第61回(R8)作業療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

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16 21歳の女性。統合失調症。「誰かに監視されている」と言い、近隣でのトラブルが続いたため精神科に入院となった。入院後、症状は軽減したが、無為の状態が続いており、入院3週目に作業療法が開始された。作業活動中に、「いつも誰かに見られているから、作業活動をやめたい」と申し出た。
 作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。

1.活動種目を変更する。
2.作業療法の参加を中止する。
3.作業活動に集中するように声をかける。
4.主治医へ報告するために訴えを詳細に聴く。
5.「見られている」のは勘違いであることを指摘する。

解答

解説

本症例のポイント

・21歳の女性(統合失調症)。
・「誰かに監視されている」と言い、近隣でのトラブルが続いた。
・入院後:症状は軽減したが、無為の状態が続いた。
入院3週目:作業療法が開始された。
・作業活動中「いつも誰かに見られているから、作業活動をやめたい」と申し出た。
→本症例は、統合失調症の消耗期~回復期に該当する。「いつも誰かに見られている」という妄想への対応は「否定せず肯定もせず、現実的な活動へ注意を戻す」ことが望ましい。

1.× 活動種目を変更する優先度は低い。なぜなら、「いつも誰かに見られている」という妄想が、活動種目の変更で軽減するものではないため。

2.× 作業療法の参加を中止する優先度は低い(時期尚早)。なぜなら、中止は最終手段であるため。「いつも誰かに見られているから、作業活動をやめたい」と申し出たタイミングでは、まだ作業療法を辞めたくて言っていることも考えられる。まずは、状態を把握し、多職種連携につなげる

3.〇 正しい。作業活動に集中するように声をかける。なぜなら、妄想体験に注意が向いているときには、その内容を肯定も否定もせず、不安を受け止めながら、現実的な活動へ注意を戻すことが優先されるため。

4.× 主治医へ報告するために訴えを「詳細に聴く」必要はない。なぜなら、妄想内容を詳細に聴きすぎると、患者の注意が妄想へ固定され不安が増強しかねないため。ただし、妄想の「切迫性、危険性」がある際は、医師に報告するとよい。

5.× 「見られている」のは勘違いであることを指摘する必要はない。なぜなら、妄想の否定は、患者は「理解されない」と感じて不信・興奮が高まり、治療関係が悪化しやすいため。妄想は、本人にとって「現実」であるため、「否定せず肯定もしない」ことが望ましい。

 

 

 

 

 

17 25歳の女性。会社員。細かいことにこだわる性格。3年前から「自分の手が汚れている」と思い、繰り返し手を洗うようになった。最近は「大切なものを捨てたのではないか」と思うようにもなり、ゴミ箱を3時間かけて点検している。仕事に遅刻するようになったため、精神科を受診した。
 この患者にみられるのはどれか。

1.視線恐怖
2.不合理さの自覚
3.フラッシュバック
4.孤立無援になることへの恐れ
5.死んでしまうのではないかという恐れ

解答

解説

本症例のポイント

・25歳の女性(会社員)。
細かいことにこだわる性格。
・3年前から「自分の手が汚れている」と思い、繰り返し手を洗うようになった。
・最近は「大切なものを捨てたのではないか」と思うようにもなり、ゴミ箱を3時間かけて点検している。
・仕事に遅刻するようになったため、精神科を受診した
→本症例は、強迫性障害が疑われる。強迫性障害とは、自分でも不合理だと思っている考えが頭から離れず、それを打ち消すために同じ行動を繰り返すものをいう。例えば、何度も手を洗ってしまったり、1時間かけて手を洗ってしまったりする状態。作業療法では、他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。

1.× 視線恐怖とは、他人に見られること・視線を向けられることへの恐怖のことであり、社交不安障害との関連性が高い。
・社交不安障害(社会恐怖)とは、学童期~思春期の発症が多い。一方、25歳以上での発症はまれといわれている。対人場面において、過剰な不安や緊張が誘発されるあまり、動悸・震え・吐き気・赤面・発汗などの身体症状が強く発現する。

2.〇 正しい。不合理さの自覚が、この患者にみられる。なぜなら、本症例は、「仕事に遅刻するようになったため、精神科を受診した」ことからも、ある程度、不合理さを自覚していたことが考えられるため。
・強迫性障害とは、自分でも不合理だと思っている考えが頭から離れず、それを打ち消すために同じ行動を繰り返すものをいう。例えば、何度も手を洗ってしまったり、1時間かけて手を洗ってしまったりする状態。作業療法では、他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。

