第46回(H23) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題96~100】

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96.いつも右足から踏み出さねばならないという思考の異常はどれか。

1.保続
2.迂遠
3.作為体験
4.思考化声
5.強迫観念

解答5

解説

1.× 保続とは、ある行動が望まれたり求められたりしていない場合や、その行動が適切ではない場合でも、やり続けることである。遂行機能障害にみられる。
2.× 迂遠とは、迂遠とは話が長く、回りくどい状態を指す。回りくどいが、結論には至ること。統合失調症にみられる。
3.× 作為体験(させられ体験)とは、 自律的な思考や行動ができず、他の人や力によって 何かをさせられてしまう感覚である。統合失調症にみられる。
4.× 思考化声とは、頭の中で考えたことが声として復唱したように聞こえる幻聴の一種である。統合失調症でみられる。
5.〇 正しい。強迫観念は、自分の意志に反する不合理な観念(強迫観念にとらわれ、それが不合理だと分かっていても打ち消そうとすると強い不安が生じ、不安を解消するために不合理な行動をとるが、なかなかその観念を打ち消すことができない状態である。強迫性障害(強迫神経症)にみられる。「いつも右足から踏み出さねばならないという思考の異常」は、普通、どちらの足からでも歩きだすことができるので、不合理である。

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97.治療中の統合失調症患者で眼球が上転し戻らない場合、最も可能性が高いのはどれか。

1.転換症状
2.悪性症候群
3.アカシジア
4.急性ジストニア
5.遅発性ジスキネジア

解答4

解説

本症例のポイント

本症例は、「治療中の統合失調症患者」で、服用中の抗精神病薬の副作用と考えられる。「眼球が上転し戻らない」症状が出るものを選ぶ。

1.× 転換症状とは、自分では解決できないストレスや葛藤、欲求不満や、精神的につらい出来事が引き金となり、それが知覚・運動障害などに置き換えられる障害である。患者はこれらの身体症状にたいして、無関心であったり容易に受容している態度が見られる。転換性障害にみられる。
2.× 悪性症候群とは、抗精神病薬の使用初期や、抗精神病薬・抗Parkinson病薬の急激な中断により、発熱(ときに40℃以上)、錐体外路症状(特に筋強剛)、自律神経症状(頻脈・発汗・流涎)、精神症状(昏迷、意識障害)、高CK血症などを来すものである。急激に出現して処置をしないと死亡するおそれのある重篤な副作用である。
3.× アカシジア(鎮座不能症)の症状は、①座ったままではいられない(鎮座不能)、②じっとしていられない、③下肢のむずむず感の自覚症状などである。抗精神病薬の投与初期に起こりやすく、薬剤性パーキンソニズムの一種である。
4.〇 正しい。急性ジストニアとは、錐体外路症状の一種で、抗神病薬の投与初期に起こりやすい。筋緊張の異常亢進による体幹・頚部捻転、胸郭の傾斜、肘関節過伸展、手指の過屈曲などを呈する異常姿勢がみられ、これが、眼筋に起こると眼球上転となる。
5.× 遅発性ジスキネジアとは、抗精神病薬の長期投与中に出現し、持続的な不随意運動である。主に口部周辺、頚部で起こる。

 

 

 

 

 

 

98.仮面うつ病で正しいのはどれか。

1.作話症状が目立つ。
2.仮性認知症を呈する。
3.仮面様顔貎を呈する。
4.身体症状が前景にでる。
5.引きこもり傾向が強い。

解答4

解説

仮面うつ病とは?

仮面うつ病とは、うつ病に付随する精神症状以外の、身体症状(睡眠障害・倦怠感・食欲不振など)の訴えが多くて、背景にある抑うつ気分や制止などの精神症状が表面に現れないものをいう。

