第58回(R5) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題86~90】

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86.原始反射と誘発される運動の組合せで正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.探索反射:頚部の側屈
2.Galant反射:体幹の回旋
3.交差性伸展反射:刺激反対側の下肢の伸展
4.非対称性緊張性頚反射:頚部を回旋させた側の上肢と下肢の伸展
5.対称性緊張性頚反射(頚部伸展):上肢の屈曲と下肢の伸展

解答3・4(※複数の選択肢を正解とする)
理由:複数の正解があるため。 

解説
1.× 探索反射(四方反射、口唇反射)は、「頚部の側屈」だけではなく頚部の屈曲や回旋も含む。なぜなら、3次元的に刺激の方向に口を開いて、頭部を向ける反射が行われるため。探索反射は、新生児を背臥位にし、検者の指で口唇の上下・左右を刺激する(触れる)と刺激の方向に口を開いて、頭部を向ける。胎児期後期から、生後5~6ヵ月まで。
2.× Galant反射(側彎反射、背反射)は、「体幹の回旋」ではなく体幹側屈である。Galant 反射は、脊柱の外側に沿って上から下へこすると刺激側の背筋が収縮して側屈する。胎児期後期から、生後2ヵ月まで。
3.〇 正しい。交差性伸展反射は、刺激反対側の下肢の伸展である。交差伸展反射は、一側の下肢を屈曲し他側を伸展させたうえで、伸展側の足底部を刺激(または屈曲)すると非刺激側は屈曲から伸展する原始反射である。
4.〇 正しい。非対称性緊張性頚反射は、「頚部を回旋させた側の上肢と下肢の伸展」する。非対称性緊張性頚反射とは、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から生後4~6ヵ月までみられる。
5.× 対称性緊張性頚反射(頚部伸展)は、「上肢の屈曲と下肢の伸展」ではなく、上肢の伸展と下肢の屈曲である。対称性緊張性頸反射(STNR)は、腹臥位(水平抱き)で頭部を伸展させると、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、上肢は伸展、下肢は屈曲し、頭部を屈曲させると逆に上肢は屈曲、下肢は伸展する。4~6 ヵ月に出現、8~12ヵ月まで。

 

 

 

 

 

87.リンパ浮腫で正しいのはどれか。

1.腹水を伴う。
2.利尿薬で治療する。
3.感染を繰り返しやすい。
4.発症初期から皮膚硬化を生じる。
5.肺血栓塞栓症の原因の一つである。

解答

解説

リンパ浮腫とは?

リンパ浮腫とは、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管内に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをいう。つまり、リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や、癌の転移・再発が除外される必要がある。ちなみに、リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。

1.× 腹水は、「伴う」と一概にいいにくい。むしろ伴いにくい。なぜなら、腹水の最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること(門脈圧亢進症)で、通常は肝硬変によって起こるため。腹水とは、タンパク質を含む体液が腹腔に蓄積した状態である。胃が圧迫されて食事がとれなくなったり吐き気が出ることや肺との境界である横隔膜を押し上げて肺が膨らみにくくなり息切れを感じることもある。それに加え、腹部が膨隆するため足元が見えにくくつまづきやすいため転倒のリスクとなりうる。一方、リンパ浮腫の原因は、主にリンパ管内に回収されなかったために起こる。
2.× 利尿薬で治療する優先度は低い。なぜなら、リンパ浮腫では下肢または腕にだけ蛋白と水分が貯まっている状態であるため。したがって、全身の水分が多い状態ではなく、全身の水分を尿として強制的に出してしまう利尿剤では、脱水を引き起こる可能性がある。リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。
3.〇 正しい。感染を繰り返しやすい。なぜなら、リンパ浮腫がある皮膚は、傷つきやすい状態にあるため。例えば、皮膚が乾燥しているとひび割れなどをおこしたり、乾燥することで掻いてキズを作ってしまったりする。そこから細菌が侵入して、感染・炎症を起こしやすくなる。したがって、日頃から皮膚の清潔と保湿を維持し、ケガ、虫刺され、日焼けの予防に心がける。また、むだ毛の処理を推奨しないこともある。
4.× 皮膚硬化が生じるのは、「発症初期から」ではなくある程度進行してからである。なぜなら、リンパ浮腫が発症して進行することにより、患肢に貯留した蛋白濃度の高い組織間液が皮膚・皮下組織・筋膜の線維化し、組織の硬化を促進させると考えられているため。線維化が強くなると皮下組織の弾力性が損なわれ、さらにリンパ流を障害して浮腫を悪化させる。
5.× 肺血栓塞栓症の原因の一つではない。肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。原因として、①血液凝固能の亢進、②静脈血流のうっ滞、③静脈壁の障害の3つの因子が種々の程度に重なって起こる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。ちなみに、リンパ浮腫の合併症として、蜂窩織炎リンパ管炎などの炎症がみられる。

 

 

 

 

 

88.Perthes病で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.女児に多い。
2.外傷が誘因となる。
3.片側性の発症が多い。
4.12歳以降に好発する。
5.大腿骨近位骨端部への血行障害が原因である。

解答3・5

解説

Perthes病とは?

