第48回(H25) 作業療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

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31 二分脊椎について正しいのはどれか。

1.脊髄髄膜瘤に水頭症を合併する。
2.病変部位は胸椎が多い。
3.麻痺レベルはHoffer の分類を用いる。
4.移動能力はSharrardの分類を用いる。
5.潜在性では神経症状を生じる。

解答1

解説

二分脊椎とは?

二分脊椎とは、脊椎の先天的な形成不全によるもので、脊髄が癒着や損傷しているために、様々な神経障害を呈する。下肢の運動障害・感覚障害のほか、膀胱直腸障害が出現する。また、合併症として水頭症がある。知的障害がある場合には, 自立生活を考える時期にかかわることが出てくる。

1.〇 正しい。脊髄髄膜瘤に水頭症を合併する。重度な二分脊椎では、脊髄髄膜瘤を認め、水頭症を合併する。
2.× 病変部位は、胸椎ではなく、主に仙椎・腰椎が多い。
3.× 麻痺レベルは、Hoffer の分類ではなく、Sharrardの分類を用いる。ちなみに、Hofferの分類は、移動能力の評価基準である。
4.× 移動能力は、Sharrardの分類ではなく、Hoffer の分類を用いる。ちなみに、Sharrardの分類は、麻痺レベルの分類である。
5.× 潜在性では、神経症状を生じることは少ない。潜在性は、椎弓の変形はあるが、髄膜瘤がなく、正常な皮膚で覆われている。ちなみに、神経症状を伴うものは嚢胞性である。

 

 

 

 

 

 

 

32 片麻痺患者の自走用の車椅子の寸法や構造について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.駆動輪の車軸前後位置:寸法基準点より後方
2.アームレストの高さ:座位姿勢で肘頭の高さ
3.背もたれの高さ:肩甲骨下角の高さ以下
4.座シートの座幅:殿部幅(大転子間距離)
5.座シートの奥行き:殿部から膝裏までの長さ

解答2/3

解説

片麻痺の車椅子の調整

片麻痺患者では、健側上下肢を用いて駆動する場合、標準の車椅子が使用可能である。座シートの奥行きをやや短くし、足こぎをしやすくするほか、麻痺側のブレーキレバーの延長、杖ホルダーの設置などの配慮が必要な場合がある。

1.× 駆動輪の車軸前後位置は、寸法基準点より後方にする必要はない。なぜなら、本症例の場合、後方への転倒が起きやすいわけではないため。車軸を後方にすることにより、メリットとして転倒を予防できるが、デメリットとして駆動しにくくなる。
2.〇 正しい。アームレストの高さは、座位姿勢で肘頭の高さとする。アームレストの高さは、肘が安定しておけるように、肘90°屈曲位の高さから、「+1~2cm程度」が望ましい。
3.〇 正しい。背もたれの高さは、肩甲骨下角の高さ以下とする。なぜなら、背もたれが、ハンドル操作をするのに肩甲骨の動きを制限しないようにするため。肩甲骨下角の高さ以下で低すぎない高さが望ましい。
4.× 座シートの座幅は、殿部幅(大転子間距離)ではなく、殿部幅に「+2cm」のゆとりをもたせる。
5.× 座シートの奥行きは、殿部から膝裏までの長さでは短すぎる。バックレストに殿部が付くように座り、膝を屈曲させた際に膝窩部とシート先端との間に、2.5~5.0cm(指2~4本)程度のゆとりを持たせる。

 

 

 

 

 

33 変性疾患でないのはどれか。

1.Charcot-Marie-Tooth病
2.Guillain-Barré 症候群
3.Huntington病
4.Parkinson 病
5.Shy-Drager症候群

解答2

解説

変性疾患とは?

変性疾患とは、血管障害・感染・中毒などの誘因が明らかでないにもかかわらず、ある系統の神経細胞が徐々に侵されていく疾患群の総称である。代表的な疾患としてParkinson病、Alzheimer型認知症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など様々な疾患がある。

