第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41 向精神薬内服中の精神疾患患者に錐体外路症状、無月経、体重増加、起立性低血圧が同時にみられた。
 最も疑われる原因薬剤はどれか。

1. 抗酒薬
2. 抗うつ薬
3. 抗不安薬
4. 抗精神病薬
5. 抗てんかん薬

解答4

解説
1.× 抗酒薬は、不快な症状(吐気、頭痛など)を起こし、飲酒を抑える薬剤である。アルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害することで、不快な症状(吐気、頭痛など)を起こす。
2.× (三環系)抗うつ薬の副作用は、①自律神経症状(口渇、便秘、排尿困難など)、②循環器系症状(血圧低下、頻脈、めまい、起立性低血圧など)、③中枢神経症状(眠気など)である。抗コリン作用による起こる。近年では、SSRIやSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが用いられるようになっている。それらは吐気・眠気などが副作用である。
3.× 抗不安薬の副作用は、眠気ふらつき依存形成などである。
4.〇 正しい。抗精神病薬(第1世代抗精神病薬)の副作用と、本症例の「錐体外路症状、無月経、体重増加、起立性低血圧が同時にみられた」症状と一致する。抗精神病薬(第1世代抗精神病薬)は、作用する受容体が複数存在し、これによって様々な副作用を来す。主な作用は、ドパミンD受容体の遮断作用であり、その副作用として錐体外路症状無月経を生じる。その他に、セロトニン5-HT2受容体の遮断作用による副作用として体重増加高血糖が生じる。さらに、アドレナリン a1受容体遮断作用の副作用として、起立性低血圧過鎮静がある。
5.× 抗てんかん薬は、種類が多い。薬剤によっては、消化器症状や小脳失調など多彩な症状を示す。ただし、選択肢の中から、優先度が最も高いのは、選択肢4. 抗精神病薬である。

 

 

 

 

 

 

42 心因性偽発作が疑われる患者における発作症状の観察の際に重要でないのはどれか。

1.咬舌
2.流涙
3.尿失禁
4.四肢の外傷
5.チアノーゼ

解答2

解説

心因性偽発作とは?

心因性偽発作(心因性非てんかん性発作、解離性発作、ヒステリー性発作)とは、真性てんかん発作に似ているが、重篤な身体症状や外傷は伴わない点で区別される心因性(心理的な要因)のてんかんである。ただし、てんかん発作と合併することもあるため、重篤な身体症状や外傷をよく観察する必要がある。

1.3~5.〇 咬舌/尿失禁/四肢の外傷/チアノーゼは、心因性偽発作が疑われる患者における発作症状の観察の際に重要である。なぜなら、てんかん発作と合併することもあるため。選択肢は外傷を伴ったり、重篤な身体症状である。
2.× 流涙は、心因性偽発作が疑われる患者における発作症状の観察の際に重要ではない。なぜなら、重篤な身体症状や外傷ではないため。ただし、抗てんかん薬を服薬し、アナフィラキシーショックが生じた場合、流涙がみられるため観察する必要はある。ちなみに、アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。

 

 

 

 

 

