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36 糖尿病患者に対する運動療法で正しいのはどれか。
1.インスリン抵抗性を改善する。
2.血糖値に関わらず推奨される。
3.尿中への糖の排泄を目的とする。
4.Borg指数で17程度が適している。
5.シックデイに関わらず推奨される。
解答1
解説
1.〇 正しい。インスリン抵抗性を改善する(=インスリン感受性を改善する)。なぜなら、運動療法により、筋肉へのグルコース取り込みを促進し、インスリンの働きを効率化させるため。
・インスリン抵抗性とは、インスリンが十分に作られているにもかかわらず、体の細胞(特に筋肉や脂肪)がその作用を受けにくくなり、血糖値が高いままの状態になることを指す。これは、運動不足や食べ過ぎによる肥満が原因となって引き起こされることが多い。
・定期的な有酸素運動や筋力トレーニングを行うと、筋肉へのグルコース(糖)の取り込みが促進され、インスリンの効き目(感受性)が改善する。つまり、運動によってインスリンが効率よく働けるようになり、血糖値が改善される。
2.× 血糖値が極端に悪い場合は、運動療法の絶対的禁忌である。代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)があげられる(ほかは下参照)。
3.× 尿中への糖の排泄を目的とは「していない」。尿中への糖排泄は高血糖状態に伴う現象であり、逆に血糖コントロールの不良を示す。また、血糖値が正常でも尿糖陽性となることもある。腎臓の糖排泄閾値が低下すると、血糖値は正常でも尿糖が出現する。これを腎性尿糖という。
【運動療法の目的】
①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。
4.× Borg指数で、「17(かなりつらい)」ではなく11(楽である)~13(ややきつい)が適している。なぜなら、運動強度は、一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)が適切であるため。
5.× シックデイの場合、運動療法は中止すべきである。なぜなら、体への負担や血糖コントロールの乱れが生じやすく、運動により症状が悪化する可能性があるため。したがって、高血糖にも低血糖にもなり、急性合併症が起きやすいとされる。
・シックデイとは、糖尿病患者さんが治療中、 発熱、下痢、嘔吐をきたしたり、食欲不振のため、 食事ができなくなるなどの体調不良の状態のことをいう。シックデイは、血糖値が上がりやすくなるため、注意が必要である。
(※引用:「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン P30」一般社団法人 日本循環器学会 様HPより)
1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。
①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。
【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)
【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。
(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)
37 急性心筋梗塞の胸痛の特徴で正しいのはどれか。
1.数分以内に消失する。
2.冷汗を伴うことが多い。
3.感冒様の前駆症状がある。
4.放散痛は生じないことが多い。
5.硝酸薬の投与で速やかに消失する。
解答2
解説
急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。ちなみに、労作性狭心症とは、心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄し、血流の流れが悪くなってしまう状態である。症状として、胸痛発作の頻度(数回/周以下)、持続時間(数分以内)、強度などが一定であることや、一定以上の運動や動作によって発作が出現する。その4大危険因子は、「①喫煙、②脂質異常症、③糖尿病、④高血圧」である。そのほかにも、加齢・肥満・家族歴・メタボリックシンドロームなどがある。
心筋梗塞の合併症は、①不整脈、②心不全、③心原性ショック、④機能的合併症(心破裂・心室中隔穿孔・乳頭筋断裂)、⑤血栓塞栓症、⑥心膜炎などである。24時間以内には、①不整脈、②心不全、③心原性ショックが起こりやすい。その後2週間までは、乳頭筋断裂、心破裂、心室中隔穿孔に注意を要する。
1.× 数分以内に消失するのは、狭心症の特徴である。一方、急性心筋梗塞の胸痛は、持続的かつ激しい痛みが20分以上継続することが多い。
2.〇 正しい。冷汗を伴うことが多い。なぜなら、心筋への虚血や強烈な胸痛から交感神経が優位となるため。したがって、発汗(特に冷汗)が現れる。
3.× 感冒様の前駆症状があるのは、Guillain-Barré症候群である。急性心筋梗塞の前駆症状(前兆)として、胸部圧迫感、呼吸困難、左腕や肩、右腕の痛みなどがあげられる。
4.× 放散痛は「生じない」ではなく生じることが多い。放散痛とは、関連痛のうち、病気の原因部位とまったくかけ離れた部位に現れる痛みのことである。例えば、内臓疾患によって腰痛や肩の痛みが出たり、心筋梗塞など心臓の病気により、肩や背中、歯などに痛みが現れることがある。
5.× 硝酸薬の投与で速やかに消失するのは、狭心症の特徴である。狭心症とは、心臓に血液を供給する血管の狭窄により、心筋が虚血(酸素不足)状態になることによって生じる病気である。治療は、血管を拡張させる薬(硝酸薬)や、狭窄の原因となる動脈硬化や血栓を予防する薬(抗血小板薬)を用いる。
Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。
(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)
