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16 30歳の女性。事務職。元来仕事熱心で上司の信頼が厚かった。指導していた新人の部下が突然退職し、自分の指導方針が誤っていたためではないかと自責の念にかられた。その後、抑うつ気分、意欲低下、食欲低下および睡眠障害が出現し、仕事上のミスが増えたため、精神科を受診した。うつ病と診断され、希死念慮も認められたため入院となった。入院2週目に作業療法が開始された。
作業療法開始時に収集すべき情報で適切でないのはどれか。
1.睡眠の状態
2.日中の過ごし方
3.病気に対する認識
4.疲労感
5.復職の希望時期
解答5
解説
・30歳の女性(事務職、うつ病)。
・元来仕事熱心で上司の信頼が厚かった。
・指導していた新人の部下が突然退職。
・自分の指導方針が誤っていたためではないかと自責の念にかられた。
・その後:抑うつ気分、意欲低下、食欲低下、睡眠障害が出現。
・希死念慮も認められたため入院。
・入院2週目:作業療法が開始。
→本症例は、うつ病(急性期から回復前期)である。この時期は、まずは回復の保証、休息の確保をしつつ、日常生活の現実感の回復を目指し作業療法を実施していく。
→希死念慮とは、自殺願望と同義であり、うつ病患者によくみられる症状である。
1~2.4.〇 睡眠の状態/日中の過ごし方/疲労感は、作業療法開始時(うつ病:急性期から回復前期)に収集すべき情報である。この時期は、まずは回復の保証、休息の確保をしつつ、日常生活の現実感の回復を目指し作業療法を実施していく。
3.〇 病気に対する認識は、作業療法開始時(うつ病:急性期から回復前期)に収集すべき情報である。なぜなら、病気に対する認識は、治療へのモチベーションや取り組み方に大きな影響を与えるため。希死念慮がみられても、必ず回復することを繰り返し伝えていく。
5.× 復職の希望時期は、作業療法開始時に収集すべき情報として優先度は低い(時期尚早)。なぜなら、本症例は、作業療法開始時(うつ病:急性期から回復前期)であり、まず現在の症状改善や生活リズムの回復を目指すことが優先されるため。作業療法開始直後に復職の具体的な時期を決めることは、患者にとって過度なプレッシャーとなる可能性がある。ちなみに、復職の希望時期は、回復後期に具体的な生活のイメージができたときに行うことが多い。
抑うつ病とは、脳内の神経伝達物質のアンバランスにより、気分や感情をうまく調節できなくなり、心身の不調が表れる病気である。症状には、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状や、自信が持てず、自己評価も低下しがちになる精神的な症状などがある。
かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。
うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。
①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。
【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)
【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。
17 60歳の女性。うつ病。半年前から家事はできず横になって過ごすことが増えた。最近、無悲哀感や不安感が強くなり夫に付き添われ精神科を受診したところ、不安の軽減と活動性の向上を目的に外来作業療法が開始された。
この患者の評価に使用する非自記式の尺度で適切なのはどれか。
1.BDI-Ⅱ
2.HAM-D(HRS-D)
3.L-SAS
4.SDS
5.STAI
解答2
解説
1.× BDI-Ⅱ(Beck Depression Inventory – Second Edition:BDI-Ⅱベック抑うつ質問票)は、13歳〜80歳の抑うつ症状の有無とその程度の指標として開発された、自記式質問調査票である。
2.〇 正しい。HAM-D(HRS-D)は、この患者の評価に使用する非自記式の尺度である。HRS(HRSDあるいはHAM-D:Hamilton Rating Scale for Depression:ハミルトンうつ病評価尺度)は、医師が判断するうつ病の重症度評価尺度である。
3.× L-SAS(Liebowitz Social Anxiety Scale:リーボヴィッツ社交不安尺度)は、社交不安障害の尺度である。人から注目をされているような場面や、不安や恐怖から回避してしまうような典型的な場面を想定して、恐怖感や不安感の程度、回避の割合を客観的に数字で評価する。また、「面接形式」でも「自記式」でも利用可能で、非自記式(他者評価)をメインとしたものではない。ちなみに、社交不安障害とは、人から注目を浴びるような状況に対して、過度な恐怖や不安を感じてしまう病気である。
4.× SDS(Self-rating Depression Scale:自己評価式抑うつ性尺度)は、うつ状態の程度を調べる自記式質問票である。20項目(主感情2項目、生理的随伴症状8項目、心理的随伴症状10項目)それぞれについて4段階で評価する形式である。
5.× STAI(State-Trait Anxiety Inventory:状態・特性不安尺度)は、状態不安(今この瞬間の不安)と特性不安(個人的に普段感じやすい不安)を測定する自己記入式の質問紙である。特性不安と状態不安に分かれて、各20問ずつ、合計40問になっている。4段階の評価である。
MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory )
YG性格検査
MPI(モーズレイ人格目録)
EPPS(Edwards Personal Preference Schedule )
SDS(Self-rating Depression Scale)
HRSD(Hamilton Rating Scale for Depression)
エゴグラム(TEG)
18 70歳の男性。前頭側頭型認知症。元来真面目な性格であった。ここ数年は平気で他人の物を盗るようになり、注意されても意に介さなくなった。また、些細なことで怒り出すため、対応に困った家族が主治医と相談し、デイケアに通所し、作業プログラムに参加することになった。
この患者への対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.抽象的な指示を与える。
2.作業に失敗したら叱責する。
3.作業台の席替えを頻繁に行う。
4.道具を見やすいところに置く。
5.作業を決まった手順で行わせる。
解答4・5
解説
・70歳の男性(前頭側頭型認知症)
・元来真面目な性格。
・ここ数年:平気で他人の物を盗るようになり、注意されても意に介さなくなった。
・些細なことで怒り出す。
・デイケアに通所し、作業プログラムに参加する。
→前頭側頭型認知症の病理所見として、前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する特徴を持つ認知症である。脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態におちいることがあり、2~8年で衰弱して死亡することが多い。発症年齢が50~60代と比較的若く、初発症状は人格障害・情緒障害などがみられるが、病期前半でも記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。働き盛りの年代で発症することが多いことで、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないことが多い。その後、症状が進行するにつれ、性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなどの抑制のきかない反社会的な行動)、滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)、食行動の異常(毎日同じものを食べ続ける常同行動)などがみられる。治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている(参考:「前頭側頭型認知症」健康長寿ネット様HPより)。
1.× 「抽象的」ではなく具体的な指示を与える。なぜなら、抽象的な指示だと、本人はどう行動していいか分からず混乱やトラブルを起こしやすいため。具体的に、手段とゴールを明示する方が良い。
2.× 作業に失敗したら叱責する必要はない。なぜなら、前頭側頭型認知症の特徴として自覚や反省が乏しく、叱責で学習するのは難しいため。むしろ、不安や怒りが増幅し、症状が悪化する恐れがある。作業に失敗しない環境づくりや具体的な指示が必要である。
3.× 作業台の席替えを頻繁に行う必要はない。なぜなら、前頭側頭型認知症は、環境の変化に適応しにくいことが多いため。頻繁に席替えすると落ち着かず、混乱を招く恐れがある。
4.〇 正しい。道具を見やすいところに置く。なぜなら、前頭側頭型認知症では、探す力や記憶力、柔軟な思考力が低下しているため。目で見てすぐ分かるように置くことで混乱や探す手間が減り、作業がスムーズになる。ただし、脱抑制にも考慮しなければならないため、危険な作業は選択せず、テーブルの上に「必要かつ安全な道具を必要数だけ」置いておく配慮が必要である。
5.〇 正しい。作業を決まった手順で行わせる。なぜなら、前頭側頭型認知症は、新しい手順や複雑な変更に対応しにくいため。常同行動もみられるため、一定のルーチン化があると本人が混乱しにくく、作業を続けやすい。
19 33歳の女性。1年前から娘の不登校で心労が重なっていた。1か月前から不眠と意欲低下が出現した。2週前からは口数が減り、食事をほとんど口にせず、「私は母親失格です」と涙をこぼすようになった。夫に付き添われ精神科を受診し入院となり、作業療法が開始された。入院10日目、担当する作業療法士に「もう死なせて下さい。今日で終わりにしたいです」と訴えた。
作業療法士の対応で適切なのはどれか。
1.「世の中にはもっと苦しい人もいます」
2.「死にたいなどと言わずにもっと頑張りましょう」
3.「薬が効いていないので、主治医に伝えておきます」
4.「なぜそのような気持ちになったのか、聞かせて下さい」
5.「まだ入院したばかりですから、辛くても我慢して下さい」
解答4
解説
・33歳の女性。
・1年前:娘の不登校で心労が重なっていた。
・1か月前:不眠と意欲低下が出現。
・2週前:口数が減り、食事をほとんど口にせず、「私は母親失格です」と涙をこぼすようになった。
・入院10日目、担当する作業療法士に「もう死なせて下さい。今日で終わりにしたいです」と。
→本症例は、うつ病が疑われ、休息期~回復期に該当する。この時期は、回復・休息の確保が必要である。
1.× 「世の中にはもっと苦しい人もいます」と伝える必要はない。なぜなら、患者の発言に受容・共感できていないため。また、言われた患者は、自分の言ったことを否定・否認されたと感じられる可能性がある。自分の苦痛を軽視されたと感じ、相談しにくくなる可能性がある。
