第59回(R6)作業療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

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41 Rehabの説明で誤っているのはどれか。

1.全般的行動は、最重度・中程度・最軽度の3点の指標をもつVASで評価する。
2.第1部の逸脱行動の評価では、行動が病的体験に基づくかを問題にしない。
3.第2部の全般的行動のサブカテゴリーは各3項目で構成されている。
4.評価者は1週間以上の直接行動観察が必要である。
5.評価可能な対象は精神障害者全般である。

解答

解説

Rehabとは?

Rehab(精神科リハビリテーション行動評価尺度)は、病棟・デイケア・社会復帰施設などで観察した行動を評定するものである。23項目であるため、簡便で繰り返し使用できるのが特徴である。症状や問題がある場合に点数は高くなる。

1.〇 正しい。全般的行動は、最重度・中程度・最軽度の3点の指標をもつVASで評価する。「図1のスコアスケールを用い各項目の評定を行う。線の下には3箇所に記載があり、線の左端を質問の中で考えられる行動の中で最も悪い状態を指し、右端は病棟の外の地域生活の中での普通の行動を指している。そして中央が左端と右端の行動の中間を意味する行動が記載されている。評定者はその中で被評定者が表している行動の程度に応じて線上に縦線のマークを入れる。その線を10等分割し縦線がどの割合であるかを点数化し評定値とする。」と記載されている(※参考:「精神科リハビリテーション行動評価尺度(Rehab)の評定簡易化の試み」著:古賀昭彦様より)。
2.〇 正しい。第1部の逸脱行動の評価では、行動が病的体験に基づくかを問題にしない。①失禁、②暴力、③自傷、④性的問題行動、⑤無断離院・外出、⑥怒声・暴言、⑦独語・空笑の各項目に当てはまる行動が1週間のうち何回あったか回数にて評定を行う。
3.× 第2部の全般的行動のサブカテゴリーは、「各3項目」ではなく各5項目で構成されている。全般的行動は、①社会的活動性SA、②ことばのわかりやすさDS、③セルフケアSC、④社会生活の技能CS、⑤全体にわたる評定である。
4.〇 正しい。評価者は1週間以上の直接行動観察が必要である。なぜなら、逸脱行動の評価において、1週間のうち何回あったか回数にて評定を行う必要があるため。
5.〇 正しい。評価可能な対象は精神障害者全般である。Rehabが使用できるのは、精神病院、デイケアセンター、退院前のユニット、長期の入院病棟、慢性重症病棟、共同住居等であり、その他1週間以上にわたって対象者を観察できる所なら使用可能である。

 

 

 

 

 

42 疾患と症状の組合せで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.概日リズム障害:夜更かし
2.睡眠関連摂食障害:拒食
3.睡眠時無呼吸症候群:睡眠発作
4.ナルコレプシー:カタレプシー
5.むずむず脚症候群:異常感覚

解答1・5

解説

睡眠時遊行症とは?

睡眠時遊行症は、無意識の状態で起きだし、歩いたり何かをした後に再び就眠するが、その間の出来事を記憶していない状態を指す。その時間は、30秒から30分までの長さになり得る。夢の映像はまったく、または少ししか想起されないのが特徴。

1.〇 正しい。概日リズム障害は、夜更かしがみられる。概日リズム睡眠障害とは、体内の睡眠・覚醒リズム(体内時計)が地球の明暗(昼夜)サイクルと一致していないときに起こる。原因として、脳の損傷、昼夜の周期に対する感受性の低下、長期間の寝たきり、不規則なシフトなどである。症状として、必要なときに眠ることができない(夜更かし)ため、昼間に眠くなり、意識の集中、明瞭な思考、日常活動などが困難になる。
2.× 睡眠関連摂食障害は、「拒食」ではなく過食がみられる。睡眠関連摂食障害とは、女性に多く摂食障害と合併し、睡眠時遊行症と密接に関係するといえあれている。原因の1つとしてダイエットによるストレスで、また食事制限をすることによって食欲が満たされないために、睡眠時に睡眠状態のまま歩き出し、過食してしまう。食べて満足すると、そのまま寝床へ戻る。これらの症状が睡眠時に無意識に起こるため、症状を自覚しないことが多い。
3.× 睡眠発作がみられるのは、「睡眠時無呼吸症候群」ではなくナルコレプシーである。睡眠発作とは、日中に十分な睡眠時間をとっているにもかかわらず、耐えきれないほどの眠気が襲ってくることを指す。ちなみに、睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に無呼吸が繰り返され、睡眠の分断化、睡眠の減少により日中過度の眠気などを伴う病態である。子どもの睡眠時無呼吸症候群は、扁桃腺やアデノイド(鼻から喉へ向かう部分にあるリンパ腺)の肥大だけでなく、あごが小さいことや花粉症・アレルギー性鼻炎での鼻づまりが原因となって起こる。
4.× カタレプシーがみられるのは、「ナルコレプシー」ではなく緊張病症候群である。ナルコレプシーとは、日中の過度の眠気や、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起こったり、突然の筋力低下(情動脱力発作)も伴う睡眠障害である。入眠時はレム睡眠となるため、入眠時の金縛り、中途覚醒、リアルな悪夢によってうなされることが多い。覚醒状態の維持やその他の症状(入眠時の幻覚、睡眠麻痺)をコントロールするために薬物療法を行う。ちなみに、緊張病症候群とは、①緊張病性興奮、②緊張病性昏迷、③カタレプシー(長い時間そのままの同じ姿勢を保ち続ける状態)、④反響言語・動作、⑤常同、⑥しかめ面などの奇異な表情の症状が含まれる。緊張病症候群は、主に緊張型統合失調症にみられる症状の総称である。多くは急性期~消耗期で現れる。
5.〇 正しい。むずむず脚症候群は、異常感覚がみられる。むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群、下肢静止不能症候群)は、身体末端の不快感(むずむず感)や痛みによって特徴づけられた慢性的な病態である。入眠時にむずむず感が生じると、それを軽減するために下肢を絶え間なく動かすために入眠が障害される。原因として、鉄欠乏性貧血、腎機能障害、透析患者などに多く見られ、日本において成人の3%程度に見られる。