38 患者との面接時における開かれた質問はどれか。
1.「右膝は痛みますか」
2.「朝食を食べましたか」
3.「退院後は何をしますか」
4.「昨晩は熟睡できましたか」
5.「椅子から立ち上がれますか」
解答3
解説
open-ended question(開かれた質問)は、5W1HでいうWhen(なぜ)、How(どうやって・どのように)に該当する。したがって、患者が症状や来院理由を自由に話せるため、相手からより多くの情報を引き出したい場面で有効である。
closed-ended question(閉じられた質問)は、5W1Hでいう(When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)や、はい/いいえで答えられる限定された質問である。したがって、相手の考えや事実を明確にしたい場面などで有効である。
1.× 「右膝は痛みますか」
2.× 「朝食を食べましたか」
4.× 「昨晩は熟睡できましたか」
5.× 「椅子から立ち上がれますか」
これらは、閉じられた質問である。なぜなら、「はい」または「いいえ」で答えられるため。
3.〇 正しい。「退院後は何をしますか」は、開かれた質問である。
なぜなら、患者自身の将来の計画や生活、希望など、幅広い情報を自由に話してもらえる形式になっているため。
・開かれた質問
患者の自由な答えを求める質問
例:「他に気になるところはありますか?」
・閉じられた質問
「はい・いいえ」で答えられる質問
例:「吐き気はありますか?」
・中立的な質問
1つの答えしか求めない質問法
例:「水分はいつからとれていないですか?」
・焦点型質問
1つの事柄を深く掘り下げる質問法
例:「頭痛についてもう少し詳しく教えてください。」
39 ステロイドの副作用で正しいのはどれか。
1.筋固縮
2.低血圧
3.低血糖
4.大腿骨頭壊死
5.高カリウム血症
解答4
解説
【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。
【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)
ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。
(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)
1.× 「筋固縮」ではなく筋力低下(筋萎縮)がみられる。これをステロイド性筋委縮という。ステロイドは炎症を抑える一方で、筋肉のタンパク質分解を促進し、合成を抑制するため、筋力が低下する。
2.× 「低血圧」ではなく高血圧がみられる。なぜなら、副腎皮質ステロイドには鉱質コルチコイド作用(アルドステロン様作用)と同様の作用を示すため。したがって、腎臓でのナトリウム再吸収と水分保持を促進する。その結果、血液量が増加し、高血圧を引き起こす。加えて、カリウムの排泄が促進される点も影響する。
3.× 「低血糖」ではなく高血糖がみられる。なぜなら、ステロイドは血糖値を上昇させる効果があるため(ステロイド糖尿病)。ステロイドが肝臓での糖新生を促進するとともに、筋肉や脂肪組織でのグルコース利用を低下させ、インスリン抵抗性を引き起こす。その結果、血中のグルコース濃度が上昇し、高血糖の傾向となる。
4.〇 正しい。大腿骨頭壊死は、ステロイドの副作用である。なぜなら、ステロイドの使用により、骨の血流が低下し、特に大腿骨頭のような血流が脆弱な部位で壊死が発生しやすくなるため。ちなみに、特発性大腿骨頭壊死症とは、大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態である。特発性大腿骨頭壊死症は、危険因子により、ステロイド関連、アルコール関連、そして明らかな危険因子のない狭義の特発性に分類されている。
5.× 「高カリウム血症」ではなく低カリウム血症がみられる。なぜなら、副腎皮質ステロイドには鉱質コルチコイド作用(アルドステロン様作用)があるため。この作用により、腎臓でのナトリウム再吸収が促進され、それに伴い水分保持も増加する。その結果、血液量が増加し、循環血液量の増加により高血圧が生じる。さらに、ナトリウム再吸収が増加すると、それに伴いカリウムの排泄が促進されるため、低カリウム血症が生じる。
特発性大腿骨頭壊死症は、危険因子により、ステロイド性、アルコール性、そして明らかな危険因子のない狭義の特発性に分類されています。
以下の2つは、強い危険因子といわれています。
・「ステロイド薬を一日平均で15 mg以上程度(代表的なステロイド薬のプレドニゾロン換算)、服用したことがある」
・「お酒を日本酒で2合以上、毎日飲んでいる」
(※参考:「特発性大腿骨頭壊死症」厚生労働省様HPより)
40 正常成人の立位姿勢で持続的に活動している筋はどれか。
1.腸腰筋
2.大殿筋
3.大腿四頭筋
4.大腿二頭筋
5.ヒラメ筋
解答5
解説
1~2.× 腸腰筋/大殿筋は、持続的に活動していない。なぜなら、矢状面の重心線は、大転子(股関節)を通過するため。したがって、股関節戦略が必要な時や動作時に関与する。ちなみに、腸腰筋/大殿筋の白筋と赤筋の割合は、5:5である。
3~4.× 大腿四頭筋/大腿二頭筋は、持続的に活動していない。なぜなら、立位姿勢での膝関節は伸展位(骨性ロック)がかかるため。したがって、膝関節の運動や動作時に関与する。ちなみに、大腿四頭筋/大腿二頭筋の白筋と赤筋の割合は、6:4である。
5.〇 正しい。ヒラメ筋は、立位姿勢で持続的に活動している。なぜなら、正常立位での重心線が身体のやや前方を通り、背側にある筋群は全て持続的な筋緊張を保たなければならないため。また、ヒラメ筋は赤筋(約9割)であることからも持続的に活動することに適している。
理想的な重心線:①乳様突起(耳垂のやや後方)→②肩峰(肩関節の前方)→③大転子→④膝蓋骨後面(膝関節前部)→⑤外果前方を通る。
Q.じゃあ抗重力筋って何?
A.抗重力筋とは、重力に逆らって体を支えるために働く筋肉全体を指す。ただし、その中でも常に持続的に活動する筋と、必要に応じて一時的に働く筋肉がある。今回は、その前者を問う問題でした。