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16.18歳の男子。野球肘の診断で理学療法を行うこととなった。
上肢の関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)の運動と測定肢位の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.肩屈曲・伸展:前腕回外位
2.肩外旋・内旋:前腕回内位
3.肘屈曲・伸展:前腕回外位
4.前腕回内・回外:肘90度屈曲位
5.手屈曲・伸展:前腕回内位
解答3・4
解説
野球肘とは、成長期にボールを投げすぎることによって生じる肘の障害のことである。肘関節の外反ストレスにより、内側側副靭帯が損傷しやすい。内側側副靭帯は、3つ靭帯(前斜走靭帯、後斜走靭帯、横走靭帯)で、肘の外側からのストレス(外反ストレス)に抵抗することで、関節の内側部分が開きすぎるのを防ぐ。内側上顆から起始しており、靭帯の走行と比較的似ている筋を強化することによって靭帯の運動制限作用を補助することができる。
1.× 肩屈曲・伸展は、「前腕回外位」ではなく、前腕中間位で行う。ちなみに、【基本軸】肩峰通る床への垂直線(立位または坐位)、【移動軸】上腕骨、【測定部位及び注意点】体幹が動かないように固定すること、脊柱が前後屈しないように注意する。
2.× 肩外旋・内旋は、「前腕回内位」ではなく、前腕中間位で行う。ちなみに、【基本軸】肘を通る前額面への垂直線、【移動軸】尺骨、【測定部位及び注意点】上腕を体幹に接して、肘関節を前方90°に屈曲した肢位で行う。
3.〇 正しい。肘屈曲・伸展は、前腕回外位で行う。ちなみに、【基本軸】上腕骨、【移動軸】橈骨である。
4.〇 正しい。前腕回内・回外は、肘90度屈曲位で行う。ちなみに、【基本軸】上腕骨、【移動軸】手指を伸展した手掌面、【測定部位及び注意点】肩の回旋が入らないように肘を90°に屈曲する。
5.× 手屈曲・伸展は、「前腕回内位」ではなく、前腕中間位で行う。ちなみに、【基本軸】橈骨、【移動軸】第二中手骨である。
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【PT専門のみ】ROMについての問題「まとめ・解説」
17.44歳の女性。3年前に全身型重症筋無力症と診断され、拡大胸腺摘出術を受けた。現在ステロイド内服治療を継続し、定期的にγグロブリン大量静注療法を受けている。
この患者の理学療法で正しいのはどれか。
1.血清CK値を指標に運動量を調整する。
2.筋力増強には過用に注意し漸増負荷で実施する。
3.筋緊張亢進に対してボツリヌス毒素療法を考慮する。
4.クリーゼのときには閉塞性換気障害を念頭に入れる。
5.体温上昇で神経症状が増悪するため環境温に注意する。
解答2
解説
1.× 血清CK値を指標に運動量を調整できない。なぜなら、重症筋無力症は血清CK値が変化しないため。重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。ちなみに、血清クレアチンキナーゼ(血清CK値)上昇は、多発性筋炎にみられる所見である。筋肉に多量に存在する酵素で、筋肉細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしている。したがって、筋肉に障害があると、血清クレアチンキナーゼ(血清CK値)は高値になる。 他にも、急性心筋梗塞や進行性筋ジストロフィーで高い値になる。
2.〇 正しい。筋力増強には過用に注意し漸増負荷で実施する。なぜなら、重症筋無力症は、易疲労性が強く、反復運動では症状が悪化するため。ちなみに、漸増負荷(ぜんぞうふか)とは、運動やトレーニングなどの際に、徐々に負荷を増やしていくことを指す。具体的には、例えばジョギングをする場合、最初はゆっくりと歩き始め、徐々に速度を上げ、最終的には全力疾走するような形で負荷を増やす。
3.× 筋緊張亢進に対してボツリヌス毒素療法を考慮するのは、「重症筋無力症」ではなく脳卒中などの脳血管障害(痙性麻痺)である。重症筋無力症の主症状は、筋力低下である。ちなみに、ボツリヌス療法とは、ボツリヌス毒素を筋肉内に数か所注射し、筋収縮を抑制するものである。効果持続は、3~6か月のため、数か月ごとに再投与が必要である。ボツリヌス毒素が神経終末の受容体に結合することで、アセチルコリンの放出を阻害し、アセチルコリンを介した筋収縮および発汗が阻害される。なお、アセチルコリンの合成や貯蔵、神経伝導には影響を及ぼさない特徴を持つ。
