第60回(R7)作業療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

26 作業と改善が期待される組合せで最も適切なのはどれか。

1.藤のかご編み:視覚運動協応
2.機織りの整経:手指巧緻性
3.陶芸のたたら作り:構成能力
4.和紙のちぎり絵作り:記憶力
5.フィンガーペインティング:手指筋力

解答

解説
1.〇 正しい。藤のかご編みは、「視覚運動協応」の改善が期待される。
なぜなら、かご編みは、目で確認しながら手指の動きを調整し、正確な動作を要求する作業であるため。したがって、材料を見ながら編み目をそろえる際、目と手の連動が必要になる。ちなみに、視覚運動協応とは、目から得た情報をもとに体や手指の動きを適切に調整する能力のことである。例えば、文字を書いたり、物を掴んだりするときに、視覚情報を処理して動作を滑らかに行うことを指す。

2.× 機織りの整経は、「手指巧緻性」ではなく、記憶力の改善が期待される。
なぜなら、機織りの整経は、正しい順序で糸を張る作業であり、作業手順やパターンを覚える必要があるため。また、糸を巻きつける際に全身の動きを使うため、手指巧緻性の改善とはいいくい。

3.× 陶芸のたたら作りは、「構成能力」ではなく、手指筋力・手指巧緻性の改善が期待される。
なぜなら、陶芸のたたら作りは、粘土を板状に均一に伸ばし成形する作業であるため。粘土を均一に伸ばす単純動作が中心であり、積み上げたり組み合わせたりする要素は少ない。ちなみに、構成能力とは、物の位置や形、方向、距離などを理解し、それらを組み合わせて全体を作り出す能力のことである。例えば、積み木で立体的な物を組み立てたり、家具の配置を考えるときなどに必要となる能力である。

4.× 和紙のちぎり絵作りは、「記憶力」ではなく、視覚運動協応・手指巧緻性の改善が期待される。
なぜなら、ちぎり絵作りは、和紙を手でちぎり、貼り合わせて絵を完成させる作業であるため。視覚的にデザインを確認しながら進めるため、記憶力の要素は少ない。

5.× フィンガーペインティングは、「手指筋力」ではなく、視覚運動協応・手指巧緻性の改善が期待される。なぜなら、フィンガーペインティングは、指先を使って繊細で微妙な表現をする作業であるため。指の細かな感覚を使い、微妙なタッチで描画する。ちなみに、フィンガーペインティングとは、手指に絵の具をつけて絵を描くことである。

 

 

 

 

 

27 MTDLPでインテーク面接が終了し、対象者の望む生活の把握ができた。
 次の段階で用いるのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.生活行為申し送り表
2.生活行為課題分析シート
3.生活行為聞き取りシート
4.興味関心チェックシート
5.生活行為向上マネジメントシート

解答2・5
理由:設問が不明確で複数の選択肢が正解と考えられるため。

解説

(※図引用:「生活行為向上マネジメントのプロセスとシート」日本作業療法士協会様HPより)

MTDLPとは?

MTDLP(Management Tool for Daily Life Performance:生活行為向上マネジメント)は、患者が本来もっている能力を引き出し、患者にとって意味のある在宅生活(生活行為)でその能力を生かせるように支援するためのツールである。生活行為向上マネジメントは、対象者がよりよい生活をおくれるようになるために7段階のプロセスで構成され、3つの基本ツール(生活行為聞き取りシート、生活行為向上マネジメントシート、生活行為申し送り表)を活用する。

MTDLPは、8つのシートで構成される。3つのメインシート(生活行為聞き取りシート、生活行為向上マネジメントシート、生活行為申し送り表)と生活行為向上マネジメントシートを構成する2つのサブシート(生活行為アセスメント演習シート、生活行為向上プラン演習シート)の他に3つのシート(興味・関心チェックシート、生活行為課題分析シート、医療への申し送り表)がある。

1.× 生活行為申し送り表は、主にスタッフ間で対象者の情報を引き継ぐために用いられる評価表である。例えば、在宅や施設などでMTDLPを実践した対象者が、入院される際に活用する。

2.〇 正しい。生活行為課題分析シートは、本症例の次の段階で用いる。生活行為課題分析シートは、サブシートのひとつである。生活行為向上マネジメントシートをさらに強化するため、生活行為課題分析シートを用いる。生活行為課題分析シートは,ケースマネジメントにおいて対象者の望む生活行為に関連した要因のみに目を向けるのではなく,改善の余地のあるADLやIADLも見落とさないように誘導するツールである「※参考:「生活行為の自立を目指して 生活行為向上マネジメント 事例報告の手引き(案)」日本作業療法士協会様HPより」。

3.× 生活行為聞き取りシートは、設問文から「対象者の望む生活の把握ができた」と記載があることから、実施済みと考えらえる。再度用いる必要はない。

4.× 興味関心チェックシートは、対象者が目標となる生活行為が思いつかない場合や生活行為の目標に気持ちが向かない場合や、認知症で答えられない場合に活用する。「してみたい」「興味がある」とした項目の中から、対象者の意向を確認して、目標となる生活行為を決める。

5.〇 正しい。生活行為向上マネジメントシートは、本症例の次の段階で用いる。なぜなら、生活行為向上マネジメントシートは、既に課題が明確になった後、具体的な介入計画やリハビリ目標の設定、実施後の評価に用いるものであるため。作業療法士の思考過程である、評価と課題の設定、計画・実行までが網羅されたものである。

 

 

 

 

 