2.× 「死にたいなどと言わずにもっと頑張りましょう」と伝える必要はない。なぜなら、頑張りましょういう励ましは、さらに患者の心理的負担を助長してしまう可能性が高いため。自分の今の状態や苦しみを理解してもらえず、なお一層孤独感や無力感を感じる可能性が高い。
3.× 「薬が効いていないので、主治医に伝えておきます」と伝える必要はない。なぜなら、本症例の感情に直接向き合おうという姿勢ではないため。また、自殺願望が出る背景には、深い絶望や孤立感など複雑な感情があるため、単に「薬が効いていない」と結論を出すことはできない。
4.〇 正しい。「なぜそのような気持ちになったのか、聞かせて下さい」と伝える。なぜなら、自分の内面を安心して語ることができ、信頼関係の構築と今後の治療計画への参加が期待できるため。まずはその理由や心情をじっくり聞くことが、信頼関係を構築し、安心感を与えることができる。
5.× 「まだ入院したばかりですから、辛くても我慢して下さい」と伝える必要はない。なぜなら、「もう死なせて下さい。今日で終わりにしたいです」という発言に対して、苦痛を軽視・無視し、耐えることだけを求めているため。無理に耐えるよう促すと、さらに絶望感を強めかねない。また、患者にとって「自分の苦しみは無視される」と感じさせる可能性がある。
抑うつ病とは、脳内の神経伝達物質のアンバランスにより、気分や感情をうまく調節できなくなり、心身の不調が表れる病気である。症状には、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状や、自信が持てず、自己評価も低下しがちになる精神的な症状などがある。
かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。
うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。
①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。
【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)
【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。
20 31歳の女性。小学生の頃から虚無感を抱くことが多かった。高校では異性との交際が活発であった。相手に過度に依存的になったかと思うと些細なきっかけで罵倒する行動がみられた。別れを切り出されると自殺をほのめかしたり、リストカットで相手を引き留めようとしたりすることが多く、成人してからも続いた。今回も自傷行為のためパートナーと精神科外来を受診した。
この患者の治療法で適切でないのはどれか。
1.認知行動療法
2.力動的精神療法
3.弁証法的行動療法
4.TEACCHプログラム
5.メンタライゼーション療法
解答4
解説
・31歳の女性。
・小学生:虚無感を抱くことが多かった。
・高校:異性との交際が活発。
・相手に過度に依存的になったかと思うと些細なきっかけで罵倒する行動がみられた。
・別れを切り出されると自殺をほのめかしたり、リストカット(自傷行為)で相手を引き留めようとしたりすることが多く、成人してからも続いた。
→本症例は、境界性パーソナリティ障害が疑われる。境界性パーソナリティ障害とは、感情の不安定性と自己の空虚感が目立つパーソナリティ障害である。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱、薬物乱用、過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他者との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。【関わり方】患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。
1.〇 認知行動療法を実施する。認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。
2.〇 力動的精神療法を実施する。力動的精神療法とは、精神分析的精神療法ともいわれ、症状や悩みの背景にあるもののまだ十分に意識されていない、無意識的な葛藤や自分の傾向を知ることでそれらの改善を目指す精神療法である。
3.〇 弁証法的行動療法を実施する。弁証法的行動療法とは、マーシャ・M・リネハンにより考案された、境界性パーソナリティ障害の治療に特化した認知行動療法プログラムである。行動的なスキルトレーニング(感情の調整や衝動のコントロールなど)と、認知的な技法(認知の歪みや無条件の受容に関する考え方の変容)を組み合わせて行う。患者さんの行動の改善を強化しつつ、同時に患者さんの経験や感情を受け入れる慎重な対応が重視される。
4.× TEACCHプログラムは、この患者の治療法として優先度は低い。TEACCH(Treatment and Education of Autistic and Related Communication Handicapped Children)プログラムは、自閉症患者とその家族、関係者(教師やグループホームなどの支援者)を対象にする包括的プログラムである。自閉症患者の人生を長期的かつ包括的に支援することで、自閉症患者の自立を目指すものである。
5.〇 メンタライゼーション療法を実施する。メンタライゼーション療法とは、境界性パーソナリティ障害などの治療に用いられるほか、人間関係や社会的な相互作用において重要な役割を果たす。例えば、他人の気持ちや意図を理解し、共感することによって、より良いコミュニケーションができる。ある行動の背後にある精神状態に注意を向け、それを認識することである。