第58回(R5) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題76~80】

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76.疾患と病因の組合せで正しいのはどれか。

1.Creutzfeldt-jakob病:感染
2.Parkinson病:脱髄
3.肝性脳症:神経変性
4.正常圧水頭症:血行障害
5.多発性硬化症:腫瘍

解答

解説
1.〇 正しい。Creutzfeldt-jakob病は、感染が病因である。原因は、感染性を有する異常プリオン蛋白である。Creutzfeldt-jakob病〈クロイツフェルト・ヤコブ〉病とは、異常なプリオン蛋白が脳に蓄積する致死性神経感染症である。初期には精神症状(健忘症、抑うつなど)、視覚障害、歩行障害、運動失調などで発症し、進行すると精神症状が急速に悪化し、高度の認知症に発展する。会話、自発語不能となり、四肢のミオクローヌスも特徴的所見である。様々な症状を呈して、多くは数ヶ月から半年以内、長くとも2年以内で死亡する。
2.× Parkinson病は、「脱髄」ではなく変性が病因である。原因は、中脳における黒質のドパミン神経細胞の変性である。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
3.× 肝性脳症は、「神経変性」ではなく血行障害が病因である。肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)
4.× 正常圧水頭症は、「血行障害」ではなく髄液の循環障害(くも膜下出血や腫瘍)が病因である。正常圧水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。
5.× 多発性硬化症は、「腫瘍」ではなく脱髄が病因である。多発性硬化症とは、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

77.頭部単純CTで低吸収域として描出されるのはどれか。

1.くも膜下出血
2.脳梗塞慢性期
3.脳出血急性期
4.急性硬膜下血腫
5.脈絡叢の石灰化

解答

解説

単純CT像の特徴

単純CT像は、急性期のくも膜下出血の診断に最も有用である。また、急性期の脳出血や石灰化、骨折などの骨の形態変化などに適している。脳出血急性期に出血部位が高吸収域(白く映る)になる。

1.× くも膜下出血は、高吸収域として抽出される。なぜなら、出血となるため。ちなみに、くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。くも膜下出血ではくも膜下腔に血液が流入し、CTでは高吸収域として抽出される。合併症には、①再出血、②脳血管攣縮、③正常圧水頭症などがある。①再出血:発症後24時間以内が多く、死亡率も高い。②脳血管攣縮:72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く、脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。③正常圧水頭症:数週〜数ヶ月後に認知症状、尿失禁、歩行障害などの症状が出現する。
2.〇 正しい。脳梗塞慢性期は、頭部単純CTで低吸収域として描出される。なぜなら、脳梗塞によって壊死した脳組織は、徐々に液体化し、最終的には脳脊髄液となるため。
3.× 脳出血急性期は、高吸収域として抽出される。なぜなら、出血となるため。脳出血急性期は、脳内の血管が破れて血液が脳組織に漏れ出る状態である。
4.× 急性硬膜下血腫は、高吸収域として抽出される。なぜなら、出血となるため。急性硬膜下血腫とは、短時間のうちに硬膜と脳の間に血腫が形成された状態のことであり、頭部外傷としては重症に分類される。ほとんどが頭部外傷によるもので、児童虐待の死因として最も多い。
5.× 脈絡叢の石灰化は、高吸収域として抽出される。脈絡叢の石灰化とは、脳内の脈絡叢において、カルシウムの沈着が生じる現象である。血液中のカルシウムは一定値(血液100ml中10mg)に保つ必要があるため、余分なカルシウムは骨や血管、細胞に沈着し、石灰化の原因となる。頭蓋内の正常構造で石灰化しやすいのは、硬膜、脈絡叢、松果体である。

急性期における梗塞巣の確認のしやすさ

①拡散強調像(DWT):超急性期(発症後1~3時間)
②FLAIR像:発症後3~6時頃
③T2強調像:発症後3~6時頃
④T1強調像の順である。

 

 

 

 

 

78.良性腫瘍と比較した悪性腫瘍の特徴はどれか。

1.被膜を有する。
2.発育速度は遅い。
3.浸潤性に発育する。
4.細胞の分化度が高い。
5.細胞の核分裂が少ない。

解答

解説

腫瘍とは?

