立てられるため。

5.〇 正しい。社会適応プログラムは、環境因子に関するアプローチで構成する
・生活行為向上プランに「基本的プログラム」「応用的プログラム」「社会適応的プログラム」を並べ、さらに本人・家族・支援者の役割分担地域の社会資源活用を検討する構造になっている。

 

 

 

 

 

32 出血性ショックを合併するリスクが最も高いのはどれか。

1.橈骨遠位端骨折
2.腰椎圧迫骨折
3.骨盤骨折
4.大腿骨頚部骨折
5.足関節骨折

解答

解説

ショックとは?

・ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。

・出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

1.× 橈骨遠位端骨折より優先されるものが他にある。なぜなら、橈骨遠位端骨折は、大量の出血を伴いにくいため。
・橈骨遠位端骨折とは、橈骨の骨折のことで、転んで手をついたときに起こる比較的頻度が高い骨折である。同時に、尺骨の骨折も起こる。

2.× 腰椎圧迫骨折より優先されるものが他にある。なぜなら、腰椎圧迫骨折は、大量の出血を伴いにくいため。
・腰椎圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である(いつのまにか骨折)。

3.〇 正しい。骨盤骨折は、出血性ショックを合併するリスクが最も高い。なぜなら、骨盤骨折では、骨盤内静脈叢や骨髄、動脈損傷などから大量出血し、骨盤内・後腹膜に大量の血液をため込めるため。骨盤骨折では 2,000mL以上、後腹膜出血を伴えば、さらに1,000~4,000mLの出血が増えると示されている。
※骨盤骨折は、スポーツの疲労骨折として見られるが、外傷性のものは出血性ショックをきたすことがある。

4.× 大腿骨頚部骨折より優先されるものが他にある。なぜなら、大腿骨頚部骨折は、骨盤骨折より出血量が少ないため。骨折に伴う出血量は、部位によって異なり、大腿骨骨折ではおよそ1000~2000mLの出血がありうる一方、骨盤骨折では2000mL以上(後腹膜出血でさらに増える)ため。

5.× 足関節骨折より優先されるものが他にある。なぜなら、足関節骨折は、大量の出血を伴いにくいため。たとえば、足関節骨折では、腫脹、皮下出血、疼痛、荷重困難が中心である。※循環障害やコンパートメント症候群には注意が必要。

 

 

 

 

 

33 心不全の症状はどれか。

1.多尿
2.高血圧
3.下腿浮腫
4.羽ばたき振戦
5.チェーン・ストークス呼吸

解答

解説

心不全とは?

心不全は、心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。心不全は、どこにうっ血が強く出るかで以下のように分類される。

・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの。
→症状:呼吸困難(労作時・夜間)、起座呼吸、尿量減少、血性泡沫状痰など。

・右心不全:体循環系(体静脈圧↑:右室拡張末期圧↑)にうっ血が著明なもの。
→症状:頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など。

●共通してみられる症状:チアノーゼ、倦怠感など。
左心不全では肺うっ血による低酸素血症が原因で、右心不全でも進行すると心拍出量低下のためチアノーゼが見られる。

1.× 多尿は、心不全の症状とはいえない。むしろ、「尿量減少」が起こる。なぜなら、心不全により、低心拍出体液貯留が起こるため。

2.× 高血圧は、心不全の症状とはいえない(高血圧は、心不全の原因である)。例えば、長年の高血圧で、左室肥大が進み、のちに左心不全を起こす。

3.〇 正しい。下腿浮腫は、心不全の症状である(特に、右心不全)。なぜなら、右心不全は、体循環系(体静脈圧↑:右室拡張末期圧↑)にうっ血が著明となり、下腿や足関節の浮腫が典型的にみられるため。

4.× 羽ばたき振戦は、心不全の症状とはいえない。なぜなら、羽ばたき振戦は、主に肝性脳症、呼吸不全(CO2ナルコーシス)などでみられる身体所見であるため。
・羽ばたき振戦とは、手関節を背屈させたまま手指と上肢を伸展させ、その姿勢を保持するように指示すると、「手関節及び中指関節が急激に掌屈し、同時に、元の位置に戻そうとして背屈する運動」が認められる。手関節や手指が速くゆれ、羽ばたいているようにみえるので、このように呼ばれる。