4.× クリーゼのときには、「閉塞性換気障害」ではなく拘束性換気障害を念頭に入れる。なぜなら、呼吸筋力の麻痺(低下)が起こるため。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
5.× 体温上昇で神経症状が増悪するため環境温に注意するのは、「重症筋無力症」ではなく多発性硬化症である。多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)
重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用される。
(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)
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【PT/OT/共通】重症筋無力症についての問題「まとめ・解説」
18.46歳の男性。右中葉肺がん。入院して化学療法と放射線療法を行い、来月に胸腔鏡下肺部分切除術を予定している。6分間歩行距離は560mで、経皮的動脈血酸素飽和度は95%以上に保たれ、ADLは全て自立している。
正しいのはどれか。
1.術前から咳嗽練習を行う。
2.術前から上部胸式呼吸の練習を行う。
3.術前はベッド上の安静に努める。
4.術後1週はベッド上での体位排痰法を中心に行う。
5.術後3か月は修正Borg指数で2程度の運動療法を行う。
解答1
解説
・46歳の男性(右中葉肺がん)
・入院して化学療法と放射線療法を行った。
・来月予定:胸腔鏡下肺部分切除術。
・6分間歩行距離:560m。
・経皮的動脈血酸素飽和度:95%以上
・ADL:全て自立。
→胸腔鏡下手術とは、胸部の数か所に穴を開け、肋骨の間から胸腔内に手術器具を入れ、カメラで胸腔内を観察しながら肺の病巣を切除する手術方法である。 現在、当院の肺がん切除術の大部分はこの胸腔鏡下手術を採用している。特徴として、傷が小さく、手術後の痛みや在院日数が少ないことがあげられる。
(※図引用:「胸腔鏡下肺部分切除手術を受ける方へ」竹田綜合病院 呼吸器外科様HPより)
1.〇 正しい。術前から咳嗽練習を行う。胸腔鏡下肺部分切除術の特有の合併症はないが、肺炎や膿胸、無気肺などが生じる可能性がある。咳嗽訓練を行うことで、誤嚥した際のむせの力を強くすることを促すことができる。食べ物がのどに残ってしまう、また、残ったものを万が一誤嚥してしまったとしても、しっかりむせることができれば誤嚥性肺炎のリスクを下げることはできる。
2.× 術前から「上部胸式呼吸」ではなく腹式呼吸練習の練習を行う。なぜなら、腹式呼吸は、胸式呼吸に比べて1回換気量が増加するので、呼吸困難を軽減できるため。鼻から息を吸いながらお腹を膨らませ、ゆっくり口から息を吐きながら腹部を凹ませる。ちなみに、胸式呼吸とは、肋間筋の働きで胸郭を広げることによって行う呼吸運動である。
3.× ベッド上の安静に努めるのは、「術前」ではなく手術当日だけである。特に、術前は制限なく活動が可能である。ただし、手術前日は手術の確認事項や準備のため、外泊や外出を控えるようお願いすることがある。
4.× ベッド上での体位排痰法を中心に行うのは、「術後1週」ではなく手術当日だけである。術後1~2病日から病棟内を歩くことができ、早期離床を推奨する。ちなみに、体位排痰法とは、体位変換を行い(痰の貯留部位を上にした姿勢)、気道内分泌物の移動を促す。
5.× 術後3か月は修正Borg指数で、「2程度」ではなく4~5の運動療法を行う。なぜなら、2程度は自覚的にも「弱い」という運動強度となるため。修正Borg指数は、自覚的運動強度の指標である。修正Borg指数は、運動したときのきつさを数字と簡単な言葉で表現し、標準化したものである。0~10の数字で表し、0に近づくと楽と感じ、10に近づくときついという解釈になる。4~5が運動の目安となり、7~9が運動の中止基準となる。
運動耐容能(全身持久性)の検査である。標準的には、30mの直線コースを往復する。歩行距離だけでなく「血圧・心拍数・SpO2・自覚的運動強度(Borgスケールなど)」も測定する。検査中、検査者は1分ごとに声かけを行う(声のかけ方には標準的なものが示されている)。被験者は疲労や息切れを感じたら、立ち止まることも可能である。大きくふらついたり、呼吸困難が増悪したり、胸痛を訴えるなどした場合は検査を中止する。
【カットオフ値】
・屋内か地域移動か?:205m(快適歩行速度0.49m/s)
・地域移動で制限の支障が出るか?:288m(快適歩行速度0.93m/s)
19.16歳の女子。バスケットボールの試合中に受傷した。同日病院を受診し左足関節外側靭帯損傷と診断され、理学療法を行う方針となった。