腫瘍とは、体の中にできた細胞のかたまりのことである。悪性腫瘍とは、このような腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいう。一方、良性腫瘍とは、浸潤や転移をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍のことをいう。

1.× 被膜を有するのは、良性腫瘍の特徴である。被膜とは、表層を覆う膜のことである。良性腫瘍の構造は、成熟している。一方、悪性腫瘍は、被膜を持たないため周囲に浸潤し増殖しやすい特徴を持つ。
2.× 発育速度は遅いのは、良性腫瘍の特徴である。悪性腫瘍とは、腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいう。
3.〇 正しい。浸潤性に発育することは、悪性腫瘍の特徴である。したがって、周囲との境界が不明瞭である。
4.× 細胞の分化度が高いのは、良性腫瘍の特徴である。分化度とは、細胞分裂を繰り返すうちにさまざまな機能や形態を持つ細胞に変化することをいう。
5.× 細胞の核分裂が少ないのは、良性腫瘍の特徴である。良性腫瘍の特徴として、成熟構造になり、膨張性で異型性は軽度であり、分裂は緩やかで転移はみられない。

 

 

 

 

79.即時記憶と関連があるのはどれか。

1.数字の順唱を行わせる。
2.以前の社会的な事件を思い出させる。
3.「結婚したのは何歳のときですか」と質問する。
4.「昨夜の夕食のおかずは何でしたか」と質問する。
5.いったん覚えてもらった言葉を3分後に思い出させる。

解答

解説

即時記憶とは?

即時記憶とは、入力された情報が数秒~数分間(文献によっては1分程度)、干渉が入らずに常に意識に上げておく機能である。臨床場面では、数字の順唱や逆唱などで評価される。作業記憶(ワーキングメモリー)にあたる。作業記憶(ワーキングメモリー)とは、物事を思考・実行する際に情報を一時的に(数秒程度) 保持しながら、それを意識的に操作する能力のことである。

1.〇 正しい。数字の順唱を行わせることは、即時記憶と関連がある。即時記憶とは、入力された情報が数秒~数分間(文献によっては1分程度)、干渉が入らずに常に意識に上げておく機能である。臨床場面では、数字の順唱や逆唱などで評価される。
2~3.× 以前の社会的な事件を思い出させる/「結婚したのは何歳のときですか」と質問することは、長期記憶(エピソード記憶)と関連がある。ちなみに、エピソード記憶とは、自分の生活史や思い出など、自分の過去の経験を伴う記憶のことである。
4.× 「昨夜の夕食のおかずは何でしたか」と質問することは、長期記憶(近時記憶)と関連がある。近時記憶とは、即時記憶より保持時間の長い記憶で、長期記憶に分類される。時間間隔について定義はないが、3分~数日が目安とされている。ちなみに、週~年単位となると遠隔記憶となる。
5.× いったん覚えてもらった言葉を3分後に思い出させることは、長期記憶(近時記憶)と関連がある。文献によっては、3分程度を即時記憶と分類するものもあるが、その場合でも数字の順唱を行わせることのほうが、確実に即時記憶と判断できるため選択するべき優先度が高い。即時記憶とは、入力された情報が数秒~数分間(文献によっては1分程度)、干渉が入らずに常に意識に上げておく機能である。

 

 

 

 

 

80.我が国の自殺死亡率において年齢階級別で最も高いのはどれか。

1.20歳代
2.30歳代
3.40歳代
4.50歳代
5.60歳代

解答

解説

(※図引用:「令和3年中における自殺の状況」警察庁HPより)

1.× 20歳代は、令和3年において5位(2611人)であった。
2.× 30歳代は、令和3年において6位(2554人)であった。
3.× 40歳代は、令和3年において2位(3575人)であった。
4.〇 正しい。50歳代は、我が国の自殺死亡率において年齢階級別で最も高い(3618人)。
5.× 60歳代は、令和3年において4位(2637人)であった。

(※図引用:「令和3年中における自殺の状況」警察庁HPより)

 

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