第61回(R8)理学療法士国家試験 解説【午前問題1~5】

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※解答の引用:第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について(厚生労働省HPより)

 

1 関節可動域測定法〈日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準1995年〉に従って左股関節屈曲を行ったところ、疼痛の訴えはないが図のような状態となったため測定を中断した。
 この状態の説明で正しいのはどれか。

1.骨盤を後傾させて測定する。
2.基本軸は大転子を通る水平線である。
3.屈曲の参考可動域は150度である。
4.腸骨大腿靭帯が屈曲制限因子である。
5.右腸腰筋の短縮が疑われる。

解答

解説

股関節屈曲の測定方法

【基本軸】体幹と平行な線

【移動軸】大腿骨(大転子と大腿骨外果の中心を結ぶ線)

【測定部位及び注意点】
①骨盤と脊柱を十分に固定する。
②屈曲は背臥位(膝屈曲位で行う)
③伸展は腹臥位(膝伸展位で行う)

1.× 骨盤を「後傾させて」ではなく中間位にて測定する。なぜなら、骨盤を後傾させると、股関節屈曲角度が“見かけ上”増えて正しい関節運動を測れないため。つまり、骨盤や脊柱の動きを最小限にする必要があるため、骨盤と脊柱を十分に固定して測定する。

2.× 基本軸は、「大転子を通る水平線」ではなく体幹と平行な線である。

3.× 屈曲の参考可動域は、「150度」ではなく125度である。
※選択肢1~3に限って、「測定を中断した“図の状態”が何を示すか」を問いている問題であり、病態によって測定方法が変化することはないため、否定できる。

4.× 腸骨大腿靭帯は、「屈曲」ではなく伸展制限因子である。なぜなら、腸骨大腿靭帯(Y靭帯)は、股関節の関節包の前面から補強し、股関節伸展で緊張するため。したがって、股関節屈曲ではむしろ弛緩する。

5.〇 正しい。右腸腰筋の短縮が疑われる。なぜなら、右腸腰筋が短縮している場合、左股関節屈曲を行うと、右股関節が代償的に屈曲して浮き上がる(Thomasテスト)ため。機序として、左股関節を屈曲すると骨盤は後傾しやすいが、骨盤が後傾すると右股関節は相対的に伸展位になり、伸展できない右腸腰筋短縮が露呈して右大腿が持ち上がる。
・腸腰筋は、腸骨筋と大腰筋の2筋からなる。腸骨筋の作用は股関節屈曲、外旋である。

Thomasテストとは?

股関節の屈曲拘縮をみるための検査である。
①患者は、背臥位で測定する。
②検査者は、患者の膝を一側ずつ屈曲させ胸に近づける。
③胸に近づけた方と反対側の股関節が屈曲し膝が持ち上がれば、陽性である。
④胸に近づけた方と反対側の股関節の屈曲拘縮が生じていることを示す。

 

 

 

 

 

2 70歳の男性。糖尿病性ニューロパチー。下腿筋の萎縮と筋力低下が著明のためDanielsらの徒手筋力テストを行ったところ、関節運動が全く生じなかったため、段階1の検査を図のように実施した。
 対象としている筋はどれか。

1.後脛骨筋
2.前脛骨筋
3.短腓骨筋
4.長母指屈筋
5.ヒラメ筋

解答

解説
1.× 後脛骨筋(足の内がえし)の段階1の触診部位は、内果下方(内果と舟状骨の間)である。

2.× 前脛骨筋(足関節の背屈と足の内がえし)の段階1の触診部位は、「足関節の内側部」で触診する。

3.〇 正しい。短腓骨筋(足の底屈を伴う足の外がえし)を対象としている。短腓骨筋(足の底屈を伴う足の外がえし)の段階1の触診部位は、「外果の後ろから前へまわり、第5中足骨底の近位部に向かう腱の上に示指を当てる」。

4.× 長母指屈筋(母趾と足趾の遠位趾節間関節:DIP関節と近位趾節間関節:PIP関節の屈曲)の段階1の触診部位は、「母趾の基節の足底面」を触知する。

5.× ヒラメ筋(足関節底屈)の段階1の触診部位は、「遠位ふくらはぎの後外側面」を触知する。

 

 

 

 

 

3 52歳の男性。交通事故による下腿切断。完成した義足を図に示す。立脚後期に膝折れが生じた。
 原因で正しいのはどれか。

1.前足部が硬すぎる。
2.靴の踵が低すぎる。
3.足部が底屈しすぎる。
4.ソケットが足部に対して後ろすぎる。
5.ソケットの初期屈曲角が大きすぎる。

解答

解説

立脚中期の膝関節の膝折れの原因

①断端後面末梢部の痛み
②ソケットが踵に対し前方
③足部が背屈位(特に立脚中期
④膝関節伸展筋の機能不全
⑤ソケットの初期屈曲角が過大

1.× 前足部が硬すぎる場合、むしろ反張膝になりやすい(特に立脚中期)。なぜなら、前足部が硬いと、立脚後期に中足指節関節が伸展不全(フォアフットロッカーが機能不全)となるため。したがって、立脚後期が短縮し、早期ヒールオフ・推進低下(反張膝)となる。

