第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午後問題36~40】

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36 障害者総合支援法について、各市町村で行う地域生活支援事業に含まれるのはどれか。

1. 介護給付
2. 訓練等給付
3. 自立支援医療
4. 補装具の給付
5. 日常生活用具の給付・貸与

解答5

解説

(※図引用:「障害者総合支援法の給付・事業」厚生労働省HPより)

1~4.× 介護給付/訓練等給付/自立支援医療/補装具の給付は、自立支援給付に含まれる.
5.〇 正しい。日常生活用具の給付・貸与は、地域生活支援事業に含まれる。

 

 

 

 

 

 

37 悪性腫瘍の緩和ケア主体の時期のリハビリテーションで正しいのはどれか。

1. 呼吸困難の軽減は得られない。
2. 運動療法をすることで心理面が改善する。
3. 運動療法をすることで倦怠感は改善しない。
4. 疼痛緩和にマッサージは長期的効果がある。
5. 運動療法をすることで疼痛の改善は得られない。

解答2

解説
1.× 呼吸困難の軽減は得られる。なぜなら、理学療法士や作業療法士により、呼吸法練習リラクセーションなどを実施するため。また、看護師による吸引や主治医による薬物療法も実施される。
2.〇 正しい。運動療法をすることで心理面が改善する。運動療法(散歩などの有酸素運動)は、セロトニンの分泌を促し不安や抑うつといった精神心理面の改善がみられる。
3.× 運動療法をすることで倦怠感が改善する。進行がん患者であっても、全身状態が安定していれば運動療法を実施する。倦怠感とは、身体や精神的に「だるい」「疲れた」「疲れやすい」と感じられる状態である。
4.× 疼痛緩和にマッサージは、長期的な効果は期待できない。長期とは、一般的に半年以上継続することを指す。
5.× 運動療法をすることで、疼痛の改善効果が得られる。軽い運動は、血行の増大・体温の上昇を促し、ゲートコントロール理論により疼痛改善効果が得られる。

緩和ケアにおける理学療法の目的

緩和ケアにおける理学療法は,回復を目的としたトレーニングとは異なる。回復が望めない中にあってその苦痛の緩和に努め,残された機能を最大限に生かし,安全な生活を支えることが必要である。また,残された機能を生かし支えることは,ひいては患者や家族の実際的ニーズや希望を支えることにもなる。さらに,その過程においてさまざまな患者の訴えに心を傾け,患者に寄り添うことは,理学療法士が提供できる大切な心のケアと考える。

①疼痛・苦痛の緩和:リハにおいてもまず取り組む課題である。(安楽肢位、リラクゼーション、物理療法、補装具の検討、電動ベッドなどの検討)
②ADL 能力維持・援助:特に排泄動作に関する要望が多い。(移動能力維持、環境設定、ADL訓練、介助法の指導)
③精神面の援助:死を受け入れていくうえでも「どのように生きるか」が重要である。
④家族への援助:家族から要望があれば介助方法や援助方法(マッサージの方法など)を伝達する。
⑤廃用性変化の予防・全身機能維持:リハが日常生活にリズムをつくる。
※(参考:「緩和ケアにおけるコメディカルの役割と人材の育成」著:下稲葉 主一(栄光病院リハビリテーション科))

 

 

 

 

 

38 地域作業療法で適切なのはどれか。2つ選べ。

1. ハイリスクアプローチは地域への波及効果が高い。
2. 地域住民への健康教育はヘルスプロモーションである。
3. コンサルテーションモデルによる地域との関わりがある。
4. MTDLPでは「基本チェックリスト」に基づき計画を立てる。
5. ポピュレーションアプローチは個別的治療が必要な人を対象とする。

