この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
36 慢性心不全患者の在宅生活指導で適切なのはどれか。
1.安静臥床を指示する。
2.しゃがんで床を拭くように勧める。
3.息切れ時には背臥位をとるように促す。
4.下腿浮腫の出現に注意をするように促す。
5.息をこらえて荷物を持ち上げるように指示する。
解答4
解説
慢性心不全とは、心臓だけではなく、全身症状(息切れや脱力感など)をきたし、日常生活に支障をきたしている状態である。代表的な症状は、動悸・動作時の息切れ・呼吸困難・体のむくみ・体重増加などあり、さらに悪化すれば、夜間に急に息が苦しくなって目が覚めたり、じっとしていても息が切れることもある。日常生活の指導では、①塩分の過剰摂取を控える、②息切れしないように休みながら活動する、③適度な運動で体力をつける等が挙げられる。
1.× 安静臥床を指示する優先度は低い。なぜなら、過度な臥床は、筋力低下や血行障害を招き、心不全患者の体力低下や血栓症リスクを高めるため。したがって、適度な活動が推奨される。
2.× しゃがんで床を拭くように勧める必要はない。なぜなら、しゃがむ姿勢は急激な血圧変動や呼吸困難を引き起こす可能性があり、心不全患者には負担がかかりすぎると考えられるため。したがって、床を拭く掃除は、クイックルワイパーなど立って行えるよう指導する。
3.× 息切れ時には、「背臥位」ではなく起坐位をとるように促す。ちなみに、起坐呼吸とは、呼吸困難が臥位で増強し、起坐位(または半坐位)で軽減することをいう。起坐呼吸は、臥位をとると静脈還流が増え血液が肺にたまりやすくなり呼吸困難が増強するためみられる。
4.〇 正しい。下腿浮腫の出現に注意をするように促す。なぜなら、下腿浮腫は心不全の状態悪化のサインであるため。
5.× 「息をこらえて」ではなく息をしながら荷物を持ち上げるように指示する。なぜなら、息をこらえる行為は、急激な血圧上昇を招きやすく、心臓への負担を引き起こしかねないため。したがって、心不全の症状を悪化させる可能性がある。
37 血液透析で正しいのはどれか。
1.カルシウム摂取を禁止する。
2.透析中の運動は禁忌である。
3.シャント側上肢で血圧測定する。
4.エリスロポエチン産生は亢進する。
5.導入原因の第1位は糖尿病性腎症である。
解答5
解説
血液透析とは、1週間に2~3回の通院をして、3~4時間の治療を受ける必要がある。血液透析は、シャント肢から十分な血流を保ちながら体外循環を行い、体液量や電解質濃度を是正するとともに尿毒素などの血液浄化を行う治療である。治療中、除水量が多いと循環動態に影響を及ぼしたり、血液中の電解質に急激な変化が生じたりすることがある。
血液透析が必要となる最も多い理由は、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全:糖尿病性腎症)である。ちなみに、慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。
1.× カルシウム摂取を禁止する必要はない。血液透が必要となる最も多い理由は、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)である。慢性不全に陥っている場合は、十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限が必要となる。
2.× 透析中の運動は、「禁忌」ではなく推奨される。なぜなら、透析中の運動は、体力や筋力をつけ、透析中の血液循環が高まり「透析の質」が向上するため。したがって、合併症なども起りにくくなる効果が期待できる。多くの透析センターで、患者さんが安全に実施できる運動プログラムが導入されている。(※ただし運動の強度には注意が必要で、透析日は血圧が下がりやすく不安定であるため強い運動は控えるべきである。)
3.× 「シャント側上肢」ではなく非シャント側上肢で血圧測定する。なぜなら、シャント側上肢で血圧測定を行うと、シャントが潰れ、使用できなくなる可能性があるため(※ただしシャント側の手の運動は、無理のない運動を推奨される。なぜなら、シャント側の手を動かさずにいると、シャント部分が狭窄・閉塞してしまうおそれがあるため。)
4.× エリスロポエチン産生は、「亢進」ではなく低下する。なぜなら、血液透析患者では、腎機能低下が起こるため。
【腎機能低下によって起きる病態】
①老廃物(クレアチニン・アンモニアなど)の濾過能低下。
②体液の貯留(浮腫)
③ナトリウム・カリウム・カルシウム・リンなどの電解質バランスの調節障害。
④尿中への酸排泄能低下や尿毒症物質の蓄積に伴う酸塩基平衡の異常。
⑤ビタミンD3活性化の低下
⑥エリスロポエチン産生能の低下などが挙げられる。
5.〇 正しい。導入原因の第1位は糖尿病性腎症である。糖尿病性腎症とは、糖尿病の合併症で、糖尿病によって高血糖状態が持続し、腎臓の内部に張り巡らされている細小血管が障害を受けることで発症する。悪化すると腎不全に移行し、血液透析などが必要となる。糖尿病性腎症の場合、徐々に病気が進行するため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要である。糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%と最も多い割合を占めている。一般的な糖尿病の食事療法としては、標準体重と身体活動量により摂取エネルギー量を算出し、50~60%が糖質、蛋白質が20%までとし、残りは脂質とする。また、糖尿病腎症の治療には血糖・血圧コントロールが重要であり、腎症 3 期(顕性腎症)では、食塩制限に加えたんぱく質摂取量にも注意が必要である。これは、たんぱく質や塩分がさらに腎臓に対し負担をかけるためである。つまり、①エネルギー量の管理、②食塩量の制限、③タンパク質量の調整が必要となる。
