第61回(R8)理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 疾患の症状と検査結果を図に示す。
 陽性尤度比で正しいのはどれか。

1.0.30
2.0.42
3.0.50
4.0.60
5.0.75

解答

解説

用語説明

・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。

・検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合を「陽性反応的中度(陽性的中率)」という。
・検査陰性者のうち実際に疾病を有さない者の割合を「陰性反応的中度(陰性的中率)」という。

・疾病なしだが、検査結果は陽性と判定される割合を「偽陽性率」という。
・疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合を「偽陰性率」という。

陽性尤度比は、感度/(1-特異度)で求められる。
言い換えると、感度/ 偽陽性率で求められる。

感度】= 症状ありの人のうち陽性となる割合
= 30 / (30+70) = 30/100 = 0.30

特異度】= 症状なしの人のうち陰性となる割合
= 60 / (40+60) = 60/100 = 0.60

(※偽陽性率 = 1 − 特異度 = 0.40)

したがって,

陽性尤度比
= 感度 ÷ 偽陽性率
= 0.30 ÷ 0.40
= 0.75

選択肢5.〇 正しい。0.75が陽性尤度比である。

1~4.× 0.30~0.60は、陽性尤度比といえない。

陽性尤度比とは?

陽性尤度比は、心の陽性の確率である感度が、偽陽性の確率である「1 - 特異度」の何倍であるかを求めている。「陽性の」という結果がどれだけもっともらしいものであるかを知ろうとするものである。感度、特異度が高ければ陽性尤度比は高くなり、この値が5以上であれば検査法としてふさわしいと考えられる。

陽性尤度比は、感度/(1-特異度)で求められる。
言い換えると、感度/ 偽陽性率で求められる。

 

 

 

 

 

27 転倒予防を目的とした理学療法で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.転倒高リスク群ではTUG時間が短い。
2.認知機能の低下は、転倒リスクに関連する。
3.静的バランスから動的バランスを段階的に練習する。
4.バランス練習は、歩行速度を上げることを最優先する。
5.バランスに関与する感覚の評価には温痛覚が最も重要である。

解答

解説
1.× 転倒高リスク群では、TUG時間が「短い」ではなく長い。Timed Up and Go Test<TUG>は、椅子から3m離れたところにコーンなどを置き、被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って戻り再び椅子に座るまでの時間を測定する。転倒予測(運動器不安定症)のカットオフは、11秒程度である。

2.〇 正しい。認知機能の低下は、転倒リスクに関連する。なぜなら、認知機能が低下すると、注意分配、危険予測、状況判断など能力が低下するため。

3.〇 正しい。静的バランスから動的バランスを段階的に練習する。なぜなら、一般的に練習は、安全性を確保しながら、易しい課題(静的バランス)→難しい課題(動的バランス)へ段階的に進めることが基本であるため。
【バランス練習の流れ】
①支持基底面内に重心を保持する(静的)。
②支持基底面内なら重心を移動できる(動的)。
③支持基底面内から逸脱しても新たに支持基底面を形成できる(立ち直り)。

4.× 必ずしも、バランス練習は、歩行速度を上げることを最優先する必要はない。なぜなら、転倒予防を目的とした場合、「歩行速度の向上」ではなく、安全(安定)に移動できることが優先されるため。例えば、高齢者でふらつきが強い場合、速く歩かせるよりも、まず安定(支持基底面を拡大)するため杖歩行を優先するときがある。

5.× バランスに関与する感覚の評価には、「温痛覚」ではなく視覚が最も重要である。なぜなら、視覚情報は空間の位置関係を把握し、身体の傾きや動きを認識するために欠かせないため。特に、視覚と前庭感覚が協調することで、動いているときでも周囲を安定して見ることができる(前庭動眼反射)。

バランスの構成要素

健常者の安静立位では視覚70%、体性感覚20%、前庭器官 10%と報告されている。

 

 

 

 

 

28 変形性膝関節症で正しいのはどれか。

1.二次性が多い。
2.男性に好発する。
3.外反変形を生じやすい。
4.好発年齢は20歳代である。
5.大腿四頭筋の萎縮を認める。

解答

解説

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。

1.× 「二次性」ではなく一次性が多い。なぜなら、加齢や肥満、長年の機械的負荷などを背景にしているため。
・一次性は、明らかな原因の無い場合である。
・二次性は、代謝性疾患・外傷・先天異常など明確な原因のある場合である。

2.× 「男性」ではなく女性(特に中高年以降)に好発する。なぜなら、閉経後女性では、筋力低下やホルモン骨・関節の加齢による変化が起こるため。

3.× 外反変形(X脚)ではなく「内反変形(O脚)」を生じやすい。なぜなら、荷重時・歩行時に、もともと膝関節内側に体重がかかりやすく、それに伴い、軟骨がすり減りやすいため。

4.× 好発年齢は、「20歳代」ではなく中高年以降の女性(高齢者にピーク)である。40歳以降にかけて増加する。

5.〇 正しい。大腿四頭筋の萎縮を認める。なぜなら、膝関節の疼痛・不活動によるため。

 

 

 

 

 

