第60回(R7)作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

41 睡眠衛生指導で正しいのはどれか。

1.2時間程度の昼寝を推奨する。
2.朝起きたらカーテンを開ける。
3.毎日決められた時間に床に就く。
4.どうしても眠れない時には寝酒をする。
5.夜間は就寝直前まで明るい室内で過ごす。

解答

解説
1.× 「2時間」ではなく30分程度の昼寝を推奨する。なぜなら、必要以上に長く寝すぎると目覚めの悪さ(睡眠慣性)が生じるため。短時間(30分以内)の昼寝で、午後からの覚醒度の向上や夜間睡眠の質の向上が期待できる報告もある。

2.〇 正しい。朝起きたらカーテンを開ける。なぜなら、日中カーテンを開けておくことで、光刺激により覚醒を促し、睡眠・覚醒リズムの調整をするように働きかけられるため。

3.× 毎日決められた時間に床に就く優先度は低い。なぜなら、眠たくないのに無理に眠ろうとすると、かえって緊張を高め、眠りへの移行を妨げるため。自分にあった方法で心身ともにリラックスして、眠たくなってから寝床に就くようにすることが重要である。ただし、寝床に入る時刻が遅れても、朝起きる時刻は遅らせず、でき
るだけ一定に保つように指導する(※参考:「健康づくりのための睡眠指針2014」厚生労働省様HPより)。

4.× どうしても眠れない時にも、寝酒をする必要はない。なぜなら、就寝前の飲酒や喫煙はかえって睡眠の質を悪化させるため。アルコールは、睡眠薬代わりに少し飲んでいる場合でも、慣れが生じて量が増えていきやすい。寝酒や喫煙は、そもそも生活習慣病の発症・重症化の危険因子になるとともに、二次的に睡眠(睡眠時無呼吸など)を妨げる可能性も指摘されている。 

5.× 夜間の就寝直前は、「明るい」ではなく暗め室内で過ごす。なぜなら、明るい部屋は、光の覚醒作用や体内時計を介したリズムを遅らせる作用のため。したがって、就寝時には、必ずしも真っ暗にする必要はないが、自分が不安を感じない程度の暗さにすることが大切である。

(※引用:「健康づくりのための睡眠指針2014」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

42 解離症〈解離性障害〉に対する作業療法士の対応で適切なのはどれか。

1.患者の希望通りに作業活動を行う。
2.無意識の葛藤が発散できる活動を行う。
3.うまくできない部分は作業療法士が行う。
4.健忘が生じた場合には作業療法を中止する。
5.作業療法の時間外でも個別に活動を継続する。

解答

解説

解離性障害とは?

解離性障害とは、心的外傷体験・人間関係などを原因として、それらの問題を抱えきれず、記憶・同一性の統合を失うことで当面の苦痛を回避する行動をいう。健忘、混迷状態、解離性同一性障害(多重人格)、Ganser症候群(偽認知症の一つで的外れ応答が特徴)などがみられる。疾病利得が根底に存在する。初期治療の目標は、患者との信頼関係を築き、安全な環境を提供することに重点を置くべきである。

1.× 患者の希望通りに作業活動を行う優先度は低い。なぜなら、患者の要求が必ずしも解離性障害に有効とは限らないため。また、患者が自分自身の治療について十分に理解していない場合も考えられる。患者の要求通りに作業を進める必要はないが、患者の要求を傾聴・共感・肯定の姿勢を大切にする。ただし、解離性同一性障害(多重人格)の症状も見られるため、傾聴にも注意も必要である。

2.〇 正しい。無意識の葛藤が発散できる活動を行う。なぜなら、解離性障害の患者は、過去のトラウマやストレス(心的外傷体験・人間関係など)が原因として起こっているため。無意識の葛藤は、精神分析療法で重視される。ストレスやトラウマに対処する新しい方法を提案することにつながり、ストレスやトラウマに対処する能力を向上させることができる。

3.× 必ずしも、うまくできない部分は作業療法士が行う必要はない。なぜなら、作業療法士が患者の代わりに作業を行うと、患者自身の達成感や自立が阻害されるため。治療の目的は、患者が自分でできることを増やし、自己統合を促進することであるため、本人の活動参加を促すことが重要である。

4.× 必ずしも、健忘が生じた場合には作業療法を中止する必要はない。なぜなら、健忘が生命の危険を及ぼす程度とは言えないため。健忘が起きた際には、作業療法士が環境を整え、安心感を提供しながら、患者の安全な統合を図る必要がある。ちなみに、健忘とは、きっかけとなった出来事の数秒前、数日前、さらに前、またはその後に起こった体験や出来事を思い出す能力が部分的または完全に失われる障害である。原因として、頭部への衝撃による外傷性のものや、脳手術による脳の損傷、服用している薬の副作用などがあげられる。

5.× 作業療法の時間外でも個別に活動を継続する必要はない。なぜなら、解離性障害の原因は、心的外傷体験・人間関係などがあげられ、症状として疾病利得が根底に存在するため。したがって、個別的な支援は、症状の悪化になりかねない。

 

 

 

 

 

43 精神科デイケアの小集団療法で適切なのはどれか。

1.メンバー間の相互交流を促す。
2.混乱したときは多数決で決める。
3.スタッフがリーダーシップをとる。
4.感情的な発言は集団内で取り上げない。
5.沈黙がある場合はスタッフが議題を提供する。

解答

解説

精神科デイケアとは?

