この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
※問題の引用:厚生労働省より
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。
・まとめてもらいたい問題や希望、漏れがあったらコメントください。
・当HPに「キーワード検索」の機能がありますので、そちらも積極的にお使いください。
49回 午後83
83 頸髄損傷患者でみられる脊髄ショック期の徴候はどれか。
1. 温痛覚解離
2. 腱反射亢進
3. 痙性四肢麻痺
4. 自律神経過反射
5. 肛門括約筋反射消失
解答5
解説
脊髄ショックとは、重度の脊髄損傷受傷後1日から3週間程度まで出現する。運動・感覚機能および脊髄反射がすべて消失し、自律神経機能も停止する症状が出る。
①肛門括約筋反射の消失
②膀胱・尿道の弛緩による完全尿閉
③神経原性の血管拡張による血液分布異常性ショック
④弛緩性麻痺
⑤深部腱反射・表在反射消失
1.× 温痛覚解離は、Brown–Séquard症候群(ブラウン・セカール症候群)で引き起こされる症状である。
2.× 腱反射は、「亢進」ではなく消失する。
3.× 「痙性四肢麻痺」ではなく弛緩性麻痺になる。
4.× 自律神経は、「過反射」ではなく消失する。
5.〇 正しい。肛門括約筋反射は消失する。それだけでなく、膀胱も弛緩し排尿が困難(完全尿閉)となる。
53回 午後77
77.ショックの発症初期に徐脈がみられるのはどれか。
1.アナフィラキシー反応
2.血管迷走神経反射
3.重症熱傷
4.大量出血
5.敗血症
解答:2
解説
ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。症状として、皮膚(かゆみ、全身の発疹・発赤、口唇や舌の腫れ)、呼吸器(咳、呼吸困難、喘鳴)、消化器(腹痛、吐き気・嘔吐)、循環器(頻脈、血圧低下)、神経(意識障害)などが生じる。
1.× アナフィラキシー反応、選択肢5.敗血症は、血液分布異常性ショックに分類される。蕁麻疹様皮疹、気管支喘息様症状、血圧低下、痙攣の症状が出る。アナフィラキシー反応では、通常、組織の肥満細胞や好塩基球からIgE抗体を介してヒスタミンなどの化学物質が大量に体内に放出される。その結果として血管透過性が亢進し、ショック状態となる。したがって、頻脈となる。
2.〇 正しい。血管迷走神経反射は、ショックの発症初期に徐脈がみられる。血管迷走神経反射は、様々な刺激により副交感神経の亢進と交感神経の抑制が起きることをいう。症状は血圧低下、徐脈が中心で、重度の場合は失神に至る。
3.× 重症熱傷では、血管透過性が亢進し、血管内ボリューム(容量)が減少しショックに至る。代償的に頻脈となる。低容量・血液量減少性ショックに分類され、脱水などに陥る。
4.× 大量出血では、循環血漿量が低下することで血管内ボリュームは減少し、代償的に頻脈となる。低容量・血液量減少性ショックに分類され、脱水などに陥る。
5.× 敗血症、選択肢1.アナフィラキシー反応は、血液分布異常性ショックに分類される。初期症状は、高心拍出状態で悪寒戦慄、発熱、暖かく湿った皮膚、チアノーゼ、精神錯乱などが特徴的である。肺血症も、血管透過性が亢進し、血管内ボリューム(容量)が減少しショックに至る。代償的に頻脈となる。低容量・血液量減少性ショックに分類され、脱水などに陥る。
54回 午前76
76. 神経原性ショックの特徴はどれか。
1. 交感神経の緊張
2. 徐脈
3. 心拍出量の増加
4. 中心静脈圧の上昇
5. 皮膚温の低下
解答2
解説
上位胸椎より高位の脊髄損傷によるショックで、その本態は自律神経系失調によって引きおこされた末梢血管弛緩による血圧低下である。血液分布異常性ショックの一つである。症状としては血圧低下のほか徐脈をともない、四肢末梢の皮膚は暖かく、乾燥している。外傷にともなうショックである。よって、解答は選択肢2. 徐脈である。
1. ×:交感神経などの自律神経系が失調される。副交感神経の相対的亢進状態がみられる。
3. ×:心拍出量は、「増加」ではなく低下する。
4. ×:中心静脈圧は、「上昇」ではなく低下する。なぜなら、血管が拡張されるため。
5. ×:皮膚温は、「低下」ではなく上昇する。なぜなら、血管が拡張されるため。
55回 午後84
84 脊髄損傷で正しいのはどれか。
1.受傷直後は尿失禁状態となる。
2.排尿筋括約筋協調不全は生じない。
3.残尿が150mLでは導尿は不要である。
4.核・核下型神経因性膀胱であれば尿道カテーテル長期留置を行う。
5.核上型神経因性膀胱であればトリガーポイントの叩打による反射性排尿を試みる。
解答5
解説
1.× 受傷直後は、「尿失禁」ではなく尿閉状態となりやすい(脊髄損傷のショック期に見られる症状)。なぜなら、膀胱は弛緩し、完全に排尿不可能となるため。
2.× 排尿筋括約筋協調不全は生じる。なぜなら、慢性期になると、膀胱と尿道括約筋が強調した動きがうまくいかないため残尿が多量に生じる状態となる。
3.× 残尿が150mLでは導尿は必要である。残尿100ml以上は異常で間欠導尿が必要と判断することが多い。
4.× 核型・核下型膀胱(弛緩性膀胱)とは、膀胱筋は収縮する能力を失い、弛緩しやすくなるため、尿が多量に膀胱にたまりがちになる状態のこと。筋肉が収縮できないので、膀胱が過膨張した(たまりすぎた)結果として、尿が膀胱から出てくる。尿は水がいっぱい入りすぎたグラスのようにあふれてこぼれる。この膀胱のタイプは、仙髄レベルか馬尾損傷の脊髄損傷で一般的にある。膀胱が充満する感覚は障害されている。そのため、核・核下型神経因性膀胱であれば、尿道カテーテルを長期留置に行うことはなく、清潔間欠自己導尿や投薬、排尿の時に膀胱の収縮力を上げる治療、電気刺激により排尿を誘発する方法などを行う。