43 Alzheimer型認知症の進行度をADL障害の程度から評価するのはどれか。

1. Behave-AD
2. DASC-21
3. MoCA-J
4. FAST
5. MMSE

解答4

解説
1.× Behave-AD(Behavioral Pathology in Alzheimer’s Disease Rating Scale)は、Alzheimer型認知症のBPSD(周辺症状)の評価尺度である。介護者などから情報に基づいて25項目について0~3までの4段階で重症度を評価する。
2.× DASC-21(Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System-21 items:地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)は、ADL障害だけでなく認知機能と生活機能の障害の程度から認知症の重症度を評価するものである。対象は、認知症患者である。①記憶(近時記憶、遠隔記憶)、②見当識(時間、場所、道順)、③問題解決・社会的判断力、④IADL(家庭内・家庭外)、⑤身体的ADL(入浴、着替え、排泄、整容、食事、移動)の21項目(1点~4点の4段階評価)から、認知機能と生活機能の障害の程度から認知症の重症度を評価するものである。
3.× MoCA-J(日本語版 Montreal Cognitive Assessment)は、軽度認知障害をスクリーニングする検査法である。検査は、視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識からなる。
4.〇 正しい。FAST(Functional Assessment Staging of Alzheimer’s Disease)は、Alzheimer型認知症の進行度をADL障害の程度から評価する。 Alzheimer型認知症の病状ステージを生活機能(ADL)の面から観察により分類した評価尺度であり、1(正常)~7(高度)の7段階で評価する。
5.× MMSE(Mini Mental State Examination)は、認知障害の簡便な評価方法である。30点満点のうち、26点以下で障害の疑いを示し、23点以下なら明確な障害を示す。

 

 

 

 

 

 

44 作業療法の面接における直面化の説明で正しいのはどれか。

1. 話の中で疑問に思ったことを尋ねて会話を促進する。
2. 話の中に含まれる無意識的な意味を指摘する。
3. 話の矛盾点を指摘して問題点を明らかにする。
4. 話から感じられる情緒的な面を言葉で返す。
5. 話の不明確な点を尋ねて明らかにする。

解答3

解説

直面化とは?

直面化とは、患者がはっきりと気づいていない問題点や矛盾点を治療者の側から明確に指摘することである。

1.5.× 話の中で疑問に思ったことを尋ねて会話を促進する/話の不明確な点を尋ねて明らかにするのは、調査的な態度の説明である。良好な関係が構築される前にこの態度をとられると患者や家族は不快に感じることがある。
2.× 話の中に含まれる無意識的な意味を指摘するのは、解釈的な態度の説明である。
3.〇 正しい。話の矛盾点を指摘して問題点を明らかにするのは、直面化の説明である。直面化とは、患者がはっきりと気づいていない問題点や矛盾点を治療者の側から明確に指摘することである。
4.× 話から感じられる情緒的な面を言葉で返すのは、反映の説明である。相手は治療者に理解してもらっているという安心感や自分自身の感情への気づきが得られる。

 

 

 

 

 

 

45 うつ病の治療で正しいのはどれか。

1. 電気けいれん療法は自殺の危険度が低いときに行う治療である。
2. 回復を早めるため、気晴らしに旅行に出かけることを積極的に促す。
3. 抗うつ薬使用開始後、数日経っても効果が出なければ速やかに薬剤を変更する。
4. 患者の負担を減らすため、人生における重大な決定は速やかに行うよう指導する。
5. 自殺予防のため、希死念慮の確認は急性期だけでなく回復期にも行う必要がある。

解答5

解説
1.× 電気けいれん療法は、自殺の危険度が「低いとき」ではなく、高いときに行う治療である。迅速に精神症状の改善(昏迷や強い希死念慮、躁病の精神運動状態、統合失調症の緊張病症候群など)が必要なときに行う。また、薬物治療抵抗例に用いられる。
2.× 回復を早めるため、気晴らしに旅行に出かけることを積極的に促す必要はない。なぜなら、旅行に出かけることは気晴らしにはならず、むしろ疲労感を強め、症状が悪化するため。
3.× 抗うつ薬使用開始後、数日経っても効果が出なければ速やかに薬剤を変更する必要はない。なぜなら、抗うつ薬は、服用してから効果が発現するまでに少なくとも2週間はかかるため。
4.× 患者の負担を減らすため、人生における重大な決定は速やかに行うよう指導する必要はない。むしろ、うつ病の急性期では判断力が低下しているため、重要なことへの決定は先延ばしにすることを指導する。
5.〇 正しい。自殺予防のため、希死念慮の確認は急性期だけでなく回復期にも行う必要がある。むしろ、希死念慮は特に回復期に多い。そのため患者の言動・行動には常に注意を払う。また、自殺しないように約束してもらう。

 

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