28 橈骨遠位端骨折の術後に前腕から手関節の外固定を行った。
 外固定期間中の患肢への作業療法で最も優先されるのはどれか。

1.温熱療法
2.母指内転位保持
3.手指の屈伸自動運動
4.前腕回内外自動運動
5.ADLでの積極的な使用

解答

解説
1.× 温熱療法の優先度は低い。なぜなら、橈骨遠位端骨折の術後の外固定期間中の患肢は、炎症している可能性が高いため。炎症している状態で、温熱による血流増加を行うと、炎症症状(腫れや痛み)が増悪する恐れがある。

2.× 母指は「内転位」ではなく外転位保持が望ましい。なぜなら、母指内転位で保持した場合、母指外転の関節可動域制限をきたしやすいため。

3.〇 正しい。手指の屈伸自動運動は、外固定期間中の患肢への作業療法で最も優先される。なぜなら、外固定期間中は、患部外の機能の維持に努めるため。手指の屈伸自動運動により、手指の関節拘縮防止、血行促進、浮腫軽減に期待できる。

4.× 前腕回内外自動運動は、行わない(行えない)。なぜなら、外固定の原則は、患部の上下2関節をまたぐように固定することであるため。したがって、一般的に肘関節も固定されており、前腕内外自動運動は行えないことが多い。仮に、前腕内外自動運動が行える外固定の場合も、前腕回内外運動は、橈骨・尺骨の動きを伴い、骨癒合に影響を与える可能性がある。

5.× ADLでの積極的な使用は必要ない。なぜなら、早期から積極的な使用を促すと、固定部位への負担が増大し、治癒(骨癒合)を妨げる恐れがあるため。

 

 

 

 

 

29 ICUでの早期リハビリテーションにおける作業療法士の役割で最も適切なのはどれか。

1.急性期の栄養管理を行う。
2.摂食嚥下機能の治療を行う。
3.スタッフの適切な配置を判断する。
4.ベッドサイドの医療機番を整備する。
5.退院後の日常生活機能を早期より予測する。

解答

解説

MEMO

ICUの理学療法の目的は、日常生活動作を維持・改善し、生活の質を改善することである。日本において早期とは48時間以内に開始される場合を意味し、主に移動機能の改善を目指した理学療法介入が行われている。重症患者に早期から理学療法を行っても死亡率は改善しないが、日常生活動作は改善する。(※引用:「集中治療室の理学療法」著:對東 俊介様より)

1.× 急性期の栄養管理を行うことは、主に管理栄養士の役割である。管理栄養士とは、労働大臣の免許を受けた国家資格で、病気を患っている人から健康な人まで一人ひとりに合わせて専門的な知識と技術をもって栄養指導や栄養管理を行う職種である。

2.× 摂食嚥下機能の治療を行うことは、主に言語聴覚士の役割である。言語聴覚士とは、言語や聴覚、音声、呼吸、認知、発達、摂食・嚥下に関わる障害に対して、その発現メカニズムを明らかにし、検査と評価を実施し、必要に応じて訓練や指導、支援などを行う専門職である。

3.× スタッフの適切な配置を判断することは、主に管理職看護師長などの役割である。病院の運営部門が中心で行う。

4.× ベッドサイドの医療機器を整備することは、定期的に検査する技術スタッフ看護師などである。ベッドサイドの環境調整との意味合いとして捉えたとしても、作業療法士の役割だと断定できず、理学療法士や看護師も一緒に考えることが多い。

5.〇 正しい。退院後の「日常生活機能」を早期より予測する。なぜなら、日常生活機能の予後予測は、作業療法士に知見があるため。作業療法士は患者の現在の機能状態や回復の見込みを評価し、退院後のADLや生活環境、支援計画を立てる。

 

 

 

 

 

30 ロコモティブシンドロームにおけるロコモ度と判定基準の該当項目の組合せで正しいのはどれか。

1.ロコモ度1:片脚で30cmの高さから立つことができない。
2.ロコモ度1:2ステップ値0.9以上1.1未満。
3.ロコモ度2:両脚で20cmの高さから立つことができない。
4.ロコモ度2:2ステップ値1.1以上1.3未満
5.ロコモ度3:2ステップ値1.3以上1.5未満

解答

解説

ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により移動能力が低下し、「要介護」のリスクが高い状態のことである。(提唱:日本整形外科学会)予防策として、片脚立位・スクワットからなる「ロコトレ」を行うよう推奨している。対象者がすでに運動器の障害や身体機能低下を有している場合も多いため、トレーニングの際には、疼痛や転倒などに十分配慮して行う必要がある。

ロコモ度1 移動能力の低下が始まっている状態
①立ち上がりテスト値:片脚40cm不可能
②2ステップ値:1.3未満
③ロコモ25総得点:7点以上
いずれか1つでも当てはまるもの

ロコモ度2 移動能力の低下が進行している状態
①立ち上がりテスト値:両脚20cm不可能
②2ステップ値:1.1未満
③ロコモ25総得点:16 点以上
いずれか1つでも当てはまるもの

ロコモ度3 社会生活に支障をきたしている状態
①立ち上がりテスト値:両脚30cm不可能
②2ステップ値:0.9未満
③ロコモ25総得点:24点以上
いずれか 1 つでも当てはまるもの

(※参考:「ロコモ度テスト」ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト)

1.× ロコモ度1は、片脚で「30cm」ではなく40cmの高さから立つことができない。

2.× ロコモ度1は、2ステップ値「0.9以上1.1未満」ではなく、1.1以上1.3未満である。

3.〇 正しい。ロコモ度2:両脚で20cmの高さから立つことができない

4.× ロコモ度2は、2ステップ値「1.1以上1.3未満」のは、0.9以上1.1未満である。

5.× ロコモ度3は、2ステップ値「1.3以上1.5未満」ではなくのは、0.9未満である。

(※引用:「ロコモ度テスト」厚生労働省様HPより)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)