第48回(H25) 理学療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

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31 脳卒中患者で大脳皮質の病変と比べて視床の病変でみられやすい症状はどれか。

1.視野狭窄
2.病態失認
3.運動失調
4.弛緩性片麻痺
5.空間認知の低下

解答3

解説

視床に特徴的な症状、①視床痛、②運動失調、③視床手、④失語など。

1.× 「視野狭窄」ではなく、眼球の内下方偏位(鼻先凝視)が起こりやすい。視野狭窄は、視覚路(後頭葉など)が障害されると起こりやすい。
2.× 病態失認は、右頭頂葉が障害されると起こりやすい。病態自体を否認する状態をいう。
3.〇 正しい。小脳性の運動失調が起こりやすい。
4.× 弛緩性片麻痺は、大脳皮質病変で生じやすい。なぜなら、運動野は大脳皮質に投射するため。
5.× 空間認知の低下は、右半球が障害されると起こりやすい。

視床症候群

①反対側の感覚障害
②運動麻痺
③視床痛
④眼球の内下方偏位(鼻先凝視)

 

 

 

 

 

32 脳梗塞の患者で麻痺側第3足趾のPIP関節背側が靴ですれ、発赤と疼痛が出現した。
 原因となる足部の状態はどれか。

1.尖足
2.内反
3.外反母趾
4.鉤爪趾 (claw toe)
5.足趾の外側偏位

解答4

解説

 本症例は、麻痺側第3足趾のPIP関節背側が靴ですれ、発赤と疼痛が出現していることから、PIP関節背側が突出していると考えられる。したがって、PIP関節背側が突出する変形を選択する。

 

1.× 尖足は、足関節が底屈位となるため、足尖部に障害が起きやすい。
2.× 内反は、足関節が内返し位となるため、足部外側に障害が起きやすい。
3.× 外反母趾は、母指が外反位となるため、母趾MP関節部内側に障害が起きやすい。
4.〇 正しい。鉤爪趾 (claw toe)は、MP関節過伸展、PIP/DIP関節屈曲した状態であるため、PIP関節背側に障害が起きやすい。
5.× 足趾の外側偏位(尺骨偏位)は、リウマチでよくみられる。あまり問題となるケースは少ないが、仮に問題が起こるとしたら、足部外側である。

 

 

 

 

33 脳卒中片麻痺の間接的嚥下訓練で食道入口部を広げる効果があるのはどれか。

1.舌の運動
2.発音の練習
3.Shaker(シャキア)法
4.喉のアイスマッサージ
5.顔面頸部のマッサージ

解答3

解説

間接的嚥下訓練とは、食べ物を用いずに行う訓練のこと。摂食・嚥下障害に関連する器官の機能改善を目的とする。

 

1.× 舌の運動は、口腔器官のリラクセーション等のために行われる。食前の準備体操としての嚥下体操のひとつ。
2.× 発音の練習は、声門閉鎖の改善や、腹式発声を意識することで呼気圧を高めて食塊が侵入しかけたときに、強い呼気で排出できるようになることを目指す。
3.〇 正しい。Shaker(シャキア)法は、舌骨上筋群を強化して舌骨~咽頭運動を改善して、食道入口部の拡大を改善させることが目的である。方法は、仰向けになり方を床につけたまま頭だけ足の指が見えるまで挙上する。1分間の休憩を入れながら5~10回繰り返す。
4.× 喉のアイスマッサージは、口に含んだ氷の冷刺激によって、嚥下反射を誘発する目的で行う。
5.× 顔面頸部のマッサージは、筋肉をリラックスさせる効果が期待できる。

 

 

 

 

 

34 頸髄損傷(第5頸髄まで機能残存)患者が獲得できる機能で正しいのはどれか。

1.自己導尿ができる。
2.ズボンの着脱ができる。
3.自助具なしで食事摂取ができる。
4.ノブ付ハンドリムの車椅子を操作できる。
5.トランスファーボードを使ってベッドから車椅子へ移乗できる。

解答4

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

C5残存レベル

C5残存レベルの主な動作筋は、三角筋、上腕二頭筋で、肩関節:屈伸・外転・内外旋、肘関節:屈曲、回外が可能となる。移動はハンドリムに工夫は必要だが、平地での車椅子駆動が可能となる。

1.× 自己導尿ができるのは、C7である。なぜなら、自己導尿にはつまみ動作を要求されるため。
2.× ズボンの着脱ができるのは、C 6 B 3である。なぜなら、ズボンの着脱操作では、効果的な側方つまみや強い握り動作が必要となるため。
3.× 自助具なしで食事摂取ができるのは、C7である。C5は、上肢支持装置(PSB/BFO)とユニバーサルカフつきスプーンなどの自助具使用にて食事動作一部可能である。
4.〇 正しい。ノブ付ハンドリムの車椅子を操作できる。C5の移動は、ハンドリムに工夫は必要だが、平地での車椅子駆動が可能となる。
5.× トランスファーボードを使って、ベッドから車椅子へ移乗できる(前方移乗、側方移乗)のは、C6である。

 

 

 

 

 

35 頸髄損傷患者で正常可動域以上の可動性の獲得が望まれるのはどれか。

1.肘関節伸展位での肩関節伸展
2.手関節背屈位での肘関節伸展
3.頸部屈曲位での体幹屈曲
4.膝伸展位での股関節屈曲
5.膝屈曲位での足関節底屈

解答4

解説

 頚髄損傷患者では、長坐位でのバランスが大切になる。さらに長坐位での更衣動作や床上移乗動作での股関節柔軟性が必要になる。具体的な筋は、ハムストリングスの伸張性が必要である。

 

1.× 肘関節伸展位での肩関節伸展は、正常可動域範囲内でも問題ない。長坐位で体幹後傾するため上肢での支持動作でできた方が望ましいが、正常可動域以上の獲得は練習しないことが多い。
2.× 手関節背屈位での肘関節伸展は、正常可動域範囲内でも問題ない。プッシュアップ動作で必要となるが、正常可動域以上の獲得は練習しないことが多い。
3.× 頸部屈曲位での体幹屈曲は、正常可動域範囲内でも問題ない。シャツ等のかぶり動作で必要となるが、正常可動域以上の獲得は練習しないことが多い。
4.〇 正しい。膝伸展位での股関節屈曲である。長坐位の保持、ズボンやソックスなどの更衣動作、床上移動・移乗動作などのADL獲得のため、正常可動域範囲では不十分で長坐位でつま先に手が届く、長坐位で膝が頭につく程度の柔軟性が必要である。ハムストリングスの伸張を行う必要がある。
5.× 膝屈曲位での足関節底屈は、正常可動域範囲内でも問題ない。車椅子などでフットプレートに安定させるため必要となるが、正常可動域以上の獲得は練習しないことが多い。

 

2 COMMENTS

匿名

48回pm34

午前に似た問題があり、その解説には
ズボンの着脱は、「C5」ではなくC7(自助具を用いた更衣自立)である。

今回の問題では、
ズボンの着脱ができるのは、C6である。C6は、ベッド上での工夫されたズボンの着脱が可能になる。

工夫されたズボンの着脱はC6
一般的なズボンの着脱は自助具を使用して可能のため、C7ということでしょうか?

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
ズボンの着脱は、C 6 B 3が正しいようです。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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