第59回(R6)作業療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

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46 SSTの説明で適切なのはどれか。

1.精神分析理論を基盤にしている。
2.具体的な対人場面を設定して行う。
3.ストレスのかからない技法である。
4.基本的生活リズムが整ってから開始する。
5.ロールプレイの相手役はスタッフが優先して行う。

解答

解説

SSTとは?

社会生活技能訓練(SST:Social Skills Training)は、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。精神科における強力な心理社会的介入方法である。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。

1.× 精神分析理論を基盤「にしていない」。精神分析理論は、自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせる方法である。神経症性障害に対する精神療法として用いられるものである。フロイトによって開発されたものである。ちなみに、社会生活技能訓練は、認知構想療法の考えが生かされた集団精神療法の例である。生活技能を向上させることによって社会生活の困難を乗り越えようとするものである。
2.〇 正しい。具体的な対人場面を設定して行う。社会生活技能訓練(SST:Social Skills Training)は、日常生活の中で起こりそうな人と関わる場面を想定し、指導者がお手本を見せたり、参加者が相手役に対して実際に練習したりすることで、対人関係で生じる困難を減らすことを目指す。
3.× ストレスの「かからない」ではなくかかる技法である。なぜなら、集団療法のひとつで人と接することでストレスがかかるため。社会生活技能訓練(SST:Social Skills Training)は、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。
4.× 必ずしも、基本的生活リズムが整ってから開始する必要はない。なぜなら、社会生活技能訓練(SST)は、主に回復期以降の統合失調症患者などが対象であるため。回復期以降の統合失調症患者は、生活リズムの確立少しずつ現実世界へ関心を向けるために社会生活技能訓練(SST)を提供する。
5.× 必ずしも、ロールプレイの相手役はスタッフが優先して行う必要はない。むしろ、練習を行う本人が、相手役を選び、実際にロールプレイを行うことが多い。患者が習得すべき手本としては、まずは治療者(リーダー)が行うことが望ましい。

(※図:「統合失調症の回復過程と対応」)

 

 

 

 

 

47 ACTの説明で正しいのはどれか。

1.軽度の精神障害を持つ人が対象である。
2.ケアマネジメントの手法を用いる。
3.主たる目標は症状軽減である。
4.訪問作業療法の一形態である。
5.夜間の対応は行わない。

解答

解説

ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは?

 ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは、重い精神障害をもった人(入退院を繰り返すなど)であっても、地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう包括的な訪問型支援を中心に提供するケアマネジメントモデルのひとつである。地域社会でうまく生活を継続することができるように多職種が365日・24時間体制で多職種によって構成されたチームにより関わる仕組みである。サービス提供は原則的に無期限である。

1.× 「軽度」ではなく重度の精神障害を持つ人が対象である。
2.〇 正しい。ケアマネジメントの手法を用いる。ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは、重い精神障害をもった人(入退院を繰り返すなど)であっても、地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう包括的な訪問型支援を中心に提供するケアマネジメントモデルのひとつである。
3.× 主たる目標は、「症状軽減」ではなく地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持である。
4.× 「訪問作業療法」ではなく包括的な訪問型支援の一形態である。つまり、チームで対応し、利用者の自宅や職場などの実際の生活の場を訪問し、サービスを実施する(※参考:「ACT」ACT-Jパンフレット作製員会より)。訪問作業療法というと、訪問リハビリテーションに該当する。
5.× 夜間の対応も「行う」。多職種が365日・24時間体制である。

 

 

 

 

48 精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの相談窓口で明記されているのはどれか。

1.自治会
2.精神科病院
3.グループホーム
4.介護老人保健施設
5.精神保健福祉センター

解答

解説

(※図引用「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」厚生労働省HPより)