①不均衡症候群、②高血圧(透析開始時)、③低血圧、④貧血、⑤感染症、⑥二次性副甲状腺機能障害、⑦アミロイド骨関節症、⑧高カリウム血症など。
38 脳卒中治療ガイドライン2021のリハビリテーションで推奨グレードが最も高いのはどれか。
1.運動障害に対する薬物療法
2.半側空間無視に対する鏡像を用いた訓練
3.中枢性疼痛に対する反復性経頭蓋磁気刺激
4.摂食嚥下障害に対するバルーンカテーテル訓練
5.軽度から中等度の上肢麻痺に対する麻痺側上肢を強制使用させる訓練
解答5
解説
1.× 運動障害に対する薬物療法は、推奨度「C」、エビデンスレベル「中」である。
2.× 半側空間無視に対する鏡像を用いた訓練、(冷水・振動・電気刺激を用いた訓練,アイパッチを用いた訓練を行うことを考慮しても良い)は、推奨度「C」、エビデンスレベル「低」である。
3.× 中枢性疼痛に対する反復性経頭蓋磁気刺激は、推奨度「C」、エビデンスレベル「中」である。
4.× 摂食嚥下障害に対するバルーンカテーテル訓練は、推奨度「C」、エビデンスレベル「中」である。
5.〇 正しい。軽度から中等度の上肢麻痺に対する麻痺側上肢を強制使用させる訓練(課題志向型訓練,鏡像を用いた訓練,ロボットを用いた訓練を行うことは妥当である)は、推奨グレードが最も高い。これらは推奨度「B」、エビデンスレベル「中」である。
(※引用参考:「脳卒中治療ガイドライン2021におけるリハビリテーション領域の動向」著:松野 悟之様)
39 精神科の集団作業療法で適切なのはどれか。
1.オープングループは固定のメンバーで活動を行う。
2.クローズドグループは集団からの離脱が起こりやすい。
3.治療者1名に対して15名程度のメンバーで活動を行う。
4.異質集団は同質集団よりも参加者同士の共感が得られる。
5.集団の凝集性よりもメンバー個人の主観的体験を優先する。
解答5
解説
①開放集団(オープングループ):参加が自由。参加しやすいが、メンバー相互の力動的な作用は希薄になる。通常、作業療法など広義の集団療法では、多少のメンバーの出入りがありながら継続されるセミクローズドでおこなわれることが多い。
②閉鎖集団(クローズドグループ):メンバーが固定。集団や個のプロセスが把握しやすく、凝集性も高くなりやすい。
1.× オープングループは、「固定」ではなく自由のメンバーで活動を行う。なぜなら、開放集団(オープングループ)は、参加が自由であることが特徴であるため。開放集団は、障害の程度、参加動機、趣味、嗜好、得手・不得手など、さまざまな特性を持つ参加者で構成されるという特徴を持っている。
2.× クローズドグループは、集団からの離脱が起こり「にくい(※オープングループと比較して)」。なぜなら、クローズドグループは、メンバーが固定され凝集性も高くなりやすいため。したがって、離脱が起こりにくい。
3.× 治療者1名に対して、「15名程度」ではなく4~5名程度のメンバーで活動を行う。患者のレベルによって、治療者1名に対して、10名程度まで可能である。なぜなら、作業療法士が対象者1名にかけられる時間や精神的エネルギーには限度があるため。治療者が各参加者に十分な支援やフィードバックを提供できるようにするには、4~5名程度と人数がほぼ決まってくる(※参考:「精神障害と作業療法」)。
4.× 逆である。「同質集団」は、「異質集団」よりも参加者同士の共感が得られる。なぜなら、同質集団では、参加者が共通の課題や経験を持つため。したがって、互いに理解しやすく共感し合いやすい環境が整う。ちなみに、同質集団とは、性別、年齢、障害などメンバー間の差が少ない集団のことである。
5.〇 正しい。「集団の凝集性」よりも「メンバー個人の主観的体験」を優先する。なぜなら、精神科の作業療法では、グループの一体感を高めること(集団の凝集性)よりも、一人ひとりが活動中に感じる「うれしい」「楽しい」「不安」などの個人的な感情や気持ちを大切にすることが回復につながるため。一方、集団の凝集性を優先しすぎてしまうと、個人の気持ちが軽視されたり、集団への依存につながる恐れがある。
40 精神科作業療法のインテーク面接時に聞き取る内容で適切でないのはどれか。
1.趣味
2.将来の希望
3.発病時の状況
4.困っていること
5.作業療法でやりたい種目
解答3
解説
インテーク面接とは、初回面接のことである。
1.〇 趣味は、初回面接に聞き取る内容である。なぜなら、本人の興味や好きな活動を把握する上で重要で、作業療法での目標設定や動機付けに役立つため。
2.〇 将来の希望は、初回面接に聞き取る内容である。なぜなら、将来の希望や目標を把握することで、個々のニーズに沿ったプログラムを作成し、モチベーション向上に繋げることができるため。(※ただし、うつ病の休息期~急性期の患者の場合、まずは日常生活の保障が最優先とされ、将来の希望を聞き取ることが必ずしも正解とはならない場面もある)。
3.× 発病時の状況を聞き取る優先度は低い。なぜなら、「症状がいつどのように始まったか」を聞くことが、今後の作業療法の状況は治療計画に直接結び付かない場合が多いため。また、初回面接では、患者との信頼関係がまだ構築されていない。患者がやりたいことや好きなことを尊重すること、今後の方針を話し合うことが大切である。
4.〇 困っていることは、初回面接に聞き取る内容である。なぜなら、現在直面している問題や悩みを把握することで、治療の重点をどこに置くかが明確になり、実際の支援に繋がるため。例えば、日常生活での対人関係のストレスや自立活動における困難があれば、それに応じたプログラムを立案する。
5.〇 作業療法でやりたい種目は、初回面接に聞き取る内容である。なぜなら、意欲のある種目から実施することで、それに基づいて評価・治療計画を立てることができるため。