もう歳で危ないから歩かないで」と家族が利用者様に言う場面があります。
ただそれだと、「歩かない」→「筋力が落ちる」→「転ぶ」→「恐怖心からさらに歩かない」→「さらに筋力が落ちる→「転ぶ」
というループに陥ってしまいます。
さらにそれだけではなく、二次的な障害も引き起こしてしまうのです。(詳しくは1.転倒がすべての始まり?)

転倒にもすべて理由があるわけです。
(気になる人はこちら「高齢者の転倒の理由3選」)

 

この記事は「歩行の大切さ」を説明したいと思います。

転倒がすべての始まり?

支援が必要になった原因第3位骨折・転倒」です。(H28年 厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」)
転倒した高齢者の3分の2は何かしらのけがを負っています(H22年 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果)
多くは打撲や擦り傷などですが、骨折に至った人も約1割います。
骨折する確率は約10%なので、もし転倒して骨折していなかったら、本当に運が良かったと思ってください。

そして、転倒して足を骨折してしまうと、以前のように足が使えるようになるまで2~3か月かかります。
その間は、横になり安静にするように病院で治療が行われます。
ベッドで寝ていると、骨折した部位に限らず、他の筋力が低下するだけでなく、心肺機能の低下関節が硬くなる認知症が進むといった二次障害が生じます。

 

退院してもさらに、転ぶことへの恐怖心から、出歩かなくなり活動減少でますます足腰の筋力が落ち、転倒リスクの高い状態になってしまいます。

私は「転倒は万病のもと」だと思っています。

まずは転倒しないことが大切ですが、「転倒しても重いけがをしないこと」も大切です。
(気になる人はこちら「転倒しても重い怪我を防ぐ方法」)

 

研究結果からわかる歩行の効果と量

中強度の運動が歩行能力のみならず、老化や疾病予防にさまざまな効果をもたらすということが、明らかになってきました。

 この研究は、群馬県の65歳以上の高齢者5000人(重度の認知症や寝たきりの人を除く)を対象に、13年間という長期にわたり行われたものです。毎年1回、詳細なアンケート調査を行い、運動や身体活動の状況、食生活、睡眠時間、労働時間、病気の有無や体調などを調査し、年に1回の健康診断のデータも提供してもらいました。さらにその中の500人を研究の主たる対象とし、小型の「身体活動計」を携帯してもらい、1日の歩数や運動強度が中強度(3METs以上)の活動時間を記録しました。そして、1年間の平均歩数(1日)・平均中強度活動時間(1日)と有病率の関連性を調べてみると、歩数と中強度活動時間が増すごとに有病率が低くなることがわかりました。認知症にいたっては7000歩以上・中強度活動時間15分以上のグループでは0人でした。
※歩数と中強度の活動時間が少なくなるほど、各病気の有病率が高いことがわかる。 (中之条研究より)

ちなみに海外でも、認知症の予防には脳トレーニングよりも運動(ウォーキング)のほうが効果があるという研究結果があります。

 

こうしたデータから、それぞれの病気の予防に有効な歩数と中強度活動時間もわかってきました。

例えば

4000歩以上・中強度活動時間5分以上でうつ病の予防

5000歩・7.5分以上で認知症、心疾患、脳卒中の予防。

7000歩・15分以上でがんや骨粗鬆症の予防。

8000歩・20分以上で高血圧症、糖尿病の予防。

老化や病気を防ぐためにも、ぜひ高齢者に限らず、若いころから「1日8000歩、中強度活動時間20分以上の活動」を意識することをおすすめします。

 

中強度の運動の種類は問いませんが、やはり「速歩き+大股がもっとも手軽でずっと続けられる運動だといえます。

 

当デイサービスでは、1人1個万歩計を渡し、個別で設定した歩数を歩いてもらうようにしています。
意外と数字化すると皆さんやる気を出して歩いてくれています。

1日8000歩、中強度活動(速歩き)時間20分」は、多くの人が日常生活に取り入れられる、普遍的でかつ有効な健康の指標です。
私は、この指標を個人の生活だけではなく、社会全体で取り入れていくことが重要だと考えています。

歩行よりいい運動は?

夏だと外が暑くて、冬だと寒くて歩くのが嫌。もっと家でできるいい運動はないの?
よく聞かれます。
その人は放っておきましょう(笑)←冗談です。

でも、なんのためにリハビリをしているのでしょう。
この人は、夏や冬に一切外に出ないのでしょうか(笑)。
いや、絶対出ると思います(笑)

そんな人達は、目標がないもしくは達成していると考えられます。
夏でも外へ出る出来事を作り、回り道をするようにコースを立案してあげるんです。
何か目的を持たせてあげれば、きっと長続きすると思いますよ。

 

まとめ

歩行自体は、移動手段の一つにすぎません。
目的地に行くのに、「車」でも「自転車」でもいいんです。
あえて、「歩行」を選んでもらうのは、この時代は難しいかもしれません。

ただ歩行のメリットを知って、その先の「楽しみ」を見つけて、「歩行」を選んでほしいと思っています。

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