29 運動時のエネルギー供給で正しいのはどれか。

1.クレアチンリン酸系では乳酸が蓄積する。
2.運動開始後最初に使われるのは解糖系である。
3.長時間の運動では無酸素性エネルギーに依存する。
4.有酸素性エネルギー供給は大量のATPを生産できる。
5.嫌気性代謝闘値〈AT〉とは血中乳酸濃度が低下する点である。

解答

解説

運動時のエネルギー供給機構

①ATP-CP系(クレアチンリン酸系):数秒間の瞬発的運動で使われる。最も速くATPを再合成できる。

②解糖系:短時間の高強度運動で重要。酸素を使わずATPを作れるが,乳酸が蓄積しやすい。

③有酸素系(TCA回路):長時間運動の主役。ATP産生速度は遅いが,大量のATPを作れる。

1.× 「クレアチンリン酸系」ではなく解糖系では、乳酸が蓄積する。
・解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。
・乳酸とは、カラダを動かすエネルギーを作るため糖を分解している際にできる生成物で、その名の通り酸性である。

2.× 運動開始後最初に使われるのは、「解糖系」ではなくATP-CP系である。なぜなら、運動開始直後に最初に使われるのは、筋内にすでに存在するATPと、それをすぐ再合成するATP-CP系であるため。
・ATP-CP系とは、筋内のクレアチンがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり、ADPにリン酸を与えることでATPを再合成するという働きを担っている。しかし、クレアチンリン酸の貯蔵量も限られており、ATP-CP系の持続時間は8秒未満である。

3.× 長時間の運動では、「無酸素性エネルギー」ではなく有酸素性エネルギーに依存する。なぜなら、長時間の運動では、有酸素系(TCA回路)が使用されるため。持続的にATPを供給できる有酸素性エネルギー供給が中心になる。

4.〇 正しい。有酸素性エネルギー供給は、大量のATPを生産できる。なぜなら、有酸素性エネルギー供給は、糖質や脂質に対し、酸素を用いて完全に代謝し、1分子あたり多く(34個)のATPを産生できるため。

5.× 嫌気性代謝闘値〈AT〉とは、血中乳酸濃度が「低下」ではなく増加する点である。
・嫌気性代謝閾値(AT)とは、運動時に有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる運動強度の閾値のことである。つまり、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、血液中の乳酸が急激に増加し始める強度の値である。骨格筋に対する効果(ATP含有量増加、グリコーゲン含有量増加)により、嫌気性代謝閾値(AT)は増加する。

クエン酸回路とは?

クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。

 

 

 

 

 

30 フレイルの判定に用いる基本チェックリストで正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.経済状況を含む。
2.指輪っかテストを含む。
3.反復唾液嚥下テストを含む。
4.対象者に対面せず評価できる。
5.二次予防事業対象者を選定する。

解答4・5
採点上の取り扱い:複数の選択肢を正解として採点する。
理由:複数の正解があるため。

解説

フレイルとは?

フレイルとは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことをいう。多くは、「健康状態」→「フレイル」→「要介護状態」と経過する。
定義:加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態である。
診断基準に含まれるのは【①体重減少、②主観的疲労度、③日常生活活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の減弱】である。3項目以上該当で「フレイル」、1~2項目該当で「プレフレイル」である。

【フレイルの要因】
①身体的:体重減少、活力低下、握力低下、歩行速度低下など。
②社会的:閉じこもりがち、社会交流の減少など。
③精神的:認知機能の低下、意欲判断力の低下、抑うつなど。

1.× 経済状況は、「含まない」。なぜなら、基本チェックリストの項目は、①日常生活関連動作、②運動器の機能、③低栄養状態、④口腔機能、⑤閉じこもり、⑥認知症、⑦うつであるため。(※参考:「11 基本チェックリストの考え方について」厚生労働省様HPより)

(※図引用:「指輪っかテスト」沼津市HPより)

2.× 指輪っかテストは、「含まない」。なぜなら、基本チェックリストは25項目の自記式質問票として構成されているため。
・指輪っかテストとは、サルコペニアのスクリーニング検査で、両手の親指と人さし指で輪を作ってふくらはぎを囲み、筋肉が減っていないかを見る簡単な方法である。輪より細ければ筋肉が少ない可能性がある。

3.× 反復唾液嚥下テストは、「含まない」。なぜなら、基本チェックリストは25項目の自記式質問票として構成されているため。
・反復唾液嚥下テストとは、30秒間の空嚥下を実施してもらい、嚥下反射の随意的な能力を評価する。3回/30秒以上から嚥下の反復ができれば正常である。

4.〇 正しい。対象者に対面せず評価できる。なぜなら、基本チェックリストは、本人記入を基本とし、本人が来所できない場合は、電話や家族の来所による相談に基づいて活用できるとされているため。

5.〇 正しい。二次予防事業対象者を選定する。基本チェックリストは、二次予防事業対象者の把握に活用していた。厳密には、以前の制度での位置づけで、現在、(介護予防・日常生活支援総合事業)として本人の状況確認ツールとしての活用へと変更されている(※参照:「一般介護予防事業等について」厚生労働省様HPより)。

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」

(※参照:「一般介護予防事業等について」厚生労働省様HPより)。

 

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