3.× フラッシュバックとは、(心的) 外傷的な出来事に関する苦痛な記憶が侵入的に繰り返し想起される現象である。心的外傷後ストレス障害(外傷後ストレス障害:PTSD)で認められる。

4.× 孤立無援になることへの恐れ(見捨てられ不安)は、境界性パーソナリティ障害でみられる。
・境界性パーソナリティ障害とは、感情の不安定性と自己の空虚感が目立つパーソナリティ障害である。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱、薬物乱用、過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他者との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。【関わり方】患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。

5.× 死んでしまうのではないかという恐れは、パニック症でみられる。
・パニック症〈パニック障害〉とは、誘因なく突然予期せぬパニック発作(動悸、発汗、頻脈などの自律神経症状、狂乱・死に対する恐怖など)が反復して生じる状態をいう。また発作が起こるのではないかという予期不安を認め、しばしば広場恐怖を伴う。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②抗不安薬、③認知行動療法などである。

 

 

 

 

 

18 7歳の男児。学校ではじっと座って授業を受けることが苦手で、授業中に立ち上がったり、他児に話しかけたりすることが多い。教科書や提出物の忘れ物も多い。気に入らないことがあると、すぐに感情的になり暴れる行動があり、他児とトラブルを繰り返している。母親に付き添われて精神科を受診し、外来作業療法が開始された。
 この男児への対応で適切なのはどれか。

1.言語的な介入を中心に行う。
2.集団活動には参加させない。
3.適切な行動ができたら賞賛する。
4.保護者の関わりを最小限にする。
5.作業手順は一度に説明するようにする。

解答

解説

本症例のポイント

・7歳の男児。
・じっと座って授業を受けることが苦手(多動性)。
・授業中に立ち上がったり、他児に話しかけたりすることが多い(衝動性)。
・教科書や提出物の忘れ物も多い(注意欠如)。
・気に入らないことがあると、すぐに感情的になり暴れる行動があり、他児とトラブルを繰り返している。
・母親に付き添われて精神科を受診し、外来作業療法が開始された。
→本症例は、注意欠陥多動性障害(ADHD)が疑われる。注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。対人関係面で周囲との軋轢を生じやすく、大人からの叱責や子どもからのいじめにあうことがある。このため、二次障害として、自信喪失、自己嫌悪、自己評価の低下がみられることがある。したがって、患児の行動特徴を周囲が理解し、適切に支援をしていくことが重要である。サポートが良ければ、成長とともに過半数は改善していく。放置すると、思春期に感情障害、行為障害、精神病様状態に陥りやすい。

①まず、行動療法を行う。
②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。
※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。

1.× あえて、言語的な介入を中心に行う必要はない。むしろ、視覚化した指示を出すようにする。なぜなら、視覚情報は口頭だけの説明よりも分かりやすく、記憶に残りやすいため。例えば、チェックリストや絵文字(ピクトグラム)を使って作業手順を示すと、本人がやるべきことを直感的に把握できる。これは、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)に対しても有効である。

2.× 集団活動には「参加させない」のではなく「参加できる形に調整する」。なぜなら、集団は対人スキルやルール理解、順番待ちなどを練習できる重要な場であるため。トラブルが多いからと完全に排除すると、学習機会が減る。したがって、適切な支援(構造化、役割付与、見通し提示、環境調整)を行い、成功体験を作るようにする。

3.〇 正しい。適切な行動ができたら賞賛する。つまり、好ましい行動をしたらすぐにほめる。なぜなら、即時の肯定的なフィードバックは、良い行動を強化し、本人のモチベーションを高めるため。一方、大人からの叱責は、二次障害として、自信喪失、自己嫌悪、自己評価の低下がみられることがある。

4.× あえて、保護者の関わりを最小限にする必要はない。むしろ、本症例のかかわり方(褒め方・指示の出し方・環境調整)を保護者に共有し、家庭でも同じ強化ルールで治療効果・支援を引き出していく必要がある。つまり、保護者は「治療のパートナー」で適切に巻き込むよう関わる。

5.× 作業手順は、「一度に」ではなく一つずつ説明するようにする。なぜなら、情報量が多いと混乱しやすいため。手順は短く区切って(1〜2ステップ)提示し、視覚化(絵カード・チェックリスト)して、できたら褒める、が基本的なかかわり方である。

 

 

 

 

 

19 80歳の女性。2年前から物忘れが目立つようになった。徐々に睡眠中に大きな声を出したり、手足をばたつかせたりすることが多くなった。最近になって動作が緩慢になっている。1か月前から「知らない人が家の中にいる」と言うようになり、家族に連れられて精神科を受診した。
 この女性と家族への指導で適切なのはどれか。