5.〇 正しい。核上型膀胱(反射型または痙性膀胱)とは、受傷前の膀胱のためられる尿量が少なくなる傾向になる状態である。ちょうど他の筋肉に痙性が出現し、独自で収縮するのと同様に、膀胱の筋肉にも痙性が起こり得る。その結果、排尿は頻回で少量になる。この膀胱のタイプは、仙髄レベルより上位の受傷では一般的になる。そのため、核上型神経因性膀胱であればトリガーポイントの叩打による反射性排尿を試みる。
①肛門括約筋反射の消失
②膀胱・尿道の弛緩による完全尿閉
③神経原性の血管拡張による血液分布異常性ショック
④弛緩性麻痺
⑤深部腱反射・表在反射消失
57回 午前93
93 感染性心内膜炎が原因で生じやすいのはどれか。
1.脳塞栓症
2.心嚢液貯留
3.下肢静脈血栓
4.僧帽弁狭窄症
5.循環血漿量減少性ショック
解答1
解説
1.〇 正しい。脳塞栓症は、感染性心内膜炎が原因で生じやすい。感染性心内膜炎は、体内の細菌が心臓弁や心内膜で増殖する疾患である。増殖した細菌がかたまり血流に乗って脳や他臓器で塞栓症を引き起こすことがある。
2.× 心嚢液貯留とは、心臓と、心臓を包む膜である心膜との間に液体が病的に溜まる現象をいう。軽度貯留の場合には無症状であることが多いが、貯留量が増加するに従って、心臓の動きが悪くなり、血液循環障害(心タンポナーゼ)が発生する。短時間の内に予後の厳しい状態となってしまうこともある。
3.× 下肢静脈血栓(深部静脈血栓症)は、深部静脈系に血栓を生じ静脈閉塞を起こすものである。静脈系の血栓の原因として、①静脈の血液の流れが停滞している、②血液が固まりやすい状態になっている、③静脈の内側の細胞が障害されている、という3つの成因が関係する。予防法として、①下肢挙上し、重力による静脈還流を促す、②弾性ストッキングや弾性包帯の利用、③下肢の運動があげられる。ちなみに、動脈系の血栓は、高脂血症、高血圧症、糖尿病、喫煙などが危険因子として、動脈硬化などにより狭くなった血管が詰まることにより生じる。
4.× 僧帽弁狭窄症は、僧帽弁口面積の減少により、拡張期に左房から左室への血液の流入が障害されている状態(左心機能低下)である。ほとんどがリウマチ熱の後遺症として発症する。弁膜症の約35%を占め、弁膜症中最も多い。肺うっ血による労作性呼吸苦(体動時の息切れ)が初発症状となることが多い。ちなみに、冠血流を減少させる原因疾患として、①拡張期血圧の低下(大動脈弁閉鎖不全症)、②心拍出量の減少(大動脈弁狭窄症・重症な僧帽弁狭窄症)などである。
5.× 循環血漿量減少性ショックは、血管内容量の危機的な減少により生じる。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)である。
・脳塞栓:血栓が脳に運ばれて脳血管が詰まる。心疾患(心房細動、心筋梗塞、弁膜症など)
・脳血栓:動脈硬化などにより狭くなった血管が詰まる。高脂血症、高血圧症、糖尿病、喫煙など
59回 午前76
76 末梢血管抵抗が低下するショックをきたす病態はどれか。2つ選べ。
1.アナフィラキシー
2.消化管出血
3.心筋梗塞
4.心タンポナーデ
5.敗血症
解答1・5
解説
ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。
末梢血管抵抗が低下するショックは、①アナフィラキシー、②敗血症性、③神経原性の3つである。それ以外は、循環動態を回復しようと代償作用が働き末梢血管抵抗は増大(血管は収縮)する。
1.〇 正しい。アナフィラキシーは、末梢血管抵抗が低下するショックをきたす。なぜなら、アレルゲンに曝露し、肥満細胞から放出されるヒスタミン等の化学物質が放出されるため。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。
2.× 消化管出血は、末梢血管抵抗が上昇するショックをきたす。循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。
3.× 心筋梗塞は、末梢血管抵抗が上昇するショックをきたす。心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。
4.× 心タンポナーデは、末梢血管抵抗が上昇するショックをきたす。心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。
5.〇 正しい。敗血症は、末梢血管抵抗が低下するショックをきたす。なぜなら、敗血症性ショックの原因の細菌(炎症刺激)により、炎症性サイトカインが産生され、一酸化窒素合成酵素とともに一酸化窒素が大量に合成されるため。一酸化窒素には、血管拡張作用がある。ちなみに、敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。
肺血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。つまり、感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされている状態といえる。そのなかでも敗血症性ショックは「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義される。組織灌流が危機的に減少し、肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。
【初期の症状】悪寒、全身のふるえ、発熱、発汗など。
【症状進行時】心拍数、呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害など。
【重症化】腎不全、肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。