1.〇 Charcot-Marie-Tooth病は変性疾患である。Charcot-Marie-Tooth病は、下肢遠位部に始まる慢性進行性の多発性末梢神経障害を主徴とする遺伝性疾患である。
2.× Guillain-Barré 症候群は変性疾患ではなく、急性炎症性脱髄性多発根神経炎(脱髄性疾患)である。Guillain-Barré 症候群は、上気道炎等の先行感染後の遅延型アレルギー反応による末梢神経の急性脱髄疾患により、主に運動麻痺を起こす。
3.〇 Huntington病は変性疾患である。Huntington病は、線条体の変性により舞踏様運動がみられる常染色体優性遺伝疾患である。
4.〇 Parkinson 病は変性疾患である。Parkinson 病は、中脳黒質の変性に伴うドーパミン減少による変性疾患である。
5.〇 Shy-Drager症候群は変性疾患である。Shy-Drager症候群は、自律神経症状を主要症状とし、原因疾患は多系統萎縮症とレビー小体病がある。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

 

34 嚥下障害に対するShaker(シャキア)法の効果で正しいのはどれか。

1.認知機能改善
2.咀嚼力改善
3.口腔送り込み改善
4.喉頭挙上改善
5.食道蠕動改善

解答4

解説

Shaker法(頭部挙上訓練)とは?

【目的】喉頭挙上筋群の筋力強化を行い、喉頭の前上方運動を改善して食道入口部の開大を図る。食道入口部の食塊通過を促進し、咽頭残留(特に下咽頭残留)を少なくする効果がある。

【やり方】背臥位に横になり、肩を床につけたまま頭だけを足の指が見えるまで挙上する。疲れない程度で30秒程度持続し、休憩を入れながら5~10回繰り返す。施行中、口を閉じて行う。

1~3.5.× 認知機能改善/咀嚼力改善/口腔送り込み改善/食道蠕動改善は、Shaker法(頭部挙上訓練)の効果ではない。
4.〇 正しい。喉頭挙上改善は、嚥下障害に対するShaker(シャキア)法の効果である。舌骨上筋群(咽頭挙上に関わる筋)の強化を行うことで咽頭の前上方運動を改善して食道入口部の開大を図る。食道入口部の食塊通過を促進し、咽頭残留(特に下咽頭残留)を少なくする効果がある。

 

 

 

 

 

 

35 呼吸器疾患患者へのADL指導で正しいのはどれか。

1.食事動作:食事台を高くする。
2.歯磨き動作:肩関節外転位の姿勢を保つ。
3.上衣の更衣動作:前開きよりもかぶり型の衣服を選択する。
4.下肢の洗体動作:長柄のブラシを使用する。
5.洗髪動作:前かがみで洗う。

解答4

解説

(図引用:「息切れを増強させる4つの動作のイラスト(慢性呼吸器疾患)」看護roo!看護師イラスト集様HPより)

血中酸素飽和度が低下しやすい日常生活動作

① 排便(息を止めるため、呼吸のコントロールを行う)
② 肩まで湯船につかる(胸部が圧迫されるため、動作環境や方法を工夫する)
③ 洗髪、上衣更衣、洗体など(上肢を使うため、上肢挙上は片腕のみで、呼吸のコントロールを行う。)
④ズボンや靴下を履く(体を前屈して行うため、動作のスピードや方法を調整する。)

※入浴の生活指導:息切れがある場合は全身入浴を控え、半身浴やシャンプーハットを使用したシャワーなどで対応する。入浴中は酸素吸入を行わない場合が多いため、入浴時間は短めにする。

1.× 食事動作は、食事台を高くする必要はない。なぜなら、食事台を高くすることで上肢が挙上するため。
2.× 歯磨き動作は、肩関節外転位の姿勢を保つ必要はない。むしろ、肩関節外転位に保つ姿勢は、上肢挙上のため避けるべきである。
3.× である。上衣の更衣動作は、かぶり型よりも前開きの衣服を選択する。なぜなら、かぶり型の衣服は、両上肢を挙上して着なければならないため。
4.〇 正しい。下肢の洗体動作は、長柄のブラシを使用する。なぜなら、下肢、特に足部を洗う動作は前かがみで行うため。長柄ブラシの使用によって、前かがみ動作を軽減することができる。
5.× 洗髪動作は、前かがみで洗うのではなく、頭を左右に傾けて片方ずつ洗う。なぜなら、洗髪は、両上肢を挙上して行う動作であり、さらに前かがみで行うことで腹部が圧迫され、呼吸苦を感じやすくなるため。

 

2 COMMENTS

MT

33の回答欄が間違えてます。
ギランバレーは脱髄性なのに「× Guillain-Barré 症候群は変性疾患である。」と書いてます。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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