Perthes病は、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。骨頭・頚部の変形が生じる。初期症状は、跛行と股関節周囲の疼痛や大腿部にみられる関連痛で、股関節の関節可動域制限も生じる。治療は大腿骨頭壊死の修復が主な目標であり、治療後は歩容の異常がなく、通常の日常生活を送れるようになることが多い。男女比は4:1である。好発年齢は、「6~7歳」である。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。

1.× 「女児」ではなく男児に多い。男女比は4:1である。
2.× 誘因のひとつとして、「外傷」ではなく血行障害がある。発症初期のエックス線像の変化は、分かりにくい。したがって、進行すると大腿骨頭骨端部の色が白く潰れていくため顕著となる。
3.〇 正しい。片側性の発症が多い。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。
4.× 好発するのは、「12歳以降」ではなく、6~7歳である。元気のいい小柄な男児(6~7歳)に多く見られる。
5.× 「大腿骨近位骨端部」ではなく、大腿骨頭・頚部への血行障害が原因である。大腿骨の骨端部は、大腿骨頭の近位に存在する。骨端とは、骨の主要部分(骨幹)と骨組織で一体化するまで単独で骨化が進行する骨の突起部分で、骨の「成長板」とも呼ばれる。ただし、Perthes病は、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。したがって、もし選択肢の文が「大腿骨頭・頚部への血行障害が原因である」と記載されていたとしても、大腿骨頭・頚部への血行障害は「原因」ではなく症状のひとつであるため、選択する優先度は低いと考える。

 

 

 

 

89.Colles骨折で正しいのはどれか。

1.成人より小児に多い。
2.尺骨遠位端の骨折である。
3.遠位骨片は掌側に転位する。
4.合併症に正中神経損傷がある。
5.骨折の分類にはGarden分類が用いられる。

解答

解説

Colles骨折とは?

Colles骨折(コーレス骨折)は、Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する橈骨遠位端骨折のことである。

1.× 逆である。「小児」より「成人」に多い。Colles骨折を含む橈骨遠位端骨折は、骨粗鬆症の患者(高齢者の女性)に多く、圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折を起こしやすい。
2.× 「尺骨遠位端」ではなく橈骨遠位端の骨折である。
3.× 遠位骨片は「掌側」ではなく背側に転位する。ちなみに、Smith骨折が遠位骨片は掌側に転位する。
4.〇 正しい。合併症に正中神経損傷がある
5.× 骨折の分類にはGarden分類が用いられるのは、「Colles骨折」ではなく大腿骨頚部骨折である。転位の程度を評価する。ステージⅠ~Ⅳまである。

【Garden分類】
ステージⅠ:不完全骨折。 頚部内側は損傷がない状態。
ステージⅡ:転位のない完全骨折。 骨折部の上下がはまっている状態。
ステージⅢ:部分的に転位が回転した状態の完全骨折。 内側大腿回旋動脈に連続性がある。
ステージⅣ:完全に転位した完全骨折。 内側大腿回旋動脈が断裂している。

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

 

 

 

 

 

90.発症後2時間の脳梗塞において典型的な画像所見はどれか。

1.単純CTでの高吸収域
2.単純CTでの低吸収域
3.MRIのT1強調像での高信号領域
4.MRIのT2強調像での高信号領域
5.MRIの拡散強調像での高信号領域

解答

解説

急性期における梗塞巣の確認のしやすさ

①拡散強調像(DWT):超急性期(発症後1~3時間)
②FLAIR像:発症後3~6時頃
③T2強調像:発症後3~6時頃
④T1強調像の順である。

1~2.× 単純CTでの高吸収域/低吸収域より優先度が高いものが他にある。単純CT像は、急性期のくも膜下出血の診断に最も有用である。また、急性期の脳出血や石灰化、骨折などの骨の形態変化などに適している。脳出血急性期に出血部位が高吸収域(白く映る)になる。
3.× MRIのT1強調像での高信号領域より優先度が高いものが他にある。T1強調像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。T1強調像では、水は黒く低信号で描出され(脳室は黒色)、CTとよく似た画像を呈し、大脳皮質と白質などの解剖学的な構造が捉えやすいという特徴がある。また、脳回の萎縮、側室の拡大といった解剖構造を診るのに適している。
4.× MRIのT2強調像での高信号領域より優先度が高いものが他にある。T2強調像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。T2強調像では、水は白く高信号で描出され(脳室は白色)、多くの病巣が高信号で描出されるため、病変の抽出に有用とされている。また、軟部組織の病変(ヘルニア)や小さな病変(脳腫瘍、小梗塞、脱髄巣など)の診断能力に優れている。
5.〇 正しい。MRIの拡散強調像での高信号領域は、発症後2時間の脳梗塞において典型的な画像所見である。拡散強調像(DWI画像)は、発症後1~3時間以内の超急性期の梗塞巣を確認できるとされる。なぜなら、水分子の拡散運動(自由運動度)を画像化したものであるため。拡散が低下した領域が高信号として描出される。発症から4~5時間以内の脳梗塞に対しては、血栓溶解療法(t-PA療法)という治療が行われる。初期対応は予後に大きく関わるため迅速に対応する必要がある。

MRI検査とは?

核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

【MRI検査の禁忌】
①体内の電子電機部品(ペースメーカ、移植蝸牛刺激装置(人工内耳)、植込み型除細動器、神経刺激器、植込み型プログラマブル注入ポンプ):MRI対応型もあるためしっかり確認する。
②素材の確認できない脳動脈クリップ:MRI対応型もあるためしっかり確認する。
③目や脳など特定の重要臓器に迷入した鉄片などの強磁性体の破片
④眼部のインプラントや材料で強磁性金属を使用しているもの
⑤磁場によって活性化するもの(磁力で装着する義眼、磁石部分が脱着不能な義歯など)
⑥目のメークアップ用品、カラーコンタクト
⑦入れ墨
⑧補聴器
⑨いくつかの管腔内デバイス
⑩ニトログリセリン真皮浸透絆創膏

 

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