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46 前頭側頭型認知症患者への作業療法士の対応として適切なのはどれか。
1.活動の中で複雑な判断を本人に求めるようにする。
2.口頭指示が理解できない場合は紙に書いて伝える。
3.参加の拒否に対しては活動の内容を丁寧に説明する。
4.常同行動に対しては別の行動に切り替えるように促す。
5.食べることが止められない場合は食材を見えない場所に移動させる。
解答5
解説
病理所見として、前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する特徴を持つ認知症である。脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態におちいることがあり、2~8年で衰弱して死亡することが多い。発症年齢が50~60代と比較的若く、初発症状は人格障害・情緒障害などがみられるが、病期前半でも記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。働き盛りの年代で発症することが多いことで、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないことが多い。その後、症状が進行するにつれ、性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなどの抑制のきかない反社会的な行動)、滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)、食行動の異常(毎日同じものを食べ続ける常同行動)などがみられる。治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている。
(参考:「前頭側頭型認知症」健康長寿ネット様HPより)
1.× あえて活動の中で「複雑な判断」を本人に求めるようにする必要はない。認知症の作業療法は、①自信や安心感を取り戻せる、②リハビリと感じにくいもの、③馴染みの作業(混乱・困惑を防ぐ)ことが望ましい。
2.× 口頭指示が理解できない場合は、「紙に書いて伝える」のではなく「実際に見せて模倣してもらう」。前頭側頭型認知症(Pick病)の聴覚への障害は起こらない。
3.× 参加の拒否に対しては、活動の内容を丁寧に説明する必要はない。認知症患者には、丁寧な説明や説得よりも、患者にペースを合わせて、共感・受容が大切である。
4.× 常同行動(同じことにこだわり繰り返す)に対しては、別の行動に切り替えるように促す必要はない。常同行動に対し、ルーティン化療法があり、よい習慣を毎日のスケジュールとしてルーティン化することで生活改善を行う。
5.〇 正しい。食べることが止められない場合は食材を見えない場所に移動させる。認知症による過食は、一時的な症状だといわれていることが多い。他にも、過食に対する方法として、①食器をすぐに片付けない、②カロリー計算をして二次的な病気を起こさないようにする、③レクリエーションなどに誘うなどがあげられる。
認知症の患者に対する対応では、バリデーションという考え方を用いると良いとされている。
バリデーションを構成する要素
・傾聴する(相手の言葉を聞いて、反複する。)
・共感する(表情や姿勢で感情を汲み取り、声のトーンを合わせる)
・誘導しない(患者にペースを合わせる。)
・受容する(強制しない、否定しない)
・嘘をつかない、ごまかさない
47 家族心理教育について正しいのはどれか。
1.単発での実施が一般的である。
2.家族を精神疾患の原因と捉える。
3.治療者から家族への指示が重視される。
4.家族の対処能力が向上することを目指す。
5.当事者と同居する家族のみが対象である。
解答4
解説
家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
1.× 単発ではなく「複数回」の実施が一般的である。多くの場合、最初に1時間程度の情報提供があり、その後1時間から2時間のグループワークを行う。 これをワンクールで4~5回実施するが、もともとこの方法が最初に用いられた統合失調症の場合はその後、情報提供なしのグループセッションのみを4〜5回続ける場合が多い。
2.× 家族を精神疾患の原因と捉えるといったものではない。精神疾患の原因は主に①脳の器質的な障害(頭部外傷など)、②脳の何らかの機能異常(統合失調症など)、③心理的ストレス(PTSD)などである。
3.× 治療者から家族への指示が重視されるといったものではない。家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
4.〇 正しい。家族の対処能力が向上することを目指す。なぜなら、感情表出(EE)の強い(高い)家族のもとでは患者の症状は悪化しやすいとされるため。患者との接触を増やし、家族には家族心理教育では感情表出を抑えるような指導教育が行われる。EE< expressed emotion >とは、感情表出のことである。患者と接するときに家族に生じた主に否定的な感情を家族がありのままに表すことをいう。
5.× 当事者と同居する家族のみが対象と限定されていない。ただ当事者と同居する家族のほうが家族心理教育の優先度は高くなる。
48 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(心神喪失者等医療観察法)について正しいのはどれか。
1.裁判官が処遇を申し立てる。
2.対象行為に窃盗が含まれる。
3.対象者の社会復帰の促進が目的である。
4.入退院の処遇は簡易裁判所で判断される。
5.社会復帰調整官は指定入院医療機関の退院決定時から対象者と関わる。
解答3
解説