1.× 作話症状は目立たない。作話は、アルコール精神病であるコルサコフ症候群や、アルツハイマー型認知症でみられる。作話とは、記憶障害の一種であり、過去の出来事・事情・現在の状況についての誤った記憶に基づく発言や行動が認められる点が特徴的である。 作話は、「正直な嘘」と呼ぶべきものであり、通常において本人は騙すつもりは全く無く、自分の情報が誤りであるとは気がついていないので、この点で嘘とは区別される。
2.× 仮性認知症は呈さない。仮性認知症(老人性うつ病)は、高齢者のうつ病で反応が鈍いなどの症状により、認知症と間違えられるような状態をいうことが多い。うつ病に付随する身体症状(睡眠障害、倦怠感、食欲不振など)の訴えが多く、背景にある抑うつ気分などの精神症状が表面に現れないものをいう。多くの場合その主症状が、生きがいや興味の消失、漠然とした不安感などである。
3.× 仮面様顔貎は呈さない。仮面様顔貎は、パーキンソン病でみられる。仮面様顔貌とは、表情が乏しく、仮面をつけているような顔のこと。
4.〇 正しい。身体症状が前景にでる。仮面うつ病とは、うつ病に付随する精神症状以外の、身体症状(睡眠障害・倦怠感・食欲不振など)の訴えが多くて、背景にある抑うつ気分や制止などの精神症状が表面に現れないものをいう。
5.× 引きこもり傾向は強くない。引きこもり傾向は、うつ病みられる。仮面うつ病と仮性認知症はともにうつ病であるが、仮面うつ病では、不安焦燥が強く、多訴であり、引きこもり傾向にはないのが特徴である。

 

 

 

 

 

 

99.光刺激で発作が誘発されるのはどれか。

1.欠神てんかん
2.側頭葉てんかん
3.ミオクロニーてんかん
4.West(ウェスト)症候群
5.Lennox-Gastaut(レンノックス・ガストー)症候群

解答3

解説
1.× 欠神てんかん(アブサンス)は、過呼吸により誘発されやすい。5~10秒程度の意識消失で、脳波上は典型的な3Hzの棘徐波複合を認める。学童期に発症することが多く好発年齢は5~8歳である。ちなみに、女児に多い。
2.× 側頭葉てんかんは、睡眠で誘発されやすい。複雑部分発作においては、側頭葉に限局する棘徐波複合脳波が認められる。好発年齢は学童期~成人である。
3.〇 正しい。ミオクロニーてんかんは、光刺激で発作が誘発される。若年性ミオクロニーは、突然全身あるいは四肢や体幹の一部にけいれんが起こるもので、発作時も意識は保たれる。好発年齢は、1~10歳である。
4.× West(ウェスト)症候群(点頭てんかん)は、原因不明の器質的脳障害に伴うことがある。発作間欠期の脳波で50~60%にはhypsarrhythmia (ヒプスアリスミア:高度の律動異常)を示す。他にも、眼球上転や頭部前屈が反復、下肢屈曲、四肢・体幹が屈曲するような痙攣発作が起こる。好発年齢は、乳幼児(4~12か月)である。
5.× Lennox-Gastaut(レンノックス・ガストー)症候群は、West(ウェスト)症候群(点頭てんかん)より移行して起こる。発作は難治性で頻発し、重積状態をきたしやすい。好発年齢は、幼児期(3~5歳)である。

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100.統合失調症の急性期治療で最も重要なのはどれか。

1.薬物療法
2.精神療法
3.環境調整
4.生活指導
5.心理教育

解答1

解説

統合失調症の急性期の治療

統合失調症の急性期は、幻覚や妄想が活発で、興奮が強い時期である。落ち着いて話したり聞いたりすることが困難なことが多い。まず、興奮を抑え、幻覚妄想を軽減する治療法(薬物療法)が選択される。

1.〇 正しい。薬物療法は、統合失調症の急性期治療で最も重要である。なぜなら、急性期の症状を改善することが必要であるため。抗精神病薬の投与を行うが、経口投与ができない場合は、注射による投与も場合によって行っていく。
2.× 精神療法は、急性期には困難である。なぜなら、落ち着いて話したり聞いたりすることが困難なことが多いため。精神療法では、患者との面接を通して、まずは共感的態度をとりながら患者の語ることを受容し、やがて体重や食事に対する誤った認識のあることを自覚してもらい、身体イメージの障害を徐々に修正していく。
3~4.× 環境調整/生活指導は、優先度が低い。なぜなら、統合失調症の急性期は、幻覚や妄想が活発で、興奮が強い時期であるため。環境調整/生活指導は回復期になってからの課題である。ちなみに、精神疾患分野による環境調整とは、仕事や学校や家事を一時休んで、治療に専念する環境をつくることなどが含まれる。
5.× 心理教育は、優先度が低い。なぜなら、統合失調症の急性期は、幻覚や妄想が活発で、興奮が強い時期であるため。環境調整/生活指導は回復期になってからの課題である。心理教育とは、症状の理解や服薬の必要性の理解など、病識の獲得と治療方法への理解が中心に行われる。

 

 

※問題の引用:第46回理学療法士国家試験、第46回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。

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