1.運動を控えるように説明する。
2.やったことがない趣味に取り組む。
3.立ち上がり時のふらつきに注意する。
4.日付や時刻を気にしないようにする。
5.知らない人が誰なのか何度も話し合う。

解答

解説

本症例のポイント

・80歳の女性(2年前から物忘れ)。
・徐々に睡眠中に大きな声を出したり、手足をばたつかせたり
・最近になって動作が緩慢になっている。
・1か月前から「知らない人が家の中にいる」と。
→本症例は、物忘れ動作緩慢幻視の点からLewy小体型認知症が疑われる。Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。

1.× 運動を控えるように説明する必要はない。むしろ、転倒・安全に配慮しつつ、廃用予防・歩行能力維持のため、運動継続が必要である。

2.× 「やったことがない(未経験の趣味)」ではなく「なじみのある」趣味に取り組む。なぜなら、認知症では新規学習が難しく、未経験の趣味は混乱や失敗体験を招きやすいため。したがって、基本は慣れた活動・得意な活動を活用し、見通しが立つ形で参加を促す。

3.〇 正しい。立ち上がり時のふらつきに注意する。なぜなら、Lewy小体型認知症では自律神経障害による起立性低血圧が起こりやすいため。本症例は、80歳の女性であることから、転倒が骨折のリスクとなるため注意するよう家族指導する。

4.× 日付や時刻を気にしないようにする必要はない。むしろ、大きく見やすいカレンダーや時計などに変え「わかりやすくする」ことで、見当識(日時・場所・状況)の混乱や不安を減らすのに有効である。Lewy小体型認知症は、認知機能の変動・動揺がみられやすいことから、見当識を支える環境を整えるよう家族指導が望ましい。

5.× 知らない人が誰なのか何度も話し合う必要はない。なぜなら、「知らない人が家の中にいる」という発言は、Lewy小体型認知症の幻視と考えられるため。不安を取り除くような対応をする(受容・傾聴・共感・環境調整)。一方、幻視に対して内容を詰めると、本人の不安や確信を強めたり、家族との対立を招きやすい。

 

 

 

 

 

20 19歳の男性。統合失調症。大学入学後、「頭の中が混乱する」「自分の考えが周囲に知れ渡っている」などと訴え、自室に閉じこもるようになった。心配した家族に付き添われ精神科を受診したところ、入院治療が必要との説明を受け、自ら希望し入院となった。入院3日目に退院の意思を強く訴えたため、精神保健指定医の判断と家族の同意により非自発的入院形態へ変更された。この時点で、自傷他害の恐れはなかった。
 変更後の入院形態はどれか。

1.医療保護入院
2.応急入院
3.緊急措置入院
4.措置入院
5.任意入院

解答

解説

本症例のポイント

・19歳の男性(統合失調症)。
・精神科を受診:入院治療が必要との説明を受け、自ら希望し入院となった(任意入院)。
・入院3日目に退院の意思を強く訴えたため、精神保健指定医の判断家族の同意により非自発的入院形態へ変更された(医療保護入院)。
・この時点で、自傷他害の恐れはなかった
【簡単な流れ】
・任意入院→退院要求→自傷他害の恐れなし→「指定医の判断+家族等の同意で非自発的入院形態(医療保護入院)」

1.〇 正しい。医療保護入院が、変更後の入院形態である。
・医療保護入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない、②精神保健指定医の診察:1人の診察、③そのほか:家族等のうち、いずれかの者の同意、④備考:入院後、退院後ともに10日以内に知事に届け出る、⑤入院権限:精神科病院管理者である。

2.× 応急入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない。②精神保健指定医の診察:1人の診察。③そのほか:医療および保護の依頼があるが、家族等の同意が得られない。④備考:入院期間は72時間以内。入院後直ちに知事に届け出る。知事指定の病院に限る。⑤入院権限:精神科病院管理者

3.× 緊急措置入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない。②精神保健指定医の診察:1人の診察、③そのほか:自傷・他害のおそれが著しく、急を要する。④備考:入院期間は72時間以内。指定医が1人しか確保できず時間的余裕がない場合、暫定的に適用される。⑤入院権限:都道府県知事

4.× 措置入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない。②精神保健指定医の診察:2人以上の診察、③そのほか:自傷・他害のおそれがある。④備考:国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。⑤入院権限:都道府県知事

5.× 任意入院とは、①患者本人の同意:必要。②精神保健指定医の診察:必要なし。③そのほか:書面による本人意思の確認。④備考:本人の申し出があれば退院可能。⑤精神保健指定医が必要と認めれば、72時間以内の退院制限が可能。⑥入院権限:精神科病院管理者。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

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