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91.手根管症候群の典型的な所見として正しいのはどれか。
1.猿手
2.骨間筋の萎縮
3.前腕回内時の疼痛
4.Froment徴候陽性
5.環指尺側から小指の感覚障害
解答1
解説
手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。
1.〇 正しい。猿手は、手根管症候群の典型的な所見である。猿手とは、正中神経麻痺が原因で、母指球が萎縮し、母指が内転位となり、母指とその他の手指との対立運動が不能となる状態である。
2.4~5.× 骨間筋の萎縮/Froment徴候陽性/環指尺側から小指の感覚障害は、肘部管症候群(尺骨神経麻痺)の典型的な所見である。肘部管症候群は、尺骨神経が肘関節背面内側にある尺側骨手根屈筋下の肘部管を通過する際に生じる絞拒性障害である。尺骨神経麻痺を来し、指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。ちなみに、Froment(フローマン)徴候とは、親指以外の4本の指の内外転と親指の内転ができなくなり、親指と人差し指でものをはさむ力が弱くなることでえある。母指内転筋や骨間筋の萎縮から指の内外転が障害される。
3.× 前腕回内時の疼痛は、手根管症候群の典型的な症状とはいえない。ちなみに、正中神経領域の疼痛やしびれの検査として、ファーレンテスト(Phalen test)がある。1分間手関節掌屈位を保持してもらい観察する。前腕回内時にどのような疼痛が出るのかで原因が異なるが、円回内筋症候群がもっとも疑われやすい。円回内筋症候群とは、円回内筋の支配神経で上肢腹側の真ん中を通っている正中神経が、肘関節周辺で圧迫されて痛みや痺れ、筋肉の衰えなどの症状を起こす疾患である。
(※図:Froment(フローマン)徴候陽性)
92.血管疾患と関連因子の組合せで誤っているのはどれか。
1.Buerger病:喫煙
2.下腿静脈瘤:妊娠
3.解離性大動脈瘤:アテローム硬化
4.深部静脈血栓症:長期臥床
5.結節性多発動脈炎:糖尿病
解答5
解説
1.〇 正しい。Buerger病(閉塞性血栓性血管炎)は、喫煙と関連する。Buerger病(閉塞性血栓性血管炎)とは、原因不明であるが、患者の95%以上が男性で喫煙歴があり、四肢末梢血管の炎症に起因するものであると考えられている。ちなみに、よく症状が似ている閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が原因である。
2.〇 正しい。下腿静脈瘤は、妊娠と関連する。下腿静脈瘤とは、静脈弁機能不全により下肢の静脈が逆流し、皮下静脈瘤が拡張・蛇行している状態である。誘因として、妊娠出産、立ち仕事、デスクワーク、スポーツ、肥満、加齢などがあげられる。
3.〇 正しい。解離性大動脈瘤は、アテローム硬化と関連する。解離性大動脈瘤は、大動脈内膜に亀裂が生じ、内膜が内外の2層に解離し、そこに血流が入り込み、血腫を形成する。他にも、高血圧や動脈硬化などが原因となる。ちなみに、アテローム硬化とは、太い動脈や中型の動脈の壁の中に主に脂肪で構成されるまだら状の沈着物(アテロームあるいはアテローム性プラーク)が形成され、それにより血流が減少ないし遮断される病気である。
4.〇 正しい。深部静脈血栓症は、長期臥床と関連する。深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。
5.× 結節性多発動脈炎は、糖尿病との関連性は低い。結節性多発動脈炎は、中型血管を主体として、血管壁に炎症を生じる疾患である。原因不明であるが、血管炎の組織には多くの免疫を担当する細胞が見られること、ステロイドや免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果を示すことが多いことなどから、免疫異常が関与していると考えられている。38℃以上の高熱、体重減少、高血圧、紫斑や皮膚潰瘍、筋肉痛・関節痛、四肢のしびれ、脳出血・脳梗塞、胸膜炎、尿蛋白や尿潜血陽性、腎機能低下、腹痛・下血、狭心症・心筋梗塞など様々な症状がおきる。
93.腎疾患と原因の組合せで正しいのはどれか。
1.腎硬化症:尿路結石
2.慢性腎不全:糖尿病
3.急性腎盂腎炎:動脈硬化
4.腎後性急性腎不全:心不全
5.腎前性急性腎不全:前立腺肥大
解答2
解説
1.× 腎硬化症の原因は、「尿路結石」ではなく高血圧である。悪性腎硬化症とは、悪性高血圧(高度の高血圧)によって急速に進行する腎障害である。腎細動脈や糸球体の壊死がみられ、腎硬化症で腎不全になった患者は同時に腎臓以外の動脈硬化も進行しているため、生命にかかわる心筋梗塞や脳卒中などの危険性が高い。
2.〇 正しい。慢性腎不全の原因は糖尿病である。慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。
3.× 急性腎盂腎炎の原因は、「動脈硬化」ではなく感染や尿路結石である。急性腎盂腎炎とは、下部尿路感染からの上行性感染などにより、腎盂から髄質を介し腎実質へ炎症が波及したものである。主な原因として、下部尿路感染、尿管結石や腫瘍による尿管閉塞、神経因性膀胱、前立腺肥大、小児では膀胱尿管逆流症などがあげられる。
4.× 腎後性急性腎不全の原因は、「心不全」ではなく前立腺肥大である。腎後性とは、尿が腎臓を出た後にある場合をいう。尿の排出経路が閉塞することで発症し、前立腺がん、左右両側の尿路結石、子宮頸がんなどによる尿管の圧迫などが原因として挙げられる。ちなみに、急性腎障害の原因はさまざまで、①腎前性、②腎性、③腎後性の3種類の機序でそれぞれ異なる。②腎性は、腎臓そのものの障害により発症する。例えば、糸球体に障害が起きる糸球体腎炎、間質や尿細管に炎症が起きる間質性腎炎や腎盂腎炎などである。