 

 

 

 

43 Alzheimer型認知症に特徴的なのはどれか。

1.階段状に進行する。
2.錐体外路症状を伴う。
3.まだら認知症である。
4.地誌的見当識障害がある。
5.末期まで病識は保たれる。

解答

解説

Alzheimer型認知症とは?

Alzheimer型認知症は、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.3.5.× 階段状に進行する/まだら認知症である/末期まで病識は保たれるのは、血管性認知症の特徴である。脳血管性認知症とは、脳血管が詰まったり破れたりすることで突然発症する。その後、脳血管が詰まったり破れたりするたびに、症状が悪化する特徴を持つ。その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。
2.× 錐体外路症状(パーキンソニズム)を伴うのは、レビー小体型認知症の特徴である。レビー小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動異常症、自律神経障害などが特徴である。実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が特徴的である。頭がはっきりしたり、ボーッとしたり、日によって変動することもある。レビー小体型認知症そのものを治す治療はなく、現状では症状に対する薬を使用して効果をみる。抗精神薬による精神症状のコントロールと抗パーキンソン病薬による運動症状の改善、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどがある。
4.〇 正しい。地誌的見当識障害があるのは、Alzheimer型認知症の特徴である。地誌的失見当とは、熟知している場所で道に迷う、新しい道順を覚えられない、熟知した場所の見取り図が描けない、熟知した風景や建物を見ても認知できないなどの症状を呈する。地理的障害、地誌的失見当、地誌的見当識障害、広義の地誌的失認などもほぼ同義である。

 

 

 

 

 

44 終末期がん患者が死を迎える際に経験する5段階の心理過程で、第3段階にあたるのはどれか。

1.怒り
2.受容
3.否認
4.抑うつ
5.取り引き

解答

解説

キューブラー・ロスとは?

キューブラー・ロスとは、アメリカ合衆国の精神科医で、死と死ぬことについて関する書『死ぬ瞬間』の著者として知られる。死にゆく人の心理過程を提唱し、人が死を自覚したときから死を受容するまでのこころの反応とその経過が示されている。第1段階「否認(「何かの間違いだ」『信じられない」といった反応を示し、病を現実のものと受け止めることができない段階)」、第2段階「怒り(「自分だけがこんな目に遭うなんて」といった怒りが込み上げてる段階)」、第3段階「取り引き(「病気を治してくれたら。二度と悪いことはしない」などと、神や人と何らかの取り引きをしようとする段階)」、第4段階「抑うつ(「もうだめだ」「生きていても仕方ない」と抑うつ状態になる段階)」、第5段階「受容(自らのおかれた状況を理解しそれを受け入れることができる段階)」とされているが、段階的に一方向に移行するというよりは、重なり合ったり、行ったり来たりを繰り返しながら進み、必ずしも「受容」に至るとは限らないとされている。

1.× 怒りは、第2段階で、「自分だけがこんな目に遭うなんて」といった怒りが込み上げてる段階である。
2.× 受容は、第5段階で、自らのおかれた状況を理解しそれを受け入れることができる段階である。
3.× 否認は、第1段階で、「何かの間違いだ」『信じられない」といった反応を示し、病を現実のものと受け止めることができない段階である。
4.× 抑うつは、第4段階で、「もうだめだ」「生きていても仕方ない」と抑うつ状態になる段階である。
5.〇 正しい。取り引きは、第3段階で、「病気を治してくれたら。二度と悪いことはしない」などと、神や人と何らかの取り引きをしようとする段階である。

 

 

 

 

 

45 回復期前期(亜急性期が終わり現実感が少し回復し始めた段階)の統合失調症患者に対する作業療法の目的で最も適切なのはどれか。

1.休息の援助
2.現実への移行準備
3.社会生活リズムの習得
4.身体感覚の回復
5.対人交流技能の改善・習得

解答

解説


1.× 休息の援助は、急性期の目的である。十分な睡眠や休養、安心感の確保を提供する。
2.× 現実への移行準備は、回復期後期の目的である。回復期から少しずつ現実世界へ関心を向けるよう支援する。
3.5.× 社会生活リズムの習得/対人交流技能の改善・習得は、維持期の目的である。
4.〇 正しい。身体感覚の回復は、回復期前期(消耗期)の作業療法の目的である。この時期は、生活リズムの確立を図り、活動量を少しずつ増やしていく支援が必要になる。また、まだ妄想が見られていることからも、現実世界へ関心を向けていく必要がある。身体感覚とは、自分の身体のある部分が通常とは違う感覚のことである。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

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