1.× 自治会とは、同一地域の居住者たちによって共通利益の実現と生活の向上を目的としてつくられた組織であり、地域に住んでいる人々が快適に過ごせるよう地域の清掃活動や消防訓練、祭りなどの企画・運営を担っている。
2.× 精神科病院とは、精神障害者の治療や看護、保護などを行う専門病院である。精神障害者の社会復帰を促進するとともに、精神疾患の発生防止や国民の精神的な健康の保持・増進を図ることを目的としている。
3.× グループホームとは、共同生活援助ともいい、『障害者総合支援法』の訓練等給付のひとつであり、ひとりで生活できない障害者が共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を受けるものである。主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。
4.× 介護老人保健施設とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護・医学的管理のもと、介護および機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設である。
5.〇 正しい。精神保健福祉センターは、精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの相談窓口で明記されている。厚生労働省HPによると、主な相談先として、①精神保健福祉センター(複雑困難な相談)、②発達障害者支援センター(発達障害)、③保健所(精神保健専門相談)、④障害者就業・生活支援センター(就労)、⑤ハローワーク(就労)である。ちなみに、精神保健福祉センターとは、精神障害者の福祉の増進を図るために設置された機関である。保健所を中心とする地域精神保健業務を技術面から指導・援助する機関である。

精神保健福祉センターとは?

①根拠法令:精神保健福祉法(6条)
②目的:地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進、自立と社会経済活動の促進のための援助等。
③設置基準:都道府県、指定都市
④配置職員:精神科医、精神保健福祉士(精神保健福祉相談員)、臨床心理技術者、保健師等

【業務内容】
①企画立案。
②保健所と精神保健関係諸機関に対する技術指導と技術援助。
③精神保健関係諸機関の職員に対する教育研修。
④精神保健に関する普及啓発。
⑤調査研究。
⑥精神保健福祉相談(複雑または困難なもの)
⑦協力組織の育成。
⑧精神医療審査会に関する事務。
⑨自立支援医療(精神通院医療)の支給認定、精神障害者保健福祉手帳の判定。

(参考:「精神保健福祉センターと保健所」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

49 精神障害者の一般就労に向けた支援で正しいのはどれか。

1.地域障害者職業センターで事業主に対する支援を行っている。
2.トライアル雇用は障害種別を問わず雇用期間は3か月である。
3.精神障害者雇用トータルサポーターはジョブコーチへの指導を行う。
4.就労中の精神障害者の定着支援を目的としてジョブガイダンスが実施される。
5.障害者就業・生活支援センターで生活支援に基づいた職業紹介を行っている。

解答

「※図引用:「精神障害者雇用トータルサポーターについて」厚生労働省様HPより」

1.〇 正しい。地域障害者職業センターで事業主に対する支援を行っている。地域障害者職業センターとは、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施している。全国の各都道府県に最低1か所ずつ設置されており、運営法人である独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構が運営を行っている。就労経験のある・なしに関わらず、身体障害者手帳、精神福祉保健手帳、療育手帳のある人、難病のある人、その他、障害があると認められる人(診断書がある人、障害者手帳申請中の人含む)などが対象となる。
2.× トライアル雇用は、「障害種別を問わず」ではなく職業生活に相当の制限や困難を伴う者(身体障害・知的障害・精神障害)を対象として雇用期間は3か月である。トライアル雇用とは、障害者試行雇用ともいい、職業生活に相当の制限や困難を伴う者(身体障害・知的障害・精神障害)を対象として、原則3か月間試用雇用をすることで適性や能力を見極め、継続就労のきっかけをつくってもらう制度である。ハローワークが窓口になる。
3.× 精神障害者雇用トータルサポーターはジョブコーチへの「指導」ではなく支援依頼を行う。精神障害者雇用トータルサポーターとは、ハローワーク専門援助部門にて精神保健福祉士や公認心理師の資格を持つ①企業への働きかけ、②精神障害者に対する支援を行う専門スタッフである。一方、ジョブコーチとは、障害者が事業所で働くため(就労支援)に、障害者と企業の双方を支援する役割をするものである。地域障害者職業センターにおり、障害者が属する社会福祉法人の職員や事業所の社員などが行う。
4.× 就労中の精神障害者の定着支援を目的として、「ジョブガイダンス」ではなく就労定着支援が実施される。ジョブガイダンスとは、職業指導と訳され、医療機関等の連携施設にハローワーク職員が出向いて、就職活動に関する知識や方法を教えるものである。就労定着支援とは、就労移行支援、就労継続支援などの利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され6か月を経過したもので3年が限度である。障害者の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートする。就労に伴う環境変化などの課題解決(①生活リズム、②家計や体調の管理など)に向けて、必要な連絡調整や指導・助言などの支援を実施する。
5.× 生活支援に基づいた職業紹介を行っているのは、「障害者就業・生活支援センター」ではなくハローワークである。障害者就業・生活支援センターとは、国及び県から委託を受けた地域の社会福祉法人等が運営する障害者の就労支援機関である。 就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者に対し、就業と生活における一体的な相談支援を実施している。一方、ハローワークとは、就職困難者の支援など地域の総合的雇用サービス機関であり主な業務として、①職業相談、②職業紹介、③求人確保、④事業主に対する助言・窓口業務、⑤就職後の障害者に対する助言・指導などがあげられる。公共職業安定所ともいわれる。