5.× 腎前性急性腎不全の原因は、「前立腺肥大」ではなく心不全である。腎前性とは、尿が腎臓を出る前にある場合をいう。主な原因は、腎臓に流れる血液量が減少することである。したがって、心不全のほかにも、外傷による大量出血、消化管出血、脱水、頻発する嘔吐・下痢などによる体液量の減少などである。
尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。
【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。
(※引用:「尿路感染症」日本臨床検査医学会より)
94.気管支端息の治療薬はどれか。
1.β遮断薬
2.アスピリン
3.ステロイド
4.フロセミド
5.マクロライド系抗菌薬
解答3
解説
【症状】
喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。
【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。
1.× 「β遮断薬」ではなく、β刺激薬は気管支喘息の発作時に内服する。なぜなら、β2刺激薬には気管支拡張作用があり、吸入で使用すれば即効性が期待できるため。一方、β遮断薬とは、気管支収縮作用があるため、喘息は悪化する。通常、慢性心不全の方は心機能が低下しているため、交感神経が活発化している。しかし、長期間このような状態が続くと、心不全はだんだんと悪化していく。β遮断薬は、この神経の働きを抑えることで、無理をしている心臓の動きを少し休める作用がある。長期的に服用することで心不全の悪化を防ぐ薬でもある。
2.× アスピリンは、非ステロイド性消炎鎮痛剤で(NSAIDs)の一つである。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。アスピリンは、副作用としてぜんそく発作が認められるため、気管支喘息に対し有効とはいえない。
3.〇 正しい。ステロイドは、気管支端息の治療薬である。ステロイドの機序として、細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。
4.× フロセミドは、ループ利尿薬の一つである。時折、降圧を目的とした処方も行われる。したがって、心不全、肝硬変、腎疾患による浮腫の治療に用いられる。
5.× マクロライド系抗菌薬は、抗生物質の一種で抗菌作用がある。細菌のタンパク質合成を阻害することで、細菌の増殖を抑え、最終的に細菌の死滅を促すことができる。表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎などに用いられる。また、百日咳菌に対する治療として、生後6カ月以上の患者に対してもマクロライド系抗菌薬が用いられる。これらは特にカタル期では有効である。
95.大動脈解離の続発症で誤っているのはどれか。
1.腎不全
2.脳梗塞
3.脊髄障害
4.三尖弁閉鎖不全
5.心タンポナーデ
解答4
解説
大動脈解離の合併症(続発症)には、①破裂、②心タンポナーデ、③臓器や四肢への臓器灌流不全など重篤なものが多い。頚動脈や冠動脈、上腸間膜動脈への解離の進展は,脳梗塞や心筋梗塞,腸管虚血などの重篤な合併症を起こす可能性が高く、早急な対応が求められる。
1.〇 腎不全は、大動脈解離の続発症である。臓器灌流不全とは、大動脈から分岐する血管の解離が発生することにより、その解離腔で内腔が圧排され各臓器への血流が途絶えることにより合併するものをいう。つまり、大動脈解離が腎動脈を含む場合、血流障害により腎機能が損なわれ、腎不全を引き起こすことがある。
2.〇 脳梗塞は、大動脈解離の続発症である。解離が頸動脈や脳の血管に及ぶと、脳への血流が低下(脳血管不全)し、脳梗塞や脳出血が起こることがある。つまり、大動脈解離が頸動脈に影響を及ぼす場合、脳への血流が低下し、脳梗塞を引き起こす可能性がある。
3.〇 脊髄障害は、大動脈解離の続発症である。大動脈解離が脊髄への血流を阻害すると、脊髄の虚血が生じ、脊髄障害を引き起こすことがある。
4.× 三尖弁閉鎖不全は、大動脈解離の続発症で誤っている。三尖弁閉鎖症とは、生まれつき三尖弁が閉鎖している病気である。そのため、右房へ戻ってきた静脈血は右室に流れ込むことができず、すべて心房間の孔(心房中隔欠損または卵円孔)を通って左房へ流れ込み、左房の血液と混合し、僧帽弁を通って左室へ流れ込む。ちなみに、大動脈解離は、大動脈弁の逆流により心室に影響を及ぼすことがあり、この場合は僧帽弁逆流や大動脈弁閉鎖不全が起こりうる。
5.〇 心タンポナーデは、大動脈解離の続発症である。大動脈解離が、心膜に影響を及ぼし、心膜腔内に血液が貯まると、心タンポナーデを引き起こす。心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。
大動脈解離とは、大動脈内膜に生じた亀裂(エントリー)から血液が流入し、中膜部分が解離した状態である。ほとんどの場合、高血圧症を基礎に持つ患者に突如発生する。
大動脈解離は、大動脈が裂ける場所によって2つに分類される。
・スタンフォードA型:上行大動脈から裂けるタイプ
→A型は病気が発症して48時間以内に破裂を起こしやすく、緊急手術が必要。
・スタンフォードB型:上行大動脈は裂けず、背中の大動脈(下行大動脈)から裂けるタイプ
→B型はA型に比し、すぐには破裂しないことが多いため、お薬と絶対安静の治療が中心であるが、このB型も破裂の兆候が認められたり(背中の痛みが持続)、腹部内臓や下半身への血の流れが悪くなる場合は緊急の治療を必要とする。