急性期の対応で正しいのはどれか。
1.受傷日から患部の安静目的に固定を行う。
2.受傷日から積極的に患側足関節の可動域練習を行う。
3.受傷日から炎症を抑えるために入浴など血液循環を促す。
4.受傷翌日から試合に参加できるよう鎮痛薬を飲むように勧める。
5.受傷から3日間は常に氷水で冷やし続ける。
解答1
解説
・16歳の女子(左足関節外側靭帯損傷)。
・同日:理学療法を行う。
・急性期の対応を行う。
→受傷同日は、炎症症状が強いことが考えられる。炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
1.〇 正しい。受傷日から患部の安静目的に固定を行う。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
2.× 受傷日から積極的に患側足関節の可動域練習を行う必要はない。なぜなら、急性期は安静・固定が推奨されるため。
3.× 受傷日から炎症を抑えるために入浴など血液循環を促す必要はない。なぜなら、冷却が推奨されるため。
4.× 受傷翌日から試合に参加できるよう鎮痛薬を飲むように勧める必要はない。なぜなら、鎮痛薬の服薬の判断は医師が患者と話し合って決めるため。理学療法中、患者から「明日の試合をどうしても出たい」という希望があったら、医師にその旨を伝える必要がある。理学療法士の独断では、トラブルやもめごとに発展しかねないため、試合参加の許可や服薬の推奨は行わないほうが良い。
5.× 受傷から3日間は、常に氷水で冷やし続ける必要はない。なぜなら、常に行うと凍傷を起こす可能性があるため。冷却は、10~30分実施し、1時間程度間隔をあける必要がある。ちなみに、冷却を10~30分実施した場合、①痙縮患者の一部では痙縮とクローヌスの一時的な減少、②アキレス腱反射の減弱、③他動運動に対する抵抗感の減少が観察されている。冷却によってα運動ニューロンが活性化する反面、γ運動ニューロンが抑制され筋紡錘の感受性が減弱することで筋緊張が減少する。
外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。
【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。
【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。
20.85歳の女性。右大腿骨頚部骨折のため入院し、人工骨頭置換術を行った。医師の診療録には、術後の経過は順調であるが、重度の右耳難聴と中等度の認知症があるとの記載があった。
臨床実習での情報収集の方法として誤っているのはどれか。
1.情報収集は一方的に行う。
2.患者の左側から声をかける。
3.患者への質問事項は紙に書く。
4.家屋状況は同居家族からも聴取する。
5.生年月日は患者本人と診療録の両方で確認する。
解答1
解説
認知症の患者に対する対応では、バリデーション(本人の思いを肯定し、共感的・受容的態度で安心感を与えることを基本とし、信頼関係を構築すること)という考え方を用いると良いとされている。
【バリデーションを構成する要素】
・傾聴する(相手の言葉を聞いて、反複する。)
・共感する(表情や姿勢で感情を汲み取り、声のトーンを合わせる)
・誘導しない(患者にペースを合わせる。)
・受容する(強制しない、否定しない)
・嘘をつかない、ごまかさない
1.× 情報収集は一方的に行う必要はない。なぜなら、認知症患者に対し、誘導しないこと(患者にペースを合わせること)がたいせつであるため。一方的に情報収集を行うと、信頼関係を失いかねない。
2.〇 正しい。患者の左側から声をかける。なぜなら、本症例は重度の右耳難聴があるため。聞き取りやすいほうから声をかける。
3.〇 正しい。患者への質問事項は紙に書く。なぜなら、本症例は重度の右耳難聴と中等度の認知症があるため。うまく聞き取れない質問に対し、あいまいな返事やお茶を濁した返事、なんとなくのごまかした返事が返ってくる可能性があるため、はっきり伝えるためにも筆談は有効な手段である。
4.〇 正しい。家屋状況は同居家族からも聴取する。なぜなら、本症例は、右大腿骨頚部骨折(人工骨頭置換術)、中等度の認知症があるため。認知症を伴っていると、再転倒のリスクが高い。受傷機転が、自宅であった場合、同居家族からの視点で、危ない箇所や住宅改修が必要な個所を聞くことも大切である。
5.〇 正しい。生年月日は患者本人と診療録の両方で確認する。なぜなら、本症例は中等度の認知症があるため。認知症の程度の評価にもつながる。