障害者総合支援法に基づく障害者の就労支援事業

①就労移行支援事業:利用期間2年
【対象者】一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)①企業等への就労を希望する者
【サービス内容】一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせ。③利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定する。

②就労継続支援A型(雇用型):利用期限制限なし
【対象者】就労機会の提供を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な障害者。(利用開始時、65歳未満の者)
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者
【サービス内容】通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援。一定の範囲内で障害者以外の雇用が可能。多様な事業形態により、多くの就労機会を確保できるよう、障害者の利用定員10人からの事業実施が可能。

③就労継続支援B型(非雇用型):利用制限なし
【対象者】就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者
① 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
② 就労移行支援事業を利用したが、企業等又は就労継続事業(A型)の雇用に結びつかなかった者
③ ①、②に該当しない者であって、50歳に達している者、又は試行の結果、企業等の雇用、就労移行支援事業や就労継続支援事業(A型)
の利用が困難と判断された者
【サービス内容】
通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者は、一般就労等への移行に向けて支援。平均工賃が工賃控除程度の水準(月額3,000円程度)を上回ることを事業者指定の要件とする。事業者は、平均工賃の目標水準を設定し、実績と併せて都道府県知事へ報告、公表。

(引用:「就労移行支援について」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

50 作業療法における診療参加型実習で最も適切なのはどれか。

1.集団作業療法による実習は含まない。
2.一対一の師弟関係の構築を最優先する。
3.見学、模倣、実施の順に実習を進める。
4.担当患者の症例レポートの作成が必須である。
5.最終的には指導者の監督なしに作業療法を実施する。

解答

解説

(※図引用:「臨床実習教育の手引き(第6版)」日本理学療法士協会より)

1.× 集団作業療法による実習「も含む」。なぜなら、集団作業療法も臨床実践で必要な技能であるため。診療参加型実習の原則は、職場内教育(OJT:Onthe Job Training)であり、臨床実習の目的は、対象者と実習指導者から理学・作業療法士の臨床実践を学ぶことである。
2.× 一対一の師弟関係の構築を最優先する必要はない。なぜなら、一対一の師弟関係を築くより、同年代から相互に刺激を受ける場をつくることの方が、実習生の能力を伸ばす機会となるため。したがって、診療参加型実習は、認知的徒弟制と正統的周辺参加の学習理論を基盤にして診療参加過程での実践指導を行う。
3.〇 正しい。見学、模倣(協同参加)、実施の順に実習を進める。上の図参照。
4.× 担当患者の症例レポートの作成が必須「ではない」。なぜなら、症例レポートは、場合によってはただ作業量を増やすだけの作業になりえるため。指導者の質問に対して実習生が答えられない場合も同様に、常にレポートを課して自宅での時間外学修を過剰に行わせるのではなく、指導者がその場で助言・助力して、問題解決を支援するようかかわる。
5.× 最終的には指導者の監督なしに作業療法を実施する必要はない。なぜなら、あくまで実習生は作業療法士の免許を取っておらず学生であるため。事故があった際は責任問題になりかねない。したがって、診療参加型臨床実習の望ましい形として、実習生が診療チームの一員として加わり、臨床実習指導者の指導・監督の下で行うものである。

(※図引用:「臨床実習教育の手引き(第6版)」日本理学療法士協会より)

 

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