解答2/3

解説
1.× ハイリスクアプローチ(ハイリスクストラテジー)は、地域への波及効果が低い。ハイリスクアプローチは、リスクが高い者に対象を絞って介入するアプローチ方法である。二次予防に効果を発揮し、個人への効果が高い。一方で、ポピュラーアプローチ(ポピュレーションストラテジー)は、対象を限定せず地域や職場など、集団全体に働きかけてリスクを下げる方法である。一次予防とされる。
2.〇 正しい。地域住民への健康教育はヘルスプロモーション(健康づくり)である。ヘルスプロモーションとは、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義される。①健康な公共政策づくり、②健康を支援する環境づくり、③地域活動の強化、④個人技術の開発、⑤ヘルスサービスの方向転換などが挙げられる。
3.〇 正しい。コンサルテーションモデルによる地域との関わりがある。コンサルテーションとは、ある分野の専門家が、他領域を専門とする職種に知識・情報・専門技術を提供することをいう。作業療法士が、地域で活動している「組織・機関・住民・当事者」に対して、その専門性を生かしてコンサルテーションを行うことがある。
4.× MTDLP(Management Tool for Daily Life Performance:生活行為向上マネジメント)では、「基本チェックリスト」ではなく「各チェックシート(①生活行為聞き取りシート、②生活行為向上マネジメントシート、③生活行為申し送り表)」に基づき計画を立てる。MTDLP(Management Tool for Daily Life Performance:生活行為向上マネジメント)とは、人が生きていくうえで営まれる生活全般の行為(生活行為)を支援するために作られた作業療法士向けのツールである。65歳以上の高齢者が自分の生活や健康状態をチェックする。「基本チェックリスト」の目的は、生活機能の低下のおそれがある高齢者を早期に把握し、支援事業につなげることである。
5.× 個別的治療が必要な人を対象とするは、ハイリスクアプローチ(ハイリスクストラテジー)である。ポピュラーアプローチ(ポピュレーションストラテジー)の対象は、主に低リスク群、境界域を含む集団全体であり、一次予防の役割を果たす。

まとめ

・ポピュラーアプローチ(ポピュレーションストラテジー):対象を限定せず地域や職場など、集団全体に働きかけてリスクを下げる方法である。一次予防とされる。

・ハイリスクアプローチ(ハイリスクストラテジー):リスクの高いものに対象を絞り込んで働きかける方法である。2次予防とされる。

 

 

 

 

 

 

39 せん妄で正しいのはどれか。

1. 夜間には出現しない。
2. 環境変化で生じやすい。
3. 高度の意識混濁を伴う。
4. 記憶障害を伴うことはない。
5. 老年者より若年者に出現しやすい。

解答2

解説

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

1.× 夜間に出現することが多い。夜間せん妄といい日内変動が見られる。
2.〇 正しい。環境変化(手術、人院、明るさ、音など)で生じやすい。
3.× せん妄は、「高度の意識混濁」ではなく、軽度~中等度の意識障害を伴う。軽度~中等度の意識障害に加え、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。
4.× 記憶障害を伴う。せん妄は、注意力、集中力、認知機能、記憶力、判断力、見当識などが広く障害される病態である。
5.× 逆である。若年者より老年者(65歳以上に出現しやすい。特に高齢者のせん妄の期間は、一般的に長くなりやすい。

 

 

 

 

 

 

40 精神作用物質使用による精神障害について正しいのはどれか。

1. 幻覚が必発する。
2. アルコールは耐性を生じない。
3. モルヒネは身体依存を生じる。
4. 医薬品によるものは含まれない。
5. 急激な精神作用物質の摂取で離脱症状が生じる。

解答3

解説

MEMO

精神作用物質とは、摂取すると酩酊などの快楽反応が得られるために、連用・乱用されやすく、ついには依存状態を呈する薬物をいう。アルコール、アヘン類、大麻、鎮痛剤・睡眠剤、コカイン、幻覚剤などがこの範疇に含まれる。精神作用物質による障害は、急性中毒(乱用や異常酩酊を含む)、依存、後遺障害がある。

1.× 幻覚は、必発ではない。主に幻覚が出る薬剤は、セロトニン系・フェネチルアミン系・化合物(麻薬覚せい剤の類縁化合物)である。
2.× アルコールは耐性を生じる。身体依存、精神依存、耐性を生じるため、摂取量が増えやすい。
3.〇 正しい。モルヒネは身体依存を生じる。身体依存、精神依存、耐性を生じる。身体依存とは、薬物の摂取をやめると、離脱症状(発汗、頻脈など)と呼ばれる身体の症状が起こる状態のこと。すべての精神作用物質には精神依存がみられるが、身体依存を起こす物質はモルヒネ、バルビツール酸、 ベンゾジアゼピン系薬、アルコールであり、それ以外はない。ちなみに、精神依存とは、依存性薬物を連用することにより、薬物が欲しくなる状態のこと。耐性獲得とは、以前の使用量では同じ効果が得られず、使用量が増えていってしまう物質依存をいう。睡眠薬依存の患者は、睡眠効果をもたらすために常用量をかなり超えた量を求めることがある。
4.× 医薬品(各種睡眠薬や抗不安薬、鎮痛剤など)によるものも含まれる
5.× 急激な精神作用物質の摂取では、離脱症状は生じない。なぜなら、離脱症状とは、生体が薬物に適応して、薬物の存在下で生理的平衡が保たれる状態になったあと、急に薬をやめることにより、生理的平衡が乱れて身体症状が生じるようになることをいうため。

 

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