2.× 靴の踵が低すぎる場合、立脚後期ではなく「立脚中期まで」に膝折れがみられることが多い。なぜなら、靴の踵が低すぎる場合(足関節背屈位:踵足)、立脚中期に膝関節屈曲位かつ、床反力(重心線)が膝関節の後方に回りやすくなるため。したがって、膝折れ(膝の屈曲不安定)が出やすい。立脚中期が最も荷重され、膝折れがみられやすいため、本症例の「立脚後期に膝折れが生じた」という説明は、完全一致とはならない。

3.× 足部が底屈しすぎる場合、むしろ反張膝になりやすい(特に立脚中期)。なぜなら、歩行に伴う足関節背屈角度を膝関節伸展で代償しようとするため。
【反張膝の原因】
①膝関節伸展筋の筋力低下
②固有感覚障害による代償
③足関節底屈筋の痙性
④足関節底屈拘縮
※装具療法:①足関節底屈制動、②膝の安定化、③患側の補高など。
※運動療法:①筋力増強、②持続伸張、③立位体重支持運動など。

4.× ソケットが足部に対して後ろすぎる場合、むしろ反張膝になりやすい(特に立脚中期)。なぜなら、ソケットが足部に対して後ろすぎる場合、床反力線(重心線)は、膝関節軸の前方を通りやすくなるため。したがって、立脚中期に、膝伸展モーメントが得られ、反張膝が生じやすくなる。

5.〇 正しい。ソケットの初期屈曲角が大きすぎる。なぜなら、ソケットの初期屈曲角が大きすぎる場合、立脚中期以降に股関節伸展が限界に達した時に、骨盤を前傾させること(もしくは膝関節屈曲)で、股関節伸展を補うため。一方、ソケットの初期屈曲角が小さすぎると、立脚期に膝関節が伸展方向に誘導し、膝屈曲が制限され反張膝を生じる。

立脚相の腰椎前腕の増強の原因

①ソケットの初期屈曲角不足。
②股関節伸展筋力が不足し、代償動作として出現している。
③ソケットの前壁の支持力不足である。

 

 

 

 

 

次の文により、4、5の問いに答えよ。
 70歳の男性。右利き。右脳出血による左片麻痺。発症後2週。運動麻痺は左上下肢ともBrunnstrom法ステージⅢ、感覚障害は中等度。座位では、右上下肢で座面や床面を押し、図のような姿勢となる。転倒の危険があり、理学療法士が正中位に修正を試みるが抵抗する。平行棒内立位でも同様に右上下肢で押すため身体は左に傾斜し、立位保持要介助である。

4 理学療法を行う上で最も優先する検査はどれか。

1.SCP
2.SLTA
3.TMT
4.WAIS-Ⅳ
5.WCST

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の男性(右利き、右脳出血による左片麻痺:発症後2週)。
・運動麻痺:左上下肢ともBrunnstrom法ステージⅢ、感覚障害は中等度。
・座位:右上下肢で座面や床面を押すPusher現象)。
・転倒の危険があり、理学療法士が正中位に修正を試みるが抵抗する。
・平行棒内立位でも同様に右上下肢で押すため身体は左に傾斜し、立位保持要介助である。
→本症例は、pusher現象(プッシャー現象)がみられる。pusher現象とは、脳血管疾患後に生じる姿勢異常の一種である。座位や立位で姿勢を保持させたときに、非麻痺側上肢・下肢で麻痺側へ押し、身体が麻痺側に傾き、他者が修正しようとしても抵抗してしまう現象をいう。右半球損傷に多い。

1.〇 正しい。SCP(Scale for Contraversive Pushing)が、理学療法を行う上で最も優先する検査である。なぜなら、本症例の主問題はPusher現象であり、その重症度の評価に寄与するため。
・SCP(Scale for Contraversive Pushing)は、プッシャー現象を評価するスケールである(※下参照)。

2.× SLTAより優先されるものが他にある。なぜなら、SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は、失語症の検査であるため。26項目の下位検査での構成で、「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」について6段階で評価する。

3.× TMTより優先されるものが他にある。なぜなら、TMT(Trail Making Test)は、注意機能や遂行機能を調べる検査であるため。視覚による探索能力と、注意機能や遂行機能を測定できる。紙面にランダムに並べられた数字や文字を順番にたどり、線で結んでいく。

4.× WAIS-Ⅳより優先されるものが他にある。なぜなら、WAIS-IV(Wechsler Adult Intelligence Scale-Fourth Edition)は、成人の知能検査(16歳0カ月〜90歳11カ月)であるため。個別式の包括的な臨床検査であり、特定の認知領域の知的機能を表す4つの合成得点(VCI、PRI、WMI、PSI)と全般的な知能を表す合成得点(FSIQ)を算出する。

5.× WCSTより優先されるものが他にある。なぜなら、WCST(Wisconsin Card Sorting Test:ウィスコンシンカード分類課題)は、前頭葉機能検査法で遂行機能障害の診断に用いるため。①計画を立てること、②計画を達成するためにとるべき行動を決めること、③状況の変化に対応すること、④衝動的に行動することを抑えることなどの前頭葉の実行機能を調べる検査である。提示されたトランプのようなカードを、色・数・形のどれに基づいて分類するかを判断する。

(※図引用:「Scale for Contraversive Pushing(SCP)」群馬県理学療法士協会様HPより)

 

 

 

 

 

次の文により、4、5の問いに答えよ。
 70歳の男性。右利き。右脳出血による左片麻痺。発症後2週。運動麻痺は左上下肢ともBrunnstrom法ステージⅢ、感覚障害は中等度。座位では、右上下肢で座面や床面を押し、図のような姿勢となる。転倒の危険があり、理学療法士が正中位に修正を試みるが抵抗する。平行棒内立位でも同様に右上下肢で押すため身体は左に傾斜し、立位保持要介助である。

5 移乗動作時に右上下肢でベッド柵や床面を強く押して麻痺側に傾くため、自立が難しい。
 移乗動作改善を目的とした理学療法で最も適切なのはどれか。

1.閉眼での立位保持練習
2.右上下肢の関節可動域運動
3.右大腿四頭筋の筋力増強運動
4.手すりを用いた立ち上がり練習
5.リーチ動作を用いた非麻痺側への重心移動

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の男性(右利き、右脳出血による左片麻痺:発症後2週)。
・運動麻痺:左上下肢ともBrunnstrom法ステージⅢ、感覚障害は中等度。
・座位:右上下肢で座面や床面を押すPusher現象)。
転倒の危険があり、理学療法士が正中位に修正を試みるが抵抗する。
・平行棒内立位でも同様に右上下肢で押すため身体は左に傾斜し、立位保持要介助である。
・移乗動作時:右上下肢でベッド柵や床面を強く押して麻痺側に傾くため、自立が難しい
→本症例は、pusher現象(プッシャー現象)がみられる。pusher現象とは、脳血管疾患後に生じる姿勢異常の一種である。座位や立位で姿勢を保持させたときに、非麻痺側上肢・下肢で麻痺側へ押し、身体が麻痺側に傾き、他者が修正しようとしても抵抗してしまう現象をいう。右半球損傷に多い。

→Pusher現象には姿勢鏡を用いた視覚的フィードバックや押さない環境でのアプローチの有効性が示されている(※引用:「Pusher現象により座位崩れを呈する脳血管障害片麻痺患者への体性感覚フィードバックの有効性について」著:自見美菜)

1.× 閉眼での立位保持練習より優先されるものが他にある。なぜなら、Pusher現象の視覚情報は、“正しい垂直”を再学習する重要な手がかりになるため。したがって、「閉眼」ではなく開眼により、鏡のフィードバックが有効とされている。

2.× 右上下肢の関節可動域運動より優先されるものが他にある。なぜなら、関節可動域運動とPusher現象の関連性は低いため。また、右上下肢は非麻痺側であるため、関節可動域運動は麻痺側である左上下肢の方が関節可動域制限に対し有用である。

3.× 右大腿四頭筋の筋力増強運動より優先されるものが他にある。なぜなら、筋力増強運動とPusher現象の関連性は低いため。また、右上下肢は非麻痺側であるため、筋力増強運動は麻痺側である左上下肢の方が、筋力低下に対し有用である。

4.× 手すりを用いた立ち上がり練習より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、①座位で転倒の危険性があること(静的)、②移乗動作時は、さらにPusher現象が著明であることから、立ち上がり練習は時期尚早であると考えられるため。静的から動的に安全な重心移動の獲得を目指していく。また、非麻痺側に手すりを使うと、さらにPusher現象を助長する特徴を持つ。

5.〇 正しい。リーチ動作を用いた非麻痺側への重心移動が、移乗動作改善を目的とした理学療法で最も優先される。なぜなら、Pusher症候群では、他動的に正中位へ戻すと抵抗が出るため。したがって、課題(リーチなど)で、視覚手がかり(姿鏡)を使いながら、本人が安全に非麻痺側へ重心を移す成功体験を積むことが望まれる。

バランス練習の流れ

①支持基底面内に重心を保持する(静的)。
②支持基底面内なら重心を移動できる(動的)。
③支持基底面内から逸脱しても新たに支持基底面を形成できる(立ち直り)。

 

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