精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。

1.〇 正しい。メンバー間の相互交流を促す。なぜなら、相互交流が居場所の提供や社会復帰につながるため。孤立感が解消され、安心感につながる。

2.× 混乱したときに多数決で決める必要はない。なぜなら、必ずしも混乱が多数決で解決するとは限らないため。よりこじれる可能性も考えなければならない。また、一般的に、多数決は強い意見が優先され、少数意見が無視されるリスクがある。したがって、グループの多様性や個々のニーズが損なわれる可能性があることにも配慮しなけなればならない。

3.× スタッフがリーダーシップをとる必要はない。なぜなら、小集団療法は、メンバー自らが主体的に参加し、相互に支え合う環境を目指すため。したがって、スタッフはグループのファシリテーターとして介入する。ファシリテーターとは、会議や話し合いの場で、中立的な立場に立って参加者の意見をまとめ、より良い結論に導く役割を担う人のことである。進行役としての役割だけでなく、参加者の意見を聞きやすくまとめて伝えたり、他の参加者たちのスムーズな理解を促したりする。

4.× 感情的な発言は、集団内で取り上げないとルールにすべきではない。むしろ、小集団療法において、感情的な発言も重要な治療資源となる情報である。共感的・受容的な態度は、社会的な交流の一助となる。強い感情を表出した際に、その感情について掘り下げ、話し合うことで、他のメンバーも共感し、問題の理解が深まることがある。

5.× 沈黙がある場合は、スタッフが議題を提供する優先度は低い。なぜなら、沈黙した場合は、それぞれのメンバーなりに次の言葉を作っている可能性があるため。ただし、沈黙が長時間続き、参加意欲が低下、グループの活性化が妨げられると感じられる流れだった場合、適度な介入が必要である。

 

 

 

 

 

44 急性期後期のうつ病患者に対する作業療法導入期の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.経験のない作業を勧める。
2.作業工程が複雑な作業を勧める。
3.作業中に励ましの言葉をかける。
4.休養が重要であることを説明する。
5.うつ症状は気持ちの持ちようであると伝える。

解答1・4

解説

1.〇 正しい。経験のない作業を勧める。なぜなら、経験のある作業(過去の趣味活動など)は、病前の出来ていた頃と比較することが容易であるため。したがって、経験のある作業は、経験のない作業より不安やショックを受けやすいといえる。

2.× 作業工程が、「複雑」ではなく単純な作業を勧める。なぜなら、複雑な工程が要求される作業は、工程を飛ばしたりと、失敗しやすく、劣等感や無力感を増大させる恐れがあるため。そのため、工程がはっきりしている作業を選択する。

3.× 作業中に励ましの言葉をかける優先度は低い。なぜなら、急性期で励ましや積極性を促すことによってますます患者を追い込みかねないため。うつ病患者は頑張りたいのに頑張れない点に苦痛を感じていることが多いので、患者のペースに合わせることが重要である。

4.〇 正しい。休養が重要であることを説明する。なぜなら、うつ病患者の特徴として、几帳面で完璧主義な一面があるため。完成がある作業に対し、細部の完成まで、自身に負担をかけるところもみられる。したがって、休息と活動のバランスを理解するよう説明する。

5.× うつ症状は気持ちの持ちようであると伝える必要はない。なぜなら、患者に自己責任を感じさせかねないため。また、うつ病は、単に「気持ちの持ちよう」ではなく、病気である。うつ病とは、脳内の神経伝達物質のアンバランスにより、気分や感情をうまく調節できなくなり、心身の不調が表れる病気である。

うつ病の対応

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

 

 

 

 

45 統合失調症の作業療法で観察される患者の特徴はどれか。

1.活動への関心が拡大する。
2.作業工程で同じ失敗を繰り返す。
3.複数の課題を並行して実施する。
4.他患者の活動の仕方に口出しする。
5.予定外の出来事を的確に対処する。

解答

解説

統合失調症の行動特性

統合失調症患者は、認知機能の障害により、物事を順序立てて考えることが難しい。したがって、一度にたくさんの課題に直面すると混乱する。一つの作業を繰り返すことは可能なことが多いが、複雑な工程や同時並行で作業を進めることは困難である。

【統合失調症の行動特徴】
①柔軟性がない、②計画性がない、③慣れがない、④同時並行ができない、⑤作業量に変動がある。

1.× 活動への関心が、「拡大」ではなく低下する。なぜなら、統合失調症の症状として、無気力や引きこもりがみられるため。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

2.〇 正しい。作業工程で同じ失敗を繰り返す。なぜなら、目的に合った行動がとれにくいため。カタトニアとは,奇異な行動の極端な例の1つであり,硬直した姿勢を維持し,動かそうとすると抵抗する,無目的かつ誘因のない運動活動を行うことなどがある(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)。

3.× 「複数の課題を並行」ではなく単一の課題に専念をして実施する。なぜなら、統合失調症は、注意や認知、思考のコントロールが難しくなることがあり、複数の課題を同時に進めると混乱やストレスが増す可能性があるため。

4.× 他患者の活動の仕方に口出しするのは、躁病の特徴である。躁病とは、病的なまでに気分が高揚して、開放的になったり怒りっぽくなったりした状態のことである。尊大な振る舞いをする、延々しゃべり続ける、考えが次々飛躍する、注意が散漫になる、活発に活動し寝なくても平気なほどになる、焦燥感が目立つ、といった様子もみられ、ギャンブルや買い物などの浪費が盛んになるといった問題行動を伴うこともある。

5.× 予定外の出来事を的確に対処することが苦手である。したがって、一般的に、統合失調症の患者には期待しにくい。なぜなら、統合失調症では、注意や認知、思考のコントロールが難しくなるため。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)