5.× チェーン・ストークス呼吸は、心不全の症状とはいえない。なぜなら、チェーン・ストークス呼吸は、中枢神経系が障害(脳出血、脳梗塞、尿度億章、薬物中毒など)され、呼吸中枢の感受性が低下した場合や脳の低酸素状態の際に見られるため。
・Cheyne-Stokes 呼吸(チェーンストークス呼吸:交代性無呼吸)とは、小さい呼吸から一回換気量が漸増し大きな呼吸となった後、一回換気量が漸減し呼吸停止(10~20秒程度の無呼吸)がおこり、その後再び同様の周期を繰り返す呼吸である。

 

 

 

 

 

34 慢性腰痛に対する生活指導で最も適切なのはどれか。

1.安静にする。
2.踵の高い靴を履く。
3.持続的作業は中腰で行う。
4.正座よりもあぐら座位を勧める。
5.重い荷物は体に近づけて持ち上げる。

解答

解説
1.× あえて、安静にする「必要はない」。なぜなら、慢性腰痛では長く安静にするほど活動性低下や筋力低下を招き、かえって腰痛の悪化・遷延につながりやすいため。したがって、慢性腰痛では、無理のない範囲で活動を保つ。

2.× あえて、踵の高い靴を履く「必要はない」。なぜなら、踵の高い靴は、骨盤前傾や腰椎前弯を助長し、腰部への負担を増やしうるため。慢性腰痛の生活指導では、姿勢を不安定にしやすい履物より、安定した履物(踵の低い靴)のほうが望ましい。

3.× 持続的作業は、「中腰」ではなく腰の負担を軽減した姿勢(作業台の高さを調整したり、片膝をつくなど)で行う。なぜなら、中腰姿勢は、腰部への負担が大きく、持続すると腰痛を悪化させやすいため。

4.× あえて、正座よりもあぐら座位を勧める「必要はない」。なぜなら、あぐら座位は、骨盤の後傾や腰椎後弯を招きやすく、長時間続くと腰への負担になるため(正座の方が、腰への負担はかかりにくい)。ただし、慢性腰痛では、「特定の座り方を一律に勧める」より、「こまめな体位変換」を指導する。

5.〇 正しい。重い荷物は、体に近づけて持ち上げる。なぜなら、荷物が体から離れるほど、腰部へのモーメントが大きくなり、腰への負担が増えるため。

 

 

 

 

 

35 注意欠如多動症〈注意欠如・多動性障害〉児と比較し、自閉スペクトラム症〈自閉症スペクトラム障害〉児の特徴はどれか。

1.他児とよく遊ぶ。
2.物をよくなくす。
3.待つことができない。
4.すぐに他のことを始める。
5.いつもと違う道を通るとパニックになる。

解答

解説

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは?

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。治療として、①まず、行動療法を行う。②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。

自閉症スペクトラム障害とは?

自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。

広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害、および限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。生後5年以内に明らかとなる一群の障害である。通常は精神遅滞を伴う。広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。

【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。

1.× 自閉スペクトラム障害は、他児と「よく遊ぶ」のではなく遊ばない。なぜなら、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害が中核にあるため。したがって、同年代の子どもとの関わりや相互的な遊びに困難を示しやすい。

2.× 物をよくなくすのは、注意欠陥多動性障害の特徴である。なぜなら、不注意症状の代表であるため。

3.× 待つことができないのは、注意欠陥多動性障害の特徴である。なぜなら、衝動性の症状の代表であるため。

4.× すぐに他のことを始めるのは、注意欠陥多動性障害の特徴である。なぜなら、不注意多動性の症状の代表であるため。

5.〇 正しい。いつもと違う道を通るとパニックになる。なぜなら、自閉スペクトラム障害は、「同一性への強いこだわり」「日課や手順の変更への強い苦痛」が特徴であるため。自閉スペクトラム障害の特徴として「同じであることへの固執」「変化への極端な苦痛」「同じ道を通る必要」などが挙げられる。

 

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