医療観察法とは、重大な他害行為を行った精神障害者に医療を受けさせ、犯罪の再発を防ぎ社会復帰の促進が目的である。平成15年に制定され、平成17年施行した。「重大な他害行為」とは、①殺人、②放火、③強盗、④強姦、⑤強制わいせつ、⑥傷害の6つである。鑑定入院の後で、裁判官と精神保健審判員からなる合議体(裁判官と精神保健審判員からなる)が処罰の審判を下す。
1.× 裁判官ではなく「検察官」が処遇を申し立てる。心神喪失等の状態で重大な他害行為を行い、不起訴や無罪になった人については、検察官から地方裁判所に、適切な処遇の決定を求める申立てがなされる。 申立てを受けた裁判所では、裁判官と精神科医(「精神保健審判員」という。)それぞれ1名から成る合議体を構成し、両者がそれぞれの専門性をいかして審判を行うことになる。
2.× 対象行為に窃盗が含まれない。「重大な他害行為」とは、①殺人、②放火、③強盗、④強姦、⑤強制わいせつ、⑥傷害の6つである。
3.〇 正しい。対象者の社会復帰の促進が目的である。医療観察法とは、重大な他害行為を行った精神障害者に医療を受けさせ、犯罪の再発を防ぎ社会復帰の促進が目的である。
4.× 入退院の処遇は、簡易裁判所ではなく「地方裁判所」で判断される。まず、検察官が地方裁判所に申し立てを行う必要がある。
5.× 社会復帰調整官は、指定入院医療機関の退院決定時からではなく「鑑定入院時から」対象者と関わる。対象者(精神障害者)の生活環境調査を行う。指定入院医療機関の退院決定からは、対象者の社会復帰に向けてのケア会議を開催するなど、本法での中心的な役割をもつ。
49 就労した障害者が一般企業での就労を継続する際に、就職後6か月を経てから利用できる障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に基づくサービスはどれか。
1.就労移行支援
2.就労継続支援A型
3.就労継続支援B型
4.就労定着支援
5.生活訓練
解答4
解説
1.× 就労移行支援は、就業が可能と思われる65歳未満の障害者に対して、就業のために必要な知識や技能を身に付けてもらう。2年(特例で3年)が限度である。
2.× 就労継続支援A型(雇用型)は、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者が対象である。期限の設定はない。
3.× 就労継続支援B型(非雇用型)は、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労も困難である者が対象である。期限の設定はない。
4.〇 正しい。就労定着支援は、就労した障害者が一般企業での就労を継続する際に、就職後6か月を経てから利用できる障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に基づくサービスである。就労定着支援とは、就労移行支援、就労継続支援などの利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され6か月を経過したもので3年が限度である。障害者の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートする。就労に伴う環境変化などの課題解決(①生活リズム、②家計や体調の管理など)に向けて、必要な連絡調整や指導・助言などの支援を実施する。
5.× 生活訓練(自立訓練)は、知的障害者・精神障害者に対して、自立した日常生活ができるように訓練や助言をするものである。現在、本症例は、ADLは自立し生活リズムも整っている。
50 精神科作業療法のインフォームドコンセントについて適切なのはどれか。
1.作業種目を変更する場合の同意は必要ない。
2.医療保護入院の入院患者は同意を得る必要はない。
3.言語理解が困難な場合は誘導しながら同意を得る。
4.活動内容の説明は良好な患者―治療者関係の構築に必要である。
5.精神症状が重篤な場合は患者の同意よりも治療効果が優先される。
解答4
解説
インフォームドコンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。インフォームドコンセントを受けることで医師、薬剤師とのコミュニケーションがよくなり、信頼関係が高まるほか、治療や薬の必要性が理解できるので、患者さんがより積極的に治療に参加できるようになる。また、医師の考えがわかれば患者さんも意見をいうことができ、不安感をなくすことにもつながる。
1.× 作業種目を変更する場合にも同意は必要である。治療法(作業種目)の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行う。
2.× 医療保護入院の入院患者にも同意は必要がある。本問題は、精神科作業療法のインフォームドコンセントについて問われており、医療保護入院の入院患者にも、医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行う。ただし、医療保護入院については、本人の同意は得られないが保護者の同意が得られる場合、精神保健指定医1名の診察により行われる入院できる。
3.× 言語理解が困難な場合は、誘導しながら本人と同意を得ると後々家族や親族とトラブルになりかねない。患者に意識障害があったり、認知症などのために判断能力(意思能力)を欠くために、患者自身の意思が確認できない場合は、家族など代理人の同意にて実施する。
4.〇 正しい。活動内容の説明は、良好な患者―治療者関係の構築に必要である。インフォームドコンセントを受けることで医師、薬剤師とのコミュニケーションがよくなり、信頼関係が高まるほか、治療や薬の必要性が理解できるので、患者さんがより積極的に治療に参加できるようになる。また、医師の考えがわかれば患者さんも意見をいうことができ、不安感をなくすことにもつながる。
5.× 精神症状が重篤な場合でも、患者の同意よりも治療効果が優先されることはない。患者は一度同意しても、無条件でいつでも同意を撤回でき、精神症状が重篤な場合でも